毎年、師走も押し迫ってくると下総中山の競馬場では中央競馬会最大のレース有馬記念が行われる。ファン投票とJRAの選抜で、牡牝年齢に関係なく、その年いちばん強い馬が勢ぞろいする。距離も2500メートルと長い。
今まで最高齢で勝ったのは、1969年と70年に6歳と7歳で驚異の連覇を果たしたスピードシンポリ(野平祐二騎手)だったが、今年は牡3歳のオルフェーヴルが勝った。この今年の3冠馬(皐月賞、ダービー、菊花賞)は1番人気で払戻金は安いが、その底力を見せつけるみごとな走りで楽しませてくれた。勝ちタイムは2分36秒0。3/4馬身差の2着にルメール騎手騎乗のエイシンフラッシュ、これで引退の名牝馬ブエナビスタは7着だった。
始めから中盤までスローな流れで、オルフェーブルは後ろから2番手につけていた。鞍上の池添謙一騎手もかなりスローでやきもきしていたというが、3コーナー手前から徐々に流れが速くなると、外を回ってスーと進出、4コーナーを大外からまくり気味に加速すると、直線入り口では5、6番手まで押し上げた。「沈むような走りでハミを取って進んでいってくれた」と池添騎手。ハナを切ったアーネストリー、2番手のトーセンジョーダンに外から並びかけると1完歩ずつ差を広げ、馬場の真ん中を割ってきたエイシンフラッシュを一気にかわすと、外から迫るトゥザグローリーを寄せ付けず先頭でゴールに飛び込んだ。(日刊スポーツによる)
この映像はYouTubeで観られる。⇒
今年はこの後でブエナビスタの引退式が行われたようだ。
中山競馬場はこの日が一年の最後となる。有馬記念は10レース目で、弓取り式のような11レースが終わり、すべての馬と人がはずれ馬券の舞い散るなかを去ってゆくころ、競馬場の芝には火がつけられる。来春の芝を生やすために芝焼きが行われるのだ。寒風に掃かれるようにして一筋の赤と黒の線が枯れた広い芝生の馬場を渡ってゆく。
若い頃、毎年暮れに見た風景だ(ふとした縁があって、何年間かここで働いていた)。ここには豊穣を祈る「春の祭典」はない。一年の労苦を風に委ねて静かに舞わすように、人の去ってゆく馬場の芝の上を今年も低い煙がはっていったことだろう。