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今日のアフリカ

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ブルキナファソがフランスとの防衛協定を破棄

2023/01/26/Thu

 25日、フランス外務省は、ブルキナファソ政府から2018年に締結した二国間防衛協定の破棄通告を受け取ったと公表した。これに先立って、23日にはブルキナファソ政府がフランスとの防衛協定終了を決定したと発表していた。これにより、ワガドゥグ近くに滞在する400人のフランス兵(特別部隊)は1ヶ月以内に撤収することになる。
 昨年9月30日のクーデタ以来、ブルキナファソの主要都市で、フランス特別部隊の退去を要求するデモが頻発していた。1月20日のデモでは、「イスラム急進主義勢力(ジハディスト)は何年にもわたって我々を攻撃し続けている。フランス軍は世界最強のはずだが、事態は一向に改善しない。フランス軍が対応しようとすれば、できたはずだ」という声が聞かれた(23日付ルモンド)。1月半ばにフランス閣僚がブルキナファソを訪問し収拾を模索したと思われるが、事態の展開は早かった。
 2015年以来、ジハディストの攻撃によって、ブルキナファソでは数千人が犠牲になり、200万人が国内避難民化した(25日付ルモンド)。マリやブルキナファソでは、「フランスはジハディストと結託している」という主張がしばしば訊かれるが、外部から見れば荒唐無稽に思えるこの主張と、「フランスは何もしない」という感情との距離は遠くないのであろう。とりわけブルキナファソは、住民の間に自警団を組織してジハディストに対抗してきた。結果として、自警団の団員である民間人に多大な犠牲が生まれており、それがフランス軍への反感をさらに強めている。
 25日付ルモンド紙は、「ブルキナファソの警告」と題する社説で、アフリカとの対話やそこでのプレゼンスのあり方について真剣に考えるべきだと述べている。
 2022年、フランスはマリ、中央アフリカから兵力の撤退を余儀なくされた。そして、今回はブルキナファソである。いずれも国民の間に高まった反フランス感情が背景となっている。この感情は民衆を動員するだけでなく、ロシアの傭兵を利用し、軍部が政権に留まることを正当化するために利用されている。
 この感情は単にロシアによる情報操作に帰せられるものではなく、これまでのフランス側の姿勢に由来するところがある。ブルキナファソに関して言えば、サンカラ暗殺に際しての曖昧な態度や、コンパオレ政権への支持を人々は忘れていない。フランスが繰り返した介入や傲慢な態度が反感の基層をなしている。
 以上のようなルモンド紙社説の分析を読むと、フランス側もまた現状に困惑し、対応を模索していることがわかる。アフリカに広がる反仏感情は、フランスとアフリカの歴史的な関係に深く根を下ろしている。それを認識した上での対応が必要だということだろう。
(武内進一)