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今日のアフリカ

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マリで移行政権発足

2020/09/26/Sat

25日、大統領に指名されたバ・ンダウ(Bah N'Daw)が宣誓を行い、クーデタ後のマリで文民統治への移行に向けた新政権が発足した。バは退役軍人で、ケイタ前大統領の下で国防大臣を務めた経験を持つ。副大統領には、クーデタを主導した反乱軍(CNSP)トップのゴイタ大佐が就任した。
 8月18日のクーデタ以降、CNSPはマリ内外と交渉しつつ、移行政権の準備を進めてきた。9月5~6日、10~12日には、国内の主要グループを集めて国民協議(consertations nationales)を開催し、移行政権の構成や期間について議論した。全国民による協議を経て移行政権を発足させる形をとりつつ、主導権はCNSPが握っていたことは、移行政権トップの構成から明らかである。
 この間CNSPに圧力をかけ続けたのは、地域機構のECOWAS(西アフリカ経済共同体)であった。CNSPは当初、移行期間3年とし、軍を辞職したゴイタ大佐が移行政権のトップに就くことを提案したが、いずれもECOWASによって拒否された。移行期間を18か月とし、退役軍人のバが大統領に就任したのは、そうした交渉の結果である。
 新政権に対するフランスの態度は少々曖昧である。マクロン仏大統領は、国連総会での演説で、反乱軍が迅速に選挙を組織し、完全な文民統治に戻すよう呼び掛け、それに失敗すればイスラーム急進主義勢力に対する戦いに国際支援を失うだろうと述べた。反乱軍主導で移行政権が発足したことに懸念はあるものの、これ以上マリで混乱が深まってイスラーム急進主義勢力が伸長することは何としても避けたい。マリでは、汚職がひどく、治安回復に無能な政治家が民衆の信頼を失っており、反乱軍を支持するデモが起きている(9月11日付ルモンド)。まずは治安回復を優先させようというのが、フランスの考え方であるようだ。
 ECOWASの経済制裁は現在も続いており、首相に文民を任命すること、大統領に不慮の事態が生じた際に副大統領が昇格しないよう移行憲章を改訂することを制裁解除の条件にしている(9月25日RFI)。CNSPはクーデタ直後から国際社会と協調してイスラーム急進主義勢力対策にあたると繰り返しており、ECOWASと妥協点を探っているとみられる。クーデタ後の対応に地域機構が重要な役割を果たすのは、アフリカではしばしばあることだが、今回もECOWASは事態の展開に大きな影響を与えている。