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2018年4月23日

コンシェルジュおすすめの本『明るい部屋 写真についての覚書』

明るい部屋 写真についての覚書

ロラン・バルト著、花輪光訳

東京、みすず書房、1985年

                               明るい部屋 : 写真についての覚書 Barthes, Roland(著) - みすず書房

3F閲覧室

請求記号:A/740/23 図書ID:0000024722

『明るい部屋』(『LA CHAMBRE CLAIRE』)は、一般的な写真論を超え、写真の存在論が問われている。バルトは、写真の規則として自ら発見した「ストゥディウム」(studium)と「プンクトゥム」(punctum)という、二つの要素を言及している。

前者は、「」の問題であって「一般的な関心」である。後者は、このラテン語意の「刺し傷、小さな穴、小さな斑点、小さな裂け目」という意味のように、「ストゥディウムの場をかき乱しにやってくる」ものである。バルトが5歳の母の姿を映した「温室の写真」に読み取ったのがそれに当たる。

 バルトによると、「冒険」のように「不意にやってくる」写真は、それを見る人との間に「活気付け」と呼ばれる相互作用が行われる。バルトは、人の心を引き付ける写真の意味作用を、母の死がもたらした〈喪〉の体験の中で遭遇した写真の本質・ノエマ(《それはかつてあった》)をつうじ、明らかにしている。母の死後、〈本当の喪〉に直面したバルトは、「温室の写真」を通じ、自分の不在を埋めている幼い母の姿から自分の認識の範囲に生きていた母の姿との連続性を〈発見〉する。

 誰でも写真が撮れる今日、本書は個人的な体験としての写真の意味を、〈歴史〉に入る行為にまで拡大した試みとして読まれる。読者の方に、写真というものが、最低限「それはかつてあった」という誰にも拒否できない真実として蘇ってくるだろう。

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