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NHK問題にみる安倍政権の暴走、汚染水はダダ漏れ

 安倍「お友達」が暴走し始めている

 アメリカに倣ってNSC(国家安全保障会議、大本営のゾンビか?)を設置し、年末には特別秘密保護法を衆参両院の強行採決で通し、沖縄自民党議員に対する恫喝と仲井真知事の大枚「買収」で辺野古新基地建設を受け入れさせ、アメリカの牽制と周囲の反対を押し切って靖国参拝をやったが、ここにきて強行姿勢があちこちで破綻をみせている。

 いまさすがに新聞でもネットでも取り上げられてよく知られているが、要点だけまとめておこう。

 いちばん目立つのは「お友達」を無理やり押し込んだNHKだ。籾井会長は、「従軍慰安婦はどこの国でもあった...」(つまり日本だけじゃないからどこが悪い!という居直り)と言い、安倍の靖国参拝はコメントする方がおかしいと言い、原発問題を都知事選の争点にすべきでないと言った政権の肩をもつかのように、脱原発がいちばん経済的だと言おうとした中北東洋大教授のコメントを抑えようとした(中北氏が応じ、ラジオ番組への出演を断った)。

 安倍の意向でNHK経営委員になった作家の百田尚樹は、その都議選の田母神候補と「南京事件は幻...」と対談で息巻いて、世界中の歴史認識を逆なでしている。そして一昨日は、やはり経営委員の長谷川三千子が、去年の秋、93年に朝日新聞社に乗り込んで拳銃自殺した右翼団体の元会長の追悼文集にとんでもないことを書いているのが発覚した。

 この元埼玉大の哲学教授とかいう人物は、報道機関に対する右翼の「死の脅し」を礼賛し、「人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどといふことを露ほども信じてゐない連中(朝日の社員のことらしい)の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである」と書き、その行為によって「わが国の今上陛下は(『人間宣言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神(あきつみかみ)となられたのである」と結んでいる。何たる神がかり!

 公共放送の私物化

 これが、NHKの会長であり経営委員だとしたら、それは安倍がNHKを「コントロール下」に置こうとした結果であり、権限を逸脱した首相によるNHKの私物化(これを日本のメディア用語では「民営化」と言う)である。こんなことではもはやNHKは公共放送とは言えない。受信料を徴収する資格はないだろう。

 もちろん安倍は、自分が日本の「公共」を体現しているつもりらしい(それには自民党と公明党に投票した連中に責任をとってもらおう)。だが「公共性」とは、むしろそんな権力の私物化を排する側にある。菅という官房長官は「個人的見解」は自由だから問題ないと言う。だが、そんな特殊な憲法違反でさえある「見解」(というか確信的思い込み)をもつ人物を、公共機関の会長や経営委員に選ぶこと自体、すでに問題なのだ。それが問題と見えないのは、菅もそのような見解をもっているからであり、何よりトップの安倍がそうだからだ。

 安倍が「戦後レジームからの脱却」を掲げ、その「見解」に従って強引に政治をやろうとしているように、籾井や百田や長谷川は、当然その「見解」や「信条」でNHKを仕切ろうとしている。だとしたら、「私的見解/公的役職」の分裂で言い抜けすることはできない。彼らはその「私的見解」ゆえに、安倍政権下でその任に就いたのである。

 これを黙っていると、彼らのような見解が日本の「公式」の見解となり、国内で押し付けられるだけでなく、海外にとっても日本はそのように考える特殊な国、ということになる。それに、石破自民党幹事長が年末の秘密保護法反対の市民による大規模なデモンストレーションに対して言ったように、彼らの異常な考えと違う見解をもつ者たちは「テロリストのようなもの」として弾圧されかねない。いや、彼らはすでにNHKを手中にして言論封殺とメディア操作をやっているのだ。

 自民党が衆参両院で圧倒的多数を占め(衆院291、参院114)、それを公明党が黙ってサポートしているかぎり(31+20、強行採決にも手を貸している。ついでに言っておけば、自民党がこれだけ議席を取れるのは、小選挙区制で棄権しない創価学会員の票が自民党候補を強力に押し上げるからだ)、どんな無体なことも安倍政権はできる。アメリカやEUでさえ懸念する秘密保護法のような法律も通せるし、どんな法律でも数で通せる。あと3年、選挙はない。この3年といわずとも、この1、2年でやりたいことをやり切ってしまう、それが安倍政権のねらいだろう。

 フクイチのカタストロフに背を向けて

 福島第一の高濃度汚染水がダダ漏れだということをつい最近東電は発表した。一日3.4トン、事故以来ずっとだ。それがどこに消えたか不明だという。わからなければ、見えなければいい、というので東電は柏崎刈羽の4基を再稼働して事業再建の計画を出し、それを安倍の政府は承認した。経済が大事なのだそうだ。

 だがその経済は、「アベノミクス」で見かけの数値だけの景気が上向いたといっても、儲かるのは輸出企業だけ、その儲けも、今があてのないプチ・バブルと分かっているから気前よくつかうわけにはいかないし、国際競争力とやらのためには労働力の安価な海外に投資しなければならない。

そして国内はといえば、さらに労働条件を企業に有利にして――それが法人税下げとともに外国企業の誘致に効果的だという――働く者の状況を劣化させ、非正規労働を増やし、どんなに努力しても、身を粉にして働いても一生低賃金という層を拡大する。だからバブルで儲ける投資層と、働いて低賃金しか得られない膨大な数の貧困層との分離が固定される。

 その貧困層の不満や絶望、それが生み出す社会不安を抑え込むために、対中危機を作って統制を正当化し、「国民」意識を統合の道具に使って反対派を排除する。それが現在の日本の統治の方向だろうが、今は国内だけではことはすまない。世界がこの日本の振舞いや行方を見ている。

 安倍政権に乗るような連中は、福島第一原発の現状を隠して忘れさせ、オリンピックまでもってきて目くらましをしようとしているが、そのあげくに自分たちの方でも、目先の金儲けに目がくらんで、福島の危険な惨状をほんとうに忘れてしまうだろう。けれども、メルトスルー(核燃料が格納容器の底を抜けて地中に落ちてしまう事態)は誰も実情を確かめられないし、世界も一度も経験したことがなく、手の施しようがない。それを忘れて「強い日本」作りに突っ走った先に、遠からずどんな破綻があることか、それに関して安倍政権は何の配慮も展望ももっていないだろう。

 これは都知事選の話ではない。ともかく、国政選挙はないが、手をこまねいているわけにはいかない。弱いところから突く。さしあたり安倍に私物化されたNHKの受信料不払いは最低限やるべきだろう。

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2014年2月 6日 19:09に投稿されたエントリーのページです。

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