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今日のアフリカ

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ICCが元LRA司令官に有罪判決、ウガンダ

2021/02/05/Fri

BBCの報道によれば、2月4日、オランダにある国際司法裁判所(International Criminal Court: ICC)が、ウガンダの反政府武装組織である神の抵抗軍(Lord's Resistance Army: LRA)の元司令官、ドミニク・オグウェンに対し、有罪判決を下した。

LRAは、1980年代後半から約20年間、主にウガンダ北部で活動した反政府武装組織である。アチョリ人のジョセフ・コニー率いるLRAは、誘拐した地元の子どもたちを兵士や性奴隷としたことで悪名高い。国連によれば、LRAはこれまでに10万人を殺害し、6万人の子どもを誘拐したとみられている。ウガンダ北部の村に生まれたオグウェンは、10歳の時、通学途中にLRAに誘拐された。LRAで軍事訓練を受けた彼は少年兵となった。その後、オグウェンはLRA司令官となり、さまざまな襲撃事件にかかわったとみられている。2005年、ICCはウガンダ政府の申し出に応じて、オグウェンを含めた5人のLRA司令官に逮捕令状を発行した。LRAは、2005年以降、ウガンダから南スーダンやコンゴ民主共和国(DRC)、さらに中央アフリカ共和国へと活動拠点を移し、住民の襲撃や違法な密売などに関与してきた。2015年、オグウェンは中央アフリカ共和国で捕えられ、ハーグにあるICCに身柄を移された。

今回の裁判では、オグウェンが、2004年のルコディ国内避難民キャンプの襲撃などにおいて犯罪行為にかかわった容疑が問われていた。裁判長は、法廷に姿を現したオグウェン被告に対し、被告の命令によって殺害された住民の名前と、そこで行われたさまざまな残虐行為を読み上げた。オグウェンは、殺人、レイプ、強制結婚など70件の戦争犯罪と人道に対する罪にかかわった罪が問われており、このうち61件について有罪と裁定された。

オグウェン裁判の難しさは、誘拐され、少年兵とさせられた彼が、犠牲者であると同時に加害者でもあると判断されうる点にあった。そのため、今回の裁判は、戦争犯罪を行った元少年兵の罪を問う初めての訴訟として注目された。オグウェンの弁護団は、被告は当時、精神疾患と精神障害を抱えていたと繰り返し主張したものの、裁判長は、今回の裁判が扱う事件において、被告は20代後半であり、LRA司令官として十分な責任能力があったと判断できると述べて、弁護団の主張を退けた。後日、オグウェンには終身刑が言い渡されるとみられる。

今回の判決は、LRAの戦争犯罪がICCによって有罪が確定される初めてのケースとなる。オグウェンは、LRA司令官のうち唯一逮捕された人物であり、指導者のコニーはまだ捕まっていない。他の3人はすでに亡くなっているか、その可能性が高いとみられている。