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今日のアフリカ

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モロッコ総選挙でイスラーム主義政党の敗北

2021/09/12/Sun

 先週8日に実施されたモロッコの総選挙(国会、地方議会、市町村議会)で、与党の公正開発党(Parti de la justice et du développement: PJD)が大敗し、国王に近い独立国民連合(Rassemblement national des indépendants: RNI)や真正近代党(Parti Authenticité et Modernité: PAM))が躍進した。10日、国王のモハメド6世は、第一党となったRNI党首のアハンヌーシュ(Aziz Akhannouch)を首相に指名し、組閣を命じた。なお、暫定選挙結果については中東調査会のHPで見ることができる。
 PJDは2011年の「アラブの春」の際に政権を獲得したイスラーム主義政党だが、今回の選挙では議席を125から13に激減させる惨敗を喫した(定数395議席)。内紛によって、指導者のひとりベンキーラーン(Abdelilah Benkirane)前首相をパージしたうえに、コロナ禍で国民の生活は逼迫した。さらに、2020年12月のイスラエルとの関係正常化によって、一般大衆の支持を失った。敗北を受けて、PJDの執行部は辞任を表明した。
 第一党となったRNIの党首アハンヌーシュは、モロッコ最大の富豪と言われる。10日付ルモンド紙によれば、父親の代から石油小売業で蓄財し、自身はカナダでMBAを取得した後にコングロマリットのAkwa Groupを設立して、不動産やメディアを含めて事業を拡大した。もともと、前国王ハッサンII世の右腕として長年内相を務めたバスリ(Driss Basri)に近かったが、バスリが現国王によって排除された後も王宮との関係を維持し、国王と親密な関係を保った。第二党のPAMも王党派であり、モロッコはイスラーム主義政党主導から王党派主導へと、政治の中心が移動することになる
 同じマグレブのチュニジアでも7月にイスラーム主義政党が政権から排除されているが、こうした動きがどのような地域的含意をもつのか、注意深い観察が必要である。