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今日のアフリカ

今日のアフリカ

コロナを起因とする国内医療の見直し

2021/02/01/Mon

 1月20日、ジンバブウェでは外務大臣シブシソ・モヨ氏がコロナのために亡くなったことが報じられた(Aljazeera 1月20日)。2017年のムガベ大統領に対するクーデーターをテレビで告知したことで知られるようになった人物である。コロナの第二波の影響でジンバブウェで亡くなった大臣はこれで三人目となる。コロナの流行前であれば、このような権力者たちは南アフリカや中国などの国外で治療を受けるのが普通であった。「ジンバブウェの政治エリートは長年崩壊に瀕していたローカルのヘルスケアに向き合わざるをえなくなっている」とアナリストは分析している(Aljazeera 1月30日)。

 国家指導者層が海外で治療を受けるのはアフリカでは一般的である。ジンバブウェでは、ムガベ元大統領がシンガポールの病院で2019年に亡くなっているが、エチオピアや、ザンビアなど他のアフリカの国家的指導者においても、海外での治療中に死亡したケースは多い。また、コロナの流行前は指導者層だけではなく、多くの上流・中産階級の人々が海外の医療ケアを利用していた。2015年の段階では、ケニア航空やエチオピア航空など主要航空会社の旅行者の25%はメディカルツーリストだとされていた。特にインドの民間セクターへ向かう人が多いことが報告され、アフリカは毎年10億米ドルを海外の治療で失っていると見積もられていた(IMTJ 2016)。金銭的に余裕がある層が海外の医療に依存する結果、国内の医療サービスは顧みられない傾向にあり、2018年時点でのサハラ以南アフリカのヘルスケアに対する予算は、世界平均の約半分であるGDPの5%程度にとどまっていた。その結果、国内の医療サービスは発展せず、ジンバブウェでは医療環境の改善や給料の支払いを求めてこれまで医療関係者が何度もストライキを起こすような状態だった。

 海外に流出する治療に対する支出を、国内の医療ケアの改善への投資にあてることは、これまでも提起されてきたが、国外の渡航の規制が高まり、権力者ですら国内で治療を受けなければいけない今、国内の医療サービスの改善がこれまで以上に期待されている。