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今日のアフリカ

今日のアフリカ

岐路に立つ新型コロナウイルス感染症対策

2022/04/23/Sat

 「ウィズ・コロナ」への移行に向けた現状と課題は各国ごとに異なり、日本を含めて世界各国が今後の対応を模索している。アフリカも同様に、その政策的対応をめぐる岐路に立っている。
 従来、アフリカへの新型コロナワクチン供給が不十分だという指摘が繰り返しなされてきた。一方で、ナイジェリア、南スーダン、マラウイなどがワクチンを大量に廃棄している。最近では、ケニアがCovaxで入手したアストラゼネカ社製ワクチン84万回分を廃棄した(21日付ルモンド)。これは、ワクチンを地方に供給するロジスティクスに問題があるためである。Africa-CDCのンケンガソン長官は、14日、輸送、貯蔵、そして接種に関わる人員面での能力を拡大するための支援が必要だと強調した。
 一方で、COVID-19だけに医療資源を集約させる政策への疑問の声も出ている。変異株の特徴や若年層中心の人口構成のために、アフリカで新型コロナウイルス感染症は重篤化しにくい。アフリカ人の多くが新型コロナウイルス感染症への抗体を持っているとの調査結果はこれまでも何度か報じられており、4月上旬にはアフリカ人の3分の2が感染経験があるとのWHOの調査が発表されている(7日付ルモンド)。
 アフリカにおいて、COVID-19は死因の上位に来る病気ではない。一方、HIVや結核、マラリアなど、死因上位の病気への対応が、COVID-19対策のために後回しになっている事実がある。こうした疾患を持つ人がCOVID-19に感染すれば重篤化しやすいので、そのための対応は必要だが、COVID-19対策だけに注力すればよいという訳ではない。ファイナンシャルタイムズは社説で、アフリカの新型コロナウイルス感染症に関して、政策的な優先順位を再検討すべきだと述べている(22日付)。
 ワクチン生産について、アフリカは難しい判断を迫られている。ロジスティクス面の課題や重篤化しにくいことによる人々の消極的な姿勢もあって、ワクチン接種率は伸びていない。そのことがワクチンの現地生産計画を困難にしている。7日付ルモンド紙によれば、南アのダーバンに本拠地を置くAspen Pharmacare社は、生産停止せざるを得ないかも知れないとの見通しを示した。2020年11月、同社は米国のJohnson&Johnson社と契約を結び、「アフリカ人のためのアフリカで製造された」コロナワクチン製造に乗り出したのだが、需要の伸び悩みから困難に直面している。前述の基礎疾患を持つ人々だけでなく、そうした人々に接する医療従事者のためにもワクチン接種は必要である。現地生産計画が頓挫すれば、アフリカにとって大きな痛手となる。政策の優先順位を再検討する必要はあるにせよ、ワクチンの現地生産能力を高める努力は怠るべきでない。