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留学生の活動

難民支援プログラムについてインタビュー

2021年2月16日

アンリさんはルワンダにいる頃から、ブルンジ難民の若者が大学へ行くの手助けする「Enough is a little」というプログラムを行っています。その活動についてTUFS Todayで紹介されましたので、ここでも紹介させていただきます。元の記事はこちらからもご覧いただけます。

難民に学びのチャンスを!~ブルンジの難民支援プログラムを始めた留学生にインタビュー~

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ブルンジ出身であるアンリさんは、2015年に政情不安により母国からルワンダに逃れ、2018年から同国にあるプロテスタント人文・社会科学大学(PIASS)で平和紛争学を学んでいます。アンリさんは、PIASSに入学してすぐに、自分と同じブルンジ難民を中心とした若者の大学入学をサポートする「Enough is a little」というプログラムを立ち上げました。そして彼は今、ある難民の若者が大学へ通う夢を実現させるためにクラウドファンディング企画で資金を募っています。自分自身も決して余裕のある暮らしを送っているわけではないなかで、なぜ他の若者のために資金集めをしようとしているのか? 彼のこれまでの活動と今後について話を聞きました。

----PIASSに入学するまでの経歴を教えてください。

私は2015年に、政情不安の続いていたブルンジから、父と弟3人と共にルワンダに逃れました。6月26日のことです。母と姉、妹は今もブルンジで暮らしています。当時、高校に通っていた私は、その頃の成績が優秀だったこともあり、メゾン・シャロムという支援団体から学費や寮費などの生活費を援助してもらってルワンダの高校へ入学することができました。しかし、その先には試練が待ち受けていました。ブルンジでは公用語のフランス語で授業を受けていましたが、ルワンダでは英語が使われており、私は英語を習得しながら授業内容を学ばなければならなかったのです。とにかく必死で勉強して、2017年に無事、卒業することができました。

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自身もブルンジ難民としてルワンダで暮らし、現在は本学に交換留学中のアンリさん

----高校卒業後、すぐにPIASSに入学できたのですか?

いいえ、卒業後は難民キャンプで10か月間を過ごし、いろんな大学の奨学金に申し込みました。そしてPIASSから奨学金を得ることができたのです。難民にとって大学へ行くことは容易ではありません。ルワンダ政府の奨学金は難民を対象とはしておらず、民間団体や各大学が提供する奨学金プログラムの数は、難民の数に対してまったく足りません。それに、もし奨学金を得られたとしても、学費しかカバーされないことがほとんど。生活費は自分で用意しなければならないのです。私の場合は幸運なことに、メゾン・シャロムが引き続きPIASSでの生活費も支援してくれました。しかし財政難からそれも昨年の10月までで終わってしまい、日本から帰国後は自分で何とかしなければなりません。

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PIASSにはアフリカ各国から学生が集まり、日本からも毎年、交換留学生や私費留学生が学んでいる。

----どういった経緯で「Enough is a little」プログラムを立ち上げたのですか?

いろんな大学の奨学金を申請するときに、大学探しや願書の作成などを手伝ってくれるブリッジプログラムを利用したのですが、それにとても助けられて。それで、自分も同じように、でも私の場合は難民の若者を対象に、難民たちの大学進学を手助けしたいと思ったんです。「ほんの少し(little)の助けで十分(enough)なんだ」という意味で、「Enough is a little」という名前にしました。

----具体的にはどういったことを行っているのですか?

奨学金の情報を提供したり、願書作成について助言したり、作成した願書をチェックしてあげたりしています。私自身が難民ですから、同じ難民の視点から「こう書いたほうがいい」など、より効果的な助言を与えることができるんです。これまで50人をサポートして12人が大学に入学することができました。

----現在、実施しているクラウドファンディング企画について教えてください。

クロード(Claude)という難民の若者がPIASSで学ぶための生活費を支援するための企画です。クロードはPIASSの奨学金を獲得しており、この2月から入学する予定です。しかしPIASSの奨学金がカバーしているのは学費と健康保険料のみ。そのため、30か月間の生活費(寮費、食費)と勉強のために使用するノートパソコン代、合計2,000,000ルワンダフラン(約23万円)をクラウドファンディングで集めようと決めたんです。PIASSへ留学していた日本人学生2人に手伝ってもらいながら、2月いっぱい、行う予定です。実は、資金を援助するというのは私にとっては初めての試みなんです。

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ルワンダにある難民キャンプに暮らすクロード

----今後はどういった活動をしていきたいですか?

今回のクラウドファンディング企画が成功したら、資金援助のために他にできることがないか探っていこうと思います。それと、これまではルワンダ国内の大学を対象にしてきましたが、海外の大学も視野に入れています。実はこれまでにも、海外の大学の奨学金を獲得した若者たちが5人いました。でも、奨学金が一部しか賄わなかったり、その大学のある国が難民を受け入れていなかったりして、まだ実現していません。でもその経験を生かして、私がサポートした若者を海外の大学に送り込める日も近いと思います。また、難民以外の若者もサポートの対象にしはじめています。そうすれば、難民と難民でない若者が私のプログラムを通じてつながり、助け合うことができるからです。

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アンリさんと、今回のクラファン企画を一緒に行っている日本人学生2人

----最後に将来の夢を教えてください。

...正直、分かりません。今のルワンダでは、大学を卒業しても確実に職を得られるわけではありません。収入がなければ難民キャンプから出ることはできないですし。でも、難民の若者たちをサポートする活動は続けていきたい。「Enough is a little」は私ひとりでやっているプログラムですが、私がサポートした若者たちがまた別の若者をサポートする、というように、自然に支援の輪が広がっているんです。そうやって、ひとりでも多くの難民の若者たちに大学で学べるチャンスを与えられたらいいなと思っています。