--CONTENTS--


2007年07月26日

お知らせ

このたびホームページをブログ形式に変えました。まだまだ引越しを始めたばかりで、いろいろ問題がありますが、とりあえず今後ともよろしくお願いします。

6.古典・その他

6.古典・その他

エドワード・サピア(安藤 貞雄)『言語』(岩波文庫 1998 \760)
専門の者が繰り返し読んでも、そのたびごとに新しい発見がある古典中の古典。それでいて古くならず、多数の言語についての深くて該博な知識に基づいて書かれている。「言語の詩人」といわれるサピアの格調高い英文は、原文で味わうのが良いけれども翻訳でも内容はつかめる。タイプの違う言語を学んでから読むと、さらによくわかるようになる。


オットー・イェスペルセン(半田 一郎 訳)『文法の原理』(岩波書店 1958 品切れ)
イェスペルセンはデンマークの人である。同じゲルマン諸語に属し、英語とよく似ている綿と似ていない面を併せ持つこのデンマーク語を母語としたイェスペルセンはさらに他のたくさんの言語の仕組みに通じ、英語学のみならず言語学に巨大な足跡を残した。この本にはイェスペルセンのアイデアがぎっしり詰まっている。たくさんの言語からの豊富で適切な例と、言語現象に対するきわめて深い考察がここにある。


フェルディナン・ド・ソシュール(小林 英夫 訳)『一般言語学講義』(岩波書店 1940 1972改版 \4000)
言語記号の根本原理である恣意性と線条性、ラングとパロールとランガージュ、連合関係と統合関係、通時態と共時態、み~んな近代言語学の父、ソシュールが広めた概念ばかりである。しかし言語学の入門書で読んでもその本当の意味はわからない。ぜひ一度この原典をみると良い。比較言語学の大家でもあるソシュールのすごさは後半の歴史言語学の類推の部分などにも光っている。しかもこの本はソシュールが自分で書いたのではなく、その講義に感動した弟子たちが講義ノートを集めて作った、という事からすでにそのすごさがわかる。


レナード・ブルームフィールド(三宅 鴻・日野 資純 訳)『言語』(大修館書店 1962 \6000)
「行動主義心理学に基づくブルームフィールドの言語学は古くなった」という人もいるが、それは主にこの本の2章だけの話で、他の章は依然言語学を学ぶものにとってバイブル的存在である。自由形式と拘束形式をはじめ、その形態論は客観的で緻密である。ゲルマン比較言語学の該博な知識は歴史言語学の章に顕われている。そしてさらにフィリッピンの言語や北米インディアン諸語の知識が「言語」そのものに迫る彼の態度の強力な支えとなっている。


ミルカ・イヴィッチ(早田 輝洋・井上 史雄 訳)『言語学の流れ』(みすず書房 1974 品切れ)
言語学史をどれか1冊、ということになればこれがよい。旧ユーゴ出身の筆者はスラブ語の文献に明るく、ソシュールの陰で忘れられがちなクルトネらも十分な紹介がなされている。言語学の歴史を各時代の科学や文化と関連づけ、人類の文化の大きな発展の中でとらえている。


ユアン・レン・チャオ(橋本 萬太郎 訳)『言語学入門―言語と記号システム―』(岩波書店 1980 品切れ[Yuen Ren Chao Language and symbolic systems])
「東洋に生をうけてその英知をうけつぎ、西欧で教育されてその分析精神を身につけて、文字どおり世界市民となった知的巨人にしか書けない論評が、いたるところで平易にしてユーモアにさえ充ちたことばのうらにあたまをのぞかせていて、まことに諸学者にとってはこのうえない楽しい読み物であり、専門家にとっては1頁1頁が再発見でありおどろきである」(訳者の橋本萬太郎氏のあとがきより)


沼野 充義『屋根の上のバイリンガル』(白水Uブックス 1996 \950)
前半にはアメリカでの少数民族(?)であるイディッシュの話し手や、ロシア人、ポーランド人たちに光をあてて、その言語生活を描いている。後半では人称代名詞や、バイリンガル、ボディランゲージについての筆者ならではのエッセイが楽しめる。


河野 六郎・西田 龍雄『文字贔屓』(三省堂 1995 \2900)
河野、西田、という文字に深くかつ該博な知識を有する大先生同士の文字に関する対談集。文字の諸起源や解読にはじまり、文字と音や意味との関係、文字の形や構成・・・、と話は尽きない。


池上 嘉彦『ふしぎなことば ことばのふしぎ』(筑摩書房 1987 \1100)
ことばあそびや詩のことば、こどものことばに擬音語、同音語・・・、身近にあるさまざまなことばがみせる不思議にはじまって、ことばの根本的なしくみについて考えさせる本。


矢島 文夫『解読 古代文字』(ちくま学芸文庫 1999 \950)
線文字Aやイースター島の文字など、世界にはまだまだ未解読の文字がある。その一方でロゼッタストーンを13年かけて解読したシャンポリオンをはじめ、人類には輝かしい解読の歴史がある。本書では解読の歴史を概観しつつ、「解読」について多方面からアプローチしている。


シュリーマン(村田 数之亮 訳)『古代への情熱』(岩波文庫 青420-1 1954 \350)
トロヤ戦争の物語を読んだ少年シュリーマンは、美しい都市が必ず地下に埋もれていると信じその発掘を志す。その後猛勉強し、夢を実現するのだが、たくさんのことばを駆使したシュリーマンのことばを習得していくエピソードがまたなんとも興味深いのだ。


杉田 玄白(緒方 富雄 校註)『蘭学事始』(岩波文庫 青20-1 1959 \398)
辞書もなく文法書もない当時、蘭学創始時代の先人たちの苦闘はなみたいていのものではなかった。その記録は今も感動を呼ぶ。

5.比較言語学・世界の言語

5.比較言語学・世界の言語

風間 喜代三『言語学の誕生』(岩波新書69 1978 品切れ)
実証的な学問としての言語学は比較言語学にはじまった。ジョーンズの発見にはじまったこの分野が偉人たちによって確立していく壮大な物語を本書は着実に追っている。


朝日ジャーナル 編『世界のことば』(朝日新聞社 朝日選書436 1991 \1050)
見開き2ページに一つの言語、全部で110の言語をその専門家たちが解説している。ある言語をとりまく背景を知りたいとてっとりばやく思ったら、とても便利なこの1冊。


東京外国語大学語学研究所 編『世界の言語ガイドブック 1ヨーロッパ・アメリカ地域』『世界の言語ガイドブック 2アジア・アフリカ地域』(三省堂 1998年 各\2800)
外語の先生が中心になって作った本で、早津先生も「日本語」の項を書いている。音声や文法のしくみのみならず、名前のつけ方や挨拶、数詞のことも言語ごとに書いてある。


柴田 武 編『世界のことば小事典』(大修館書店 1993 \5665)
4ページに1つの言語、全部で128の言語について、文字と発音、ことばの背景、日常表現、文化情報までのっているすぐれもの。


池田 修 監修『世界を学ぶブックガイド』(嵯峨野書院 1994 \4480)
世界のある地域の言語や文化を知りたいと思ったらどんな本を読めばいいのか!? その問いに答えてくれる1冊。大阪外語の先生を中心に地域別に本を紹介、解説している。


千野 栄一 監修『世界ことばの旅(地球上80言語カタログ)』(研究社出版 1993 \6200)
世界の80の言語の話者から録音した生の音声を聞くことができる。外語の学生(当時)が留学生会館や大使館を回って録音したもので、話者はまず10まで数え、挨拶をしゃべり、それからおもいおもいに話している。最近CD版が出ました(\7000)。

4.記述言語学

4.記述言語学

梶 茂樹『アフリカをフィールドワークする』(大修館書店 1993 \1545)
未知の言語をもとめアフリカに入った筆者が、村の生活、言語調査の実態から、アフリカ音楽や映画の背景にいたるまで、多数の写真をまじえて紹介している楽しい本。


中川 裕『アイヌ語をフィールドワークする』(大修館書店 1995 \1751)
危機に瀕した日本の少数民族の言語であるアイヌ語の現在と未来を、筆者は冷静にかつ静かな愛情をこめてみつめている。アイヌの文化についてもくわしい。


中島 由美『バルカンをフィールドワークする』(大修館書店 1997 \1600)
さまざまな系統の違う言語がひしめくバルカン半島。ここでマケドニア語に取り組んだ筆者がバルカン世界を紹介する。バルカン料理の話も詳しい。


青木 晴夫『滅びゆくことばを追って』(岩波書店同時代ライブラリー 1998 \1100)
言語調査とはどのようなものか、現地に入るところからはじまってその全貌を描く。もはや古典ともいえる書。筆者は北米インディアンのネズパース語の専門家だ。


宮岡 伯人『エスキモー 極北の文化誌』(岩波新書364 1987 品切れ)
文のような長い単語を作るエスキモー語の独自の構造や、「雪」を示す語がたくさんあるその語彙体系、そして説話や厳しい環境の中での彼らの暮らしも描かれている。


小島 陽一『トルコのもう一つの顔』(中公新書1009 1991 \680)
トルコやイランに住む国を持たない少数民族クルド族。しかしトルコ政府は彼らの存在さえも認めていない。その目をかいくぐってまだ記録のない言語を調べた物語である。


稲垣 美晴『フィンランド語は猫の言葉』(講談社文庫 1995 \540)
一人の大学生が、日本ではマイナーな国に留学して、その言語と文化に出会った体験をつづるエッセイ。フツーの大学生の視点でみずみずしく書かれている。


『モンゴルに暮らす』(岩波新書 赤 194 1991 品切れ)
モンゴル科出身の外語の先輩一ノ瀬さんは女性としては日本初めての留学生としてモンゴルにわたり、多くのすばらしい友人たち、そして生涯の伴侶に出会う。さまざまに生きるモンゴルの人々を豊富な写真も添えて紹介しつつ、もちろんそ一方で「文化をうつすことば」に触れることも忘れていない。

3.言語類型論

3.言語類型論

林 栄一・小泉 保『言語学の潮流』(勤草書房 1988 \2890)
ヨーロッパとアメリカに地域別にした言語学史がくわしく、最近の諸理論の紹介もある。17人の著者で分担して書いているので、各項目はわりと細かい。


角田 太作『世界の言語と日本語』(くろしお出版 1991 \3000)
筆者が関心をもったさまざまな観点から、世界の言語と日本語の相違と、そこに働く類似した原理について考えている。所有傾斜や二項述語階層など、筆者独自の枠組みも提示されていて面白い。飾らない語り口で、きちんと具体例によって説明している。


バーナード・コムリー『言語普遍性と言語類型論』(ひつじ書房 1992 \3296)
語順や使役、関係節などをテーマに言語普遍性と類型論を、さまざまな言語の具体的なデータによって解説している。


クロード・アジェージュ『言語構造と普遍性』(白水社 1990 \2427)
150ページあまりの本だが、実に754もの言語を研究対象としている筆者の広い知識に驚かされる。


橋本 萬太郎『言語類型地理論』(弘文堂選書 1978 品切れ)
主に中国語を中心に、北から南へ移り変わっていく言語の様子を描き出した筆者の豪快な構想である「言語類型地理論」が展開されている。


橋本 萬太郎『現代博言学』(大修館書店 1981 \3600)
音声から文字にいたるさまざまな現象を広大な地域と多くの言語の観点から広くとらえ、一つ一つ筆者ならではの結論を出していく過程が記されている。


ビレーム・マテジウス『マテジウスの英語入門 対照言語学の方法』(三省堂 1986 品切れ)
チェコの生んだ偉大な言語学者マテジウスが一般の人のためにわかりやすく書いた興味深い本。英語の正書法のしくみや、受動態とFSPの関係などが展開されている。原題はじつに「英語なんかこわくない」、である。巻末には要領のいいチェコ語の概説もついている。

2.音声学

2.音声学

基本レベル

川端 いつえ『英語の音声を科学する』(大修館書店 1999 \2200)
図も多くてわかりやすく、音節や音韻論の説明は類書の中では新しい知見が盛り込まれていて良い。例やコラムも楽しく読めるように考えられている。形態音素や同化の章があるのもいい。


斎藤 純男『日本語音声学入門』(三省堂 1997 \2000)
さまざまな言語からの例があがっていて、調音の仕方を示す図も豊富なのが良い。音声の現役の専門家ならでの記述で、音響音声学的な分析も示されている。インターネットやテープでさらに学ぶ方法についても書いてあって参考になる。


国際交流基金日本語国際センター『教師用日本語教育ハンドブック 発音』(凡人社 1989 \1250)
日本語教育の立場から書かれていて、日本語の音声について詳しく、指導の際に有効な練習例、ミニマルペアがあがっていて便利だ。


柴谷 方良・影山 太郎・田守 育啓『言語の構造 音声・音韻編』(くろしお出版 1981 \2625)
音韻論(特に生成音韻論)について、平易で段階的な練習問題が十分にあって、わかりやすい。実際の分析の手順を学ぶことができる。なお統語・意味編もある。


ベルティル・マルンベリ(大橋 保夫 訳)『音声学』(白水社 文庫クセジュ 1976 \750[Bertil Malmberg La phone'tique])
翻訳なので、フランス語をはじめヨーロッパの諸言語の例が多いのが少し問題だが、言語学全体を広く見据えて、音声学・音韻論をしっかり位置付けているところが良い。


本格レベル
小泉 保『音声学入門』(大学書林 1996 \3090)
CatfordやLadefogedの図や表を多くひいていて、また諸言語の音声のテープがついていて有用だが、値段が高いのと、少し間違いもあるのが難点だ。AVセンターにテープ有り。


竹林 滋『英語音声学入門』(大修館書店 1982 \1957)
英語の音声について、実戦的で見やすく書かれている。練習もついているから、テープと併用すると良い。AVセンターにテープ有り。


『日本語教育指導参考書1 音声と音声教育』(文化庁 1971 \640)
全体が穴埋め形式になっていて、読むにはつらいけれど、知識の確認や整理に良いかもしれない。値段は安い。


城生 佰太郎『音声学』(アポロン音楽工業社 1982 品切れ)
ちょっと独特だが、「おしゃべりバイオリン」なども入ったおもしろいテープがついている。母音やアクセントがくわしい。さまざまな言語の音声も聞ける。AVセンターにテープ有り。


参照用図書
NHK 編『日本語アクセント辞典』(日本放送出版協会 1986 \4800)
留学生は必携。日本人も一度巻末の品詞別のアクセント及び複合語のアクセントの解説に目を通しておくとよい(特に共通語とは違うアクセント体系を持っている者は必携)。

1.言語学全般

1.言語学全般

基本レベル

千野 栄一『言語学の開かれた扉』(三省堂 1994 \1750)
言語調査や音韻論からはじまって、言語学の各分野がそれぞれ7,8ページで紹介してあり、その分野の最も良い参考文献もあげてある。つまり入門書の入門書、というわけだ。後半には偉大な言語研究者たちの列伝が4ページづつあって、彼らの人生や努力の軌跡が、私たちの心を励ましてくれる。


千野 栄一 編『日本の名随筆 別冊93 言語』(作品社 1998 \1800)
谷川俊太郎や柳田國雄、金田一京助をはじめ、そうそうたる24人のメンバーが書いた言語に関する選りすぐりエッセイ集。「世界で一番長い字」だの、「バイリンガリズムについて」だの、どんな話か思わず読んでみたくなるものばかり。アフリカから台湾の山奥まで、世界のさまざまな地域で言語の現地調査に取り組んだ人たちの話も読める。


町田 健『言語学が好きになる本』(研究者出版 1999 \2000)
気軽に読めることを何よりも第一に考えた本。読むのに面倒くさい外国語の例などは極力減らし、縦書きで書いている。「日本語を言語学する」の章には「は」と「が」の話もあるし、「言語学で語学力アップ」、なんて章もある。巻末に言語学をやりたい人の文献ガイドもついている。


千野 栄一『言語学の散歩』(大修館書店 1975 \1900)
男性名詞や女性名詞なんてなぜあるんだろう? 本当のバイリンガルっているんだろうか? そんな問いに答えを与えてくれたり、もっとすごい例を示してくれたりするのがこの本だ。色の名前が二つしかない言語や二進法の数詞を持つ言語、なんてのも登場する。類型論や比較言語学、日本語系統論など、興味をそそる分野についても教えてくれる。


風間 喜代三・上野 善道・松村 一登・町田 健『言語学』(東京大学出版会 1993 \2575)
いろんな人が書いているので、章によって偏りもあるけれども、さすがに東大出身の諸先生が書いているのでオーソドックスな本格派の入門書、という感じがする。特に後半の類型や歴史、音声・音韻の章は深い問題に触れていて、良い。それでも初心者にはやっぱりちょっと難しいかもしれない。でも本格派の入門書もぜひ一冊読んで欲しい。


本格レベル

町田 健・籾山 洋介『よくわかる言語学入門』(バベルプレス 1995 \2300)
題名もちょっと安易な感じで、中身の作りも受験参考書みたいだが、分かりやすさに重点をおいている本だ。間にコラムもはさんである。言語学の広い範囲をある程度カバーしているので、用語の整理や、自分の理解の確認に便利だ。ただし音声学はなく、統語論も少し偏りが感じられる。


西田 龍雄 編『言語学を学ぶ人のために』(世界思想社 1986 \2233)
特に1章がわかりやすく、社会言語学や言語人類学の章も良い。「文字」についての章があるのも良い。後半には言語学の名著の文献解説もついている。ただ全体的にやや難しい。


宮岡 伯人 編『言語人類学を学ぶ人のために』(世界思想社 1996 \2233)
文化の一側面としての言語を多角的にとらえており、個々の章もバラエティに富んでいる。言語と文化の関係を考えるのもっとも良い入門書。我らが外語の中川先生も「フィールドワークのための音声学」の章を書いている。


小泉 保『教養のための言語学コース』(大修館書店 1984 \2300)
導入が独特のスタイルで、ちょっと冗長な気もするが、図も多くて見やすく、文もくだけていてわかりやすい。筆者が専門としているウラル諸語を中心に多くの言語から例をあげている点もいい。


千野 栄一『言語学のたのしみ』(大修館書店 1980 \2200)
外語大で長く教えられた千野先生が、エッセイ形式で言語の諸側面を楽しく書いている。トピック毎に数ページずつなので、どこからでも読めるし、短い時間にも読める。外語時代のエピソードもいくつも登場する。


千野 栄一『注文の多い言語学』(大修館書店 1986 \1602)
上記の続編。能格言語や「言語のガラパゴス」カフカースの話、文字やなぞなぞに文体のパロディまで、さらに多様な観点から言語を、そして言語学を語っている。


千野 栄一『ことばの樹海』(青土社 1999 \2200)
やはり千野先生の言語及び言語学に関するエッセイ集で、最新のもの。「一番難しい言語」や「バルカン半島の言語接触」、「文字を作った人々」などここでも楽しいテーマがとりあげられている。


田中 春美・樋口 時弘・家村 睦夫・五十嵐 康男・倉又 浩一・中村 完・下宮 忠雄『言語学のすすめ』(大修館書店 1978 \2000)
少し古くなってしまったところもあるが、幅広い領域をカバーしたオーソドックスな言語学の入門書。


西垣 通 編『日本の名随筆 別冊88 文字』(作品社 1998 \1800)
白川静に矢島文夫、中西亮、西田龍雄とくれば、みんな知ってる文字の大家ばかり。その他に安部公房や井上ひさし、中島敦のミニ小説やエッセイもある。まずはこんなところから文字の持つ面白さについて考えてみるのもいいかもしれない。なおこのシリーズにはさらに清水義範編の『別冊66 方言』や、『27 地名』、『45 翻訳』、『74 辞書』なんてのもある。


参照用図書

亀井 孝・河野 六郎・千野 栄一 編『言語学大辞典』
 第1~5巻[世界言語編]、第6巻[術語編](三省堂 1988, 1989, 1992, 1992, 1993, 1996 / \43000, \42000, \38000, \38000, \39000, \49000)
・とにかくまずは一度図書館に行って手にとって広げてみてほしい。どの本も2000ページ近くあり、3200もの言語がとりあげられている。
・まず第1巻には89ページの雄編、「アイヌ語」がある。J科ならこの日本の少数民族言語についてまず読んでみてもらいたい。「アフリカの諸言語」、「インド・ヨーロッパ語族」、「オーストラリア原住民語」などの大作や、「広東語」もこの巻だ。
・2巻にはなんといっても「日本語」がある。日本語の歴史と現代日本語に大きく分かれていて、その中も音韻、文法、・・・と各分野にわたっている。南不二男、河野六郎、亀井孝、寺村秀夫他そうそうたる執筆陣である。何をおいてもまずこれを読む必要があろう。「朝鮮語」と「中国語」もこの巻だ。対照言語学などを目指す留学生諸君は、まず自分の母語について、言語学的にどのようにとらえられているのか知る必要がある。
・3巻では「北米インディアン諸語」の記述がくわしい。
・4巻では「琉球列島の言語」。係り結びやP音など古い特徴を保ち、他方で完全に3母音に移行した与那国方言までをも含む琉球列島の言語は、日本語という言語のしくみを考える上で不可欠である。ただここでの記述は一部の学派の独特の用語が使われていて読みにくい面がある。
・5巻は半分索引だが、ここには「琉球列島の言語(奄美方言)」がある。
・6巻は術語編で、随時参照すると言語学の力がつく。新しい知見も多く、思いがけない項目もある。まずは「FSP」、「格」、「格の触手」、「言語」、「言語学」、「言語人類学」、「言語類型論」、「言語連合」などをお勧めしておく。各国の言語学の伝統・発展状況についても書かれているし、巻末の人名解説も便利だ。


デイヴィッド・クリスタル(風間 喜代三・長谷川 欣佑 監訳)『言語学百科事典』 (大修館書店 1992 \15450[David Crystal, The Cambridge Encyclopedia of Language])
きれいな写真や図表が豊富にあって、言語学のさまざまな分野に触れている。個々の現象の具体例もたくさんのっている。幼児の言語習得、言語と脳の関係、手話や言語外コミニュケーションなどもくわしい。読んでいても眺めていても楽しい本。


世界の文字研究会 編『世界の文字の図典』(吉川弘文館 1993 \17500)
これも読んでも見ても楽しい本で、古今東西世界中の文字を解説している。個々の文字の読み方も書き方もくわしい。世界の文字の豊富さと、その伝播や発展の歴史に深く魅せられる。漢字音もベトナムにわたるまであるなど、網羅的であるのはすごい。


『講座 言語』全6巻(大修館書店)

柴田 武 編『言語の構造』(1980 \2400)
池上 二良 編『言語の変化』(1980 \2500)
南 不二男 編『言語と行動』(1980 \2600)
千野 栄一 編『言語の芸術』(1981 \2500)
西田 龍雄 編『世界の文字』(1981 \3300)
北村 甫 編『世界の言語』(1981 \3800)

それぞれの巻を10名前後のすぐれた研究者が分担して書いていて、充実したシリーズになっている。300~500ページぐらいで、活字も詰まっていなくて読みやすい。


B・コムリー S・マシューズ M・ポリンスキー 編(片田 勇訳) 『世界言語文化図鑑 世界の言語の起源と伝播』(東洋書林 1999 \12000)
全ページカラーで、大きな言語分布地図と写真を満載し、地球上の言語の全体像を描き出そうとしている。分類はややおおざっぱだが、各言語のおもしろいトピックも取り上げている。翻訳に難点があるのが残念だ。

言語学関連図書紹介

1.言語学全般
2.音声学
3.言語類型論
4.記述言語学
5.比較言語学・世界の言語
6.古典・その他

過去に指導した修士論文

過去に指導した卒業論文

2006年度
加藤奈美「日独対照研究-身体部位名称を含む慣用句を用いて」(ドイツ)
佐藤健太郎「ソロン語の母音調和に関する音響音声学的研究」(フランス)
山田洋平「アイヌ語北海道諸方言における神謡の人称」(モンゴル)
山本貴也「漫才におけるおかしみの構造の言語学的分類」(中国)
森川太介「中国語(北京官話)指示代詞の統語的用法」(中国)
仁村哲也「広島方言の継続アスペクト」(英米)
西野剛「スペイン語における認識に関わる二動詞-saberとconocer-」(スペイン)
増野奈央「文章表現におけるオノマトペの使用傾向」(ヒンディー)
小湊歩「ロシア語動詞と日本語動詞のアスペクトの対応関係に寄せた対照研究」(ロシア)
吉田由佳「擬音語・擬態語から見た日本語非外来語片仮名表記の考察」(日本)
高橋麻衣「ビルマ語の助動詞-khE.についての考察」(ビルマ)
仲地加奈「ヒンディー語のecho formation」(ヒンディー)
柳有紀子「動物名詞を用いた拡大Augmentativbildungについての研究」(ドイツ)
土佐栄樹「広告キャッチフレーズにおける比喩の諸相」(スペイン)
田森加奈「ビルマ語助動詞配列の再考察」(ビルマ)


要旨
加藤奈美「日独対照研究-身体部位名称を含む慣用句を用いて」(ドイツ)
本論文では、身体部位名称を含む慣用句を用いて日本語とドイツ語を対照研究した。それぞれの文化・言語背景により、それぞれの身体部位名称に与えられている慣用句の中での意味にどの程度の共通点・相違点があるかを調べた。実際に、それぞれの名称を調べてみると共通して持つ意味は多く見られたが、慣用句全体の数の割合では差が見られ、またどちらかにしかない意味を多く見られた。

佐藤健太郎「ソロン語の母音調和に関する音響音声学的研究」(フランス)
 ツングース諸語のひとつであるソロン語に関する音声学的研究は,これまで記述者の聴覚的印象に頼るという素朴な観察方法に依拠したものであった.本稿ではそういった主観性をなるべく排除し,客観的根拠に基づく研究として音響音声学的手法を用いての検証を行った.主な対象は母音であり,具体的にはそのフォルマント周波数から各音素の母音音質を,さらに音響ダイアグラムからは母音調和の類型についても考察している.

山田洋平「アイヌ語北海道諸方言における神謡の人称」(モンゴル)
神謡と呼ばれる口承文芸作品を対象として、まだ断片的記述に留まっているアイヌ語の人称接辞a=, =anの用法について調査した。神謡の中では、一般的アイヌ文学に用いられる4人称と、1人称複数のci=, =as とが混用されることが知られている。これまでに刊行されている123話の資料の人称使用実態を調査し、「神謡冒頭部」「引用文前後」「2次的なサケヘ」「その他1人称複数と共起しやすい語」などの条件が人称の切り替わり・揺れに関与していることを示した。

山本貴也「漫才におけるおかしみの構造の言語学的分類」(中国)
本研究では、漫才を言語学的に研究した先行研究を整理し、その問題点をまとめる。それらの研究をふまえ、実際の漫才演目から用例を収集して、「おかしみの構造」の客観的分類法を明らかにする。さらに、「おかしみの構造」のがどのように用いられているかを分析し、漫才演目において演者が聴衆に笑いを伝える上でどのような工夫がなされているかを考察する。

森川太介「中国語(北京官話)指示代詞の統語的用法」(中国)
中国語(北京官話)における指示代詞(代名詞)「这・那」の統語的用法を中国文学作品のコーパスを用いて分析した。その結果、指示代詞単体で目的語の位置に立つ用例は一例も存在しないことが確認できた。そして、近称の指示代詞である「这」が動詞述語文主語の位置に立つ用例では、文脈に代替する用例が大半であり、現物を指示する用例は現れないということを確認することができた。

仁村哲也「広島方言の継続アスペクト」(英米)
広島方言では、継続アスペクトを表すヨル系形式と結果アスペクトを表すトル系形式が使い分けられてきたが、近年では継続アスペクトにおいてもトル系形式が使われるようになってきている。調査の結果、若い世代ほど、また、動詞別にみると、主体動作動詞、主体動作客体変化動詞、主体変化動詞の順に、その許容度は高かった。このことから、継続アスペクトの意味におけるトル系形式の進出がそのような順序で進行したことがわかる。

西野剛「スペイン語における認識に関わる二動詞-saberとconocer-」(スペイン)
スペイン語において、認識に関わる動詞が2つ存在することはスペイン語学習者にとって難しい問題となっている。本研究では、意味・統語の両面から、コーパスを用いての分析を試みた。その結果、対照的観点からはsaberが「わかる」、conocerが「知る」と関わりが深いことがわかり、さらに、認識の過程でsaberは内的思考を表すことができるが、conocerはほとんど表しえないことがわかった。

増野奈央「文章表現におけるオノマトペの使用傾向」(ヒンディー)
 文章表現におけるオノマトペの使用傾向を分析することで、どのような語がオノマトペと判断されるのかを明らかにした。小説29作品中から抽出したオノマトペを、統語的・音韻形態的に分析し、辞典を用いて語彙化を調べた。表記方法や作家別の使用傾向にも着目し、多角的な視点から分析。結果、語彙化され定着しすぎているものはオノマトペとは判断しにくいことがわかった。その他、俗語的・個人的オノマトペの存在も確認できた。

小湊歩「ロシア語動詞と日本語動詞のアスペクトの対応関係に寄せた対照研究」(ロシア)
本稿はロシア語動詞の完了体・不完了体が日本語の動詞複合体のどのアスペクトに分類されるのかを考察した対照研究である。完了体は、ある動作・作用が次の動作・作用を呼び起こす場合などに使用される傾向があった。一方、不完了体はベースに状態性があることを確認できた。また、日本語動詞複合体の「~かける」というアスペクト(将然)は、ロシア語動詞では積極的に表現されないということがわかった。

吉田由佳「擬音語・擬態語から見た日本語非外来語片仮名表記の考察」(日本)
本論文では小説をコーパスにして擬音語・擬態語を抽出し、それぞれで片仮名表記がどの程度の割合で現れるかを調査した。その結果、擬態語については平仮名表記が圧倒的多数を占めており、擬音語についても片仮名表記は全体の半数前後しか見られなかった。また、擬音語・擬態語に片仮名表記が用いられるのは形態的な要因ではなく意味的要因からであり、その要因には3つ考えられることがわかった。

高橋麻衣「ビルマ語の助動詞-khE.についての考察」(ビルマ)
 本稿は「過去」と「現在位置への移動」を示すとされるビルマ語の助動詞-khE.についての研究である。-khE.は付加が任意であるとされている。付加されやすい状況とその場合の-khE.の機能を明らかにすべく、資料から得た-khE.について、①-khE.に先行する動詞の分類、②-khE.の出現位置の2つの視点から考察を行う。

仲地加奈「ヒンディー語のecho formation」(ヒンディー)
卒業論文では、ヒンディー語のecho formationの作成方法を明らかにすることを目的としている。調査方法は、まず辞書からecho formationを抽出し、それを分析することである程度の予測を立てる。そして小説における実際の使用状況の調査によって、使用頻度の高いecho formationを明らかにする。そして辞書、小説からの調査における問題点について、コンサルタントへのアンケート調査を行った。

柳有紀子「動物名詞を用いた拡大Augmentativbildungについての研究」(ドイツ)
本稿では、これまでにあまり扱われてこなかったドイツ語の動物名詞について、拡大辞的用法という観点から4つの調査を行った(①独和辞典による拡大形の収集、②インターネット検索サイトを用いた拡大形の検索、③アンケート調査、④動物名詞を用いた諺・慣用句の収集)。さらにこれらの結果を総合し、動物名詞の持つイメージと、動物名詞の拡大辞としての生産性についてそれぞれ考察を行った。

土佐栄樹「広告キャッチフレーズにおける比喩の諸相」(スペイン)
広告キャッチフレーズを用いた比喩の研究。独自に作成したコーパスから比喩表現を収集し、『分類語彙表』を用いて語彙論的な考察を行う。広告キャッチフレーズが人をひきつける文章であるために、比喩がどのような役割を担っているか。また、比喩表現の使用傾向にはどのようなものがあるかに光を当てる。

田森加奈「ビルマ語助動詞配列の再考察」(ビルマ)
本稿ではビルマ語の法的表現のうち、命令・禁止表現、祈願・懇願表現、勧誘表現に関し考察を行った。その際、各表現形式の助動詞配列と共起する動詞の二点に注目した。助動詞配列では先行研究では上がっていなかった同一の助動詞が複数共起する例を確認することができた。また、共起する動詞に関しては、「コントロール可能か否か」という点が重要であることが指摘できた。資料の選定等が今後の課題として残った。

2005年度
赤枝 裕美 「日本語縮小辞「コ」とスペイン語縮小辞「-ito」「-illo」について」
安藤 さや香 「インドネシア語の受動文と人称動詞」
大塚 行誠 「口語ビルマ語における派生名詞としての動詞重複」
荻原 典子 「現代の日本語(共通語)の談話における無助詞現象」
加瀬 麻奈美 「マオリ語の前置詞iとki」
岸 美有紀 「ペルシア語のbayestanについて」
北田 裕子「マンガライ語クンポ方言の所有表現―所有接辞と前置詞deの使い分けについての一考察―」
坂田 律子 「機能動詞構造におけるドイツ語のmachenと日本語の「する」の対照研究」
清水 悠史 「ペルシア語の無強勢の-iについて」
張 丁允 「漢字語のアクセント体系について」
原田 走一郎 「若年層の福岡方言における「-ト」の接続について」
松木 康 「北河内における二人称としての「自分」の使用について」
山田 容子 「ドイツ語の平叙文における心態詞dochの働き」
兪 美蘭 「「バ」「ト」、「タラ」、「ナラ」の用法について―日本語母語話者と日本語学習者の比較研究―」
吉田 麻澄 「福島県小野町の文末詞性」


2004年度
斉藤 芳江 「中国語命令文における‘一点儿’について」
李  京玉 「中国語における可能表現の否定―「不能V」及び「V不了」についての考察―」
中山 薫 「台湾高雄県美濃鎮における客家語の音韻現象―音節頭子音/n/、/l/の音節について―」
黛 友紀子 「アラビア語における名詞文の役割―テキスト分析と対照分析を通じて―」
豊永 翠  「イタリア語直説法未来の〈命令〉〈勧誘〉について」
吉田 佳世  「日本語オノマトペの強調形派生における有標性」
福田 あやの 「破壊を表す動詞「壊れる」の多義性について」
桝谷 知行  「漫才のツッコミに関する一考察」