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今日のアフリカ

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ワシントン条約締約国会議とアフリカゾウ

2019/08/17/Sat

ワシントン条約第18回締約国会議が8月17日~28日ジュネーブで開催される。議論の一つは、アフリカゾウをめぐる問題である。国際自然保護連合(IUCN)によれば、2015年のアフリカゾウの生息頭数は415,000頭で、うち森林ゾウの個体数は10万頭とされる。この10年間に、過去四半世紀で最も急速な減少がみられた。アジアゾウはワシントン条約が発効した1975年以来付属書I(絶滅の恐れがある種のリスト)に記載され、一切の国際商取引が禁じられている。アフリカゾウは、1977年に付属書II(必ずしも絶滅の恐れはないが、取引を厳重にする必要がある種のリスト)に記載され、輸出国の許可を受ければ国際商取引可能であったが、密猟が多発したことから1989年に付属書Iに記載されることとなり、1990年から一切の国際商取引が禁止された。
 その後、1997年に南部アフリカ3か国(ボツワナ、ナミビア、ジンバブウェ)のアフリカゾウについては、絶滅の恐れがないとして付属書IIに戻された。2000年には南アフリカもこれに続いた。これを受けて、1999年と2009年の2回、最初は日本に、二度目は日本と中国に、象牙が輸出された。1990年以降、日本に輸出されたこの2回のみである(環境省HPによる)。
 ルモンド紙の報道(8月16日)によれば、今回のジュネーブでの会議に向けて、南部アフリカ諸国は、付属書IIの種について、国際商取引を簡便化する改訂を提案している。南部アフリカ諸国にはアフリカゾウの6割、25万5千頭が生息し、生息数の拡大により住民の被害が懸念されている。また、ザンビア(生息数約2万2千頭)も、付属書IIに移行するよう求めている。一方で、ブルキナファソ、コートジボワール、ガボン、ケニア、リベリア、ニジェール、ナイジェリア、スーダン、トーゴといった国々は、南部アフリカ諸国のものを含め、全てのアフリカゾウを付属書Iに記載すべきだと主張している。
 象牙保護のためには需要を減らすことが重要だが、この点で、中国が2018年1月1日から自国内で一切の象牙取引を禁止した効果は大きいと評価されている。香港も2021年末から同様の措置に踏み切るとのことである。米国では2016年以降、象牙取引が事実上禁止されている。日本は、登録された象牙に限って国内での取引を認めており、合法的商取引の規模としては今日世界最大となっている。
 象牙取引については様々な議論があるが、中国による取引禁止措置の影響が大きいとの評価は一致している。タンザニアでは昨年象牙密売の元締めとされた中国人商人が逮捕され、その後ゾウの生息数が増加に転じたとの報道もある(2019年7月11日ルモンド)。減少が続いていると報じられている森林ゾウについては保護政策の充実が求められる一方、サバンナゾウについては、個体数の確認が重要ということになろう。