2020年度 活動日誌

3月 ヤンゴン日本語教室便り

2021年3月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

LEVEL4のクラスでは初級教科書の第19課を終えると、既習文型「将来~になりたいです」を使って、将来の夢をスピーチしてもらうことになっています。毎日毎日軍による暴行虐殺で犠牲者がたくさん出て、恐怖の中で暮らしている彼らに将来の夢を語らせるのはひどく残酷なことではないかと、今年は止めようかと思いもしましたが、やはり、希望を語るのはこの苦しい状況下においてこそ、必要かもしれないと思い、敢えてやってもらうことにしました。

初めは12人いたクラスなのに、国軍がSIMカードを使ったインターネット接続を遮断したため、家にWiFiのある学生しか授業に出てこられなくなり、この日も僅か5人しか出席できませんでした。

5人の夢は、「少なくとも3か国語を流暢に話せる通訳者になること」「コミックを置いたカフェを経営すること」「テレビのプレゼンターになりたい」「お金持ちになって、貧しい人を手伝ったり(助けたり)、家族をよく世話したい」や、「歴史を勉強してツーリストガイドになりたい」でした。

授業の最後に“Be safe”「また来週」と言って、手を振って別れた後、ネットを切ったパソコンの前で、彼らが可哀想で、そしてこんな挨拶を教え子にしなければいけない状況が堪らなく、毎回大泣きしていました。でも、この日はいつもより学生の顔も沈んでいませんでした。やはり、希望を語る、心に抱くのは大切なのだと思いました。

どうか一時も一刻も早く、このおぞましい殺戮が終わり、ミャンマーに平和が戻って彼らの夢が実現しますように。彼らが希望を持って生きていけますように。神様、神様、聞いていますか?

2月 ヤンゴン日本語教室便り

2021年2月28日
GJO日本語講師 今井 己知子

2月8日から4日間、本学冬季集中講座の一環として、本来は8月にあるタンデム学習を組み込んでくださり、GJOの学生も参加することになりました。2月2日に参加者募集の旨、GJOのFacebookに投稿したところ、「いいね!」を付けてくれた学生が25人ほどいたので、結構な数が集まると思っていましたが、実際に登録してくれたのは12人。このような状況下では仕方がないと思っていたら、ふたを開けたら4人しか参加しませんでした。デモに参加したいので、タンデム学習に出られないとのこと。結果、本学日本人学生8人、ヤンゴン大学生4人が3グループに分かれて「私の町」についてお互いの言語で発表することになりました。8日に始まり、9日10日とグループに分かれて、グループ内で自分の町について発表しあい、助言をしてもらったり、したりして、12日にみんなの前で発表しました。

毎日グループのブレイクアウトルームをのぞきに行きましたが、本学修士課程に在籍する3人のミャンマー人の留学生の方がそれぞれのグループにアドバイザーとして入ってくださり、非常に丁寧にアドバイスしてくださっていました。また、学生たちも、この表現の方がいいとか、そういう言い方はしないとか、互いに知恵を出し合って、最終日にはかなり良いプレゼンテーションが出来ました。夏からずっと行われてきた交流会の集大成としてふさわしい実りある学習会だったと思います。先生方、関係者の皆様、お忙しい中、開催にご尽力いただきありがとうございました。この場を借りましてお礼申し上げます。

1月 ヤンゴン日本語教室便り

2021年1月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

世界中がコロナに震撼した2020年が終わり、新しい年が明けました。毎年初授業は書初めを楽しんでいましたが、今年は残念ながらかないません。それで、上のクラスの学生13人に昨年末に「一年の計は元旦にあり」を説明して、一人三つぐらい今年の目標を考えてくるよう言い、初授業で発表してもらいました。その結果を適当に以下分類してみました。

まず、<語学系>。「N4(日本語能力検定試験の等級です)合格」が3人。「毎日日本語を45分勉強する」が3人。同じく「30分勉強する」が一人。何で45分なのでしょうか?それから他の外国語で、「タイ語を毎日20分勉強する」「韓国語を始める」「毎日1時間英語を勉強する」でした。

それから<生活・運動・健康系>。「早く寝る」「7時半に起きる」「11時前に寝る」。若いので夜更かしする学生が実際多いみたいです。「毎日15分運動する」「毎朝1分プランクする」。プランク一昨年ぐらいからネットで大流行でしたね。私はコロナ禍で運動不足でさらに肥満した上に腕の筋肉も退化したのでこの重い体を支えられなくて、既に1分も出来なくなっていますが、さすが若者!毎朝あんなしんどいことをやろうと決めているなんて。食べ物については、「毎日食事に野菜と果物を加える」、そうですね。ミャンマー人は肉が好きで野菜が不足しがちだと思います。「毎日2ℓ水を飲む」。「料理する」が二人でした。

次は<趣味系>です。まず、読書の目標です。「好きな小説家の本を全部読む」「1か月3冊読む」がそれぞれ一人。「1週間1冊読む」が二人でした。音楽では「1日15分ギターを弾く」「昼休みに音楽を聞く」。その他「絵を習う」。趣味ではなく技能ですが、「車の運転を習う」。

次は<宗教系>で、「毎晩10分お経を読む」が二人でした。

その他、「貯金する」「お母さんを手伝う」でした。

語学系ではありませんが、「ミャンマー学をすごいで勉強する」というのがあり、この文法の間違いがとても可愛く、でも、ミャンマー学学習にかける大いなる意気込みが感じられるので特別に枠なしでご紹介しました。

最後に私の一年の計をご紹介して終わりたいと思います。年寄の一年の計なんて聞きたくないと思われるでしょうが、まあついでにお付き合いを。1.毎朝30分ミャンマー語を勉強する。2.5キロ痩せる。3.30冊本を読む。実はこの1番は年が明けてから全く一日もやってないので1年の計に入れるべきではなかったのかも。いや、出来にくいからこそ敢えて入れたのかもと自問しています。2番は、本当は10キロ痩せないといけないのですが、達成できないに決まっているので控えめに5キロ。達成できそうなのは3番の30冊本を読むぐらいですかね。

12月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年12月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

例年なら12月は新学期スタートで多数の受講生を相手に、教育実習の院生に助けてもらいながら何とか乗り切っていましたが、今年は大学自体が閉まっているので新クラスのオープンもなく、ZOOMでこれまでとほぼ同じ顔触れで変わりなく過ごしました。

そこで、年末日本の風物詩、年末ジャンボ宝くじを買う人の行列を見て、ミャンマーの宝くじについて紹介しようと思います。

ミャンマーでは毎月1回宝くじが売られます。写真のような大きな店や、市場の中の小さなカウンターに並べられたり、三輪トラックの荷台に並べられたりします。2019年2月から1等の当選金が15億チャット(=約1億1550万円)になり、購入するお客さんたちは真剣そのものです。1枚500チャット(=約38円)のくじを何枚かのセットにして袋にいれてあるのが多く、客は好みの番号を選んで買います。お客さんはいつ見ても、中高年の男性が多いです。女性は現実的なので一攫千金を夢見たりせず、買わないのでしょうか。

翌月の初めに新聞やチラシを買って、当選番号を確認するのですが、面白いのはお店で購入する際、宝くじの番号とともに携帯電話番号と名前をノートに書くことです。当選していたら店から電話がかかって来て、当選を知らせてくれるのだそうです。1等大当たりが出た場合、「当店で○○××さん1等大当たり」という大きな目立つ宣伝ポスターを店が貼りだすことがあります。この時、顔写真も名前もデカデカと公衆の面前に晒されます。顔も名前も出したくない場合は拒否することも出来るそうです。出した場合は、店のいい宣伝になるので、店側が当選者に車やお金をあげたりするのだそうです。

それにしても高額当選した場合、顔や名前まで晒されるのは怖いし、嫌だなと思って、ミャンマー人の友人はどう思うのか、意見を聞いてみました。友人によると、当選者たちは見せびらかしたいと思っている名前と顔の公表を認めているのではない。店からの宣伝料が欲しい場合もあるけれど、当選の喜びを友人知人たちと広く分かち合いたいからだそうです。隠すことなんてあるものか。私のようにお金をたくさん持っているのを知られるのは怖いなんて気持ちは無くて、パゴダに寄付したり貧しい親戚や友人たちにあげたりするから、知られたっていいのだそうです。これはその友人の考え方で、大多数のミャンマー人がどう思っているかは分かりません。

ふーん。でもお金で人間関係壊れたりもするので、私は高額当選したって絶対に秘密にしておこうっと。2020年の年末ジャンボは残念ながら末等300円しか当たりませんでしたが。

11月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年11月30日
GJO日本語講師 今井 己知子

8月の日本語教室便りで少し触れましたが、今月もまたモヒンガーについてもう少しお話したいと思います。

モヒンガーは小麦でなく米から作られている細麺の料理で、「国民食」と言われています。ナマズなどで出汁を取って、ひよこ豆のかき揚げ、ゆで卵、バナナの茎などを好みで入れて、トッピングにパクチーやミントの葉、ライムを絞ったり、唐辛子をかけて食べます。

4年前に初めて注文した物が運ばれてきた時は、正直言ってあまり食欲をそそりませんでした。ところが、これが、回を重ねるごとに病みつきになり、そのうち週に何回かは食べないではいられなくなりました。モヒンガー中毒です。毎日食べたら飽きるんですけどね。

色々な店で食べましたが、店によって味がかなり違って、それもまた興味深いです。写真のようにパクチーを付けてくれる店や、ミントをつけてくれる所など様々です。モヒンガーの器の横にミントの皿が添えられているのが私のお気に入りの学食のモヒンガーです。ゆで卵と揚げた豆を必ず入れてもらいます。上にかかっているのがパクチーです。この食堂はミントを気前よくたっぷりつけてくれて、しかも、瓶入りの汁ではなくて、本物のライムを何切れも添えてくれるので気に入っています。ゆで卵をレンゲで不器用に切りつつ、ミントの葉を麺の上にてんこ盛りにし、新鮮なライムをぎゅっと絞って食べると、ミントとライムの爽やかさがモヒンガーのコクのある出汁と絶妙のハーモニーを奏でます。パクチーではなくミントをかけるのが爽やかで美味しいと勝手に思っています。

大学のお気に入りの食堂のモヒンガーに満足していましたが、ある日友人が、お姉さんの作ったモヒンガーをわざわざ持って来てくれました。食べてびっくり。町中の食堂のモヒンガーと違って、スープが澄んでいて、それでいて魚の出汁がしっかり出ていて上品な味です。いつものモヒンガーとは違う料理を食べている感じでした。生きのいい魚を選んで出汁を作っているからとは友人の説明でしたが。一般家庭のモヒンガーはあんな感じなのでしょうか。

以前学生に「私はミャンマー料理の中でモヒンガーが一番好きです」と言うと、彼女は「えー、そうですか。ヤンゴンのモヒンガーはあまりおいしくないです」と答えました。どこのが美味しいのか聞いたけど忘れてしまったので今回LEVEL4の学生たちにきいてみました。

学生たちによると、ミャンマー南西部イラワジ管区の町、ミャウンミャのが有名なのだそうです。どうしてかというと、ミャウンミャには魚がたくさんいるからだそうです。その他にはヤンゴンの東南、アンダマン海に面したモン州の州都モーラミャインがいいとのことでした。ここのは麺がとても柔らかくて「手だけで作ります」?また、魚と玉ねぎにもやしを加えるけど、バナナの茎は入れないのだそうです。また、ある男子学生はモン州の東隣にあるカイン州のモヒンガーが魚をたくさん使って油をあまり使わないので好きだと教えてくれました。なるほど。

ミャンマーに戻ったらぜひ食べ比べなくちゃ。でもいつ戻れるのでしょうか。

10月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年10月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

10月はLEVEL4はオンライン授業はお休みにして作文をしました。LEVEL4とは言っても文法はまだ初級前半も終わっていない状態なので表現できる内容も限られてはいますが、普段の授業では既習文型を使って一文作文をすることはあってもまとまった量の日本語を書くことはありませんでした。それでちょうど良い機会だと思い、やってみました。

外国語学習の四技能のうちで、おそらく大多数の人が一番苦手とするのが書くことではないでしょうか。こんなことを書きたいけど、力不足で、語彙も文型も分からなくて辞書を頼りに書いてみたら、言いたいことの半分も書けなくてまるで小学生のような稚拙な文章に自己嫌悪と劣等感に打ちのめされる。これが私の諸外国語のwritingでの経験ですが、その人の外国語能力が露見するのがwritingだと思います。

地味で労力ばかりかかるwritingは学習者に嫌われる作業ですが、これほど自分の外国語能力と向き合えて力を向上させてくれるものもないと思います。偉そうにうだうだと御託を並べてますが、私は今でも、何語でも外国語で書くのは苦手で嫌です。でも、ありがたいことに今回は「私は先生、書かせる立場」。あー、よかった。

さて、課題は日記。「9月の特別な/ある一日」または「私の毎日」。どちらを選んでもいいことにしました。特別な一日は、3人が自分や家族の誕生日について、一人が姪っ子のお守をしたことについて、もう一人がTUFSとのZOOM交流会について書きました。誕生日は例年ならレストランやパゴダに行ってお祝いしたり、友人を招いたりするのに今年は家族だけで自宅で料理を作ってお祝いしたけど、それもよかったという感想が共通していました。(347文字)毎日の生活についてはみんな似たり寄ったりで、料理を手伝う、昼寝する、You tubeを見る、韓国ドラマを見る、オンラインで勉強するなどでした。ちょっと変わったところではヨガ、タイ語の勉強、ペットと遊ぶ、糖尿病のおばあちゃんの世話をするなどでした。そして何人かの学生に共通していたのは、初めは休めて嬉しかったけど、3か月目ころから外出できない生活にうんざりしてきたこと、コロナが終息して、早く大学に戻りたいと思っているということでした。

学生たちにとっては大変な作業でしたが、私は彼らの日常や考えていることが垣間見えて、興味深くとても面白かったです。書き直しの際に、私の感想や質問に返答していない学生もいれば、丁寧にたくさん返事してくれる学生もいたり、内容をupdateしている学生もいたりと、教師にとってはとても楽しい課題でした。11月は何を書いてもらおうかなー。

9月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年9月30日
GJO日本語講師 今井 己知子

毎年9月には、ヤンゴン大学に短期語学留学に来ている本学ミャンマー語学科の1年生とGJOの日本語講座の学生がグループでリサーチをして、発表します。毎年の恒例行事でGJO側の学生たちはとても楽しみにしているのですが、今年は残念ながらコロナのせいで留学どころの騒ぎではありません。

それで、本学の先生たちが本学ミャンマー語学科の学生とGJOの受講生とのオンライン交流会を企画してくださいました。9月は、14日と16日の日本時間の13時から14時半という設定です。ミャンマー語の交流会についての紹介文を作って下さったので、ありがたくGJOのFacebookに貼り付けて、授業でも宣伝して参加者を募りました。

14日は初回で「コロナ状況下の生活」という題目で、本学学生7人に対し、ミャンマー人は42人も参加。日本留学経験者を各グループに配置して、日本人学生一人とミャンマー人学生6人が交流するバランスが悪い形となりました。16日は本学学生6人参加に対し、ミャンマー側参加者も激減し24人でした。各グループの人数構成は日本人学生一人に対し、ミャンマー人学生4人で、全部で5人です。各セッションルームに覗きに行くと、14日よりはずっと和やかな雰囲気でした。

GJOの受講生の日本語力は一番上のクラスを終えてもまだ初級前半なので、なかなかディスカッションするところまではいかないのが現状です。それでも日本人と交流したい、友達になりたいという熱意が、参加の動機になっています。自分の言いたいことが言えない、どう言ったらいいか分からないもどかしさが、学習意欲につながることを望んでいます。

8月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年8月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

今月の下のクラス、LEVEL2では「~で××を食べます」という文型を勉強していました。「箸でご飯を食べます」や「手でサンドイッチを食べます」という風に「~で」に道具や手段を表す名詞が入ります。学生たちと練習しながら、ほかの在留邦人達と以前から疑問に思っていたことを学生に訊いてみました。「みんな、シーチェを箸で食べます。でも、モヒンガーをスプーンで食べます。どうしてですか」。シーチェというのは、油の多い汁なし中華麺で、モヒンガーというのは写真の麺です。モヒンガーはミャンマー料理の紹介などで「ミャンマーの国民食」ともいわれている料理で、ナマズなどの魚で出汁を取った、米が原料の麺料理です。麺料理なんですが、写真のようにレンゲがついてきます。ほかのミャンマー料理のようにスプーンとフォークがついて来たり、箸をつけてくれることはまずありません。麺をすくうのにレンゲだけというのは、極めて高度なテクニックを必要とします。麺をそのまますくおうとすると、スルスルっと器に落ちて、中の汁が跳ね返ったりして、胸やお腹がモヒンガーの汁のシミだらけになります。それで、しかたなく、レンゲで麺を小さく切らないといけないのですが、これも慣れてないと上手くいきません。いったい何で箸で食べないのか??

今まで学生に尋ねても、「モヒンガーはミャンマーの食べ物で、シーチェは中国から来ました。ですから、モヒンガーはレンゲで食べます。シーチェは箸で食べます」というのが、今までで一番納得のいく答えでした。それでも、元々ミャンマーの食べ物であっても箸で食べた方が便利でいいのになと思っていました。

それで、今回も性懲りもなくこの疑問を授業中に学生に言ってみました。すると翌日、一人の学生がお父さんの回答をメッセンジャーで送ってくれました。その夜授業補佐してくれた本学ミャンマー語専攻の学生の名訳によると、お父さんの回答は、「モヒンガーはスープを主にして飲むものであるので, スープのようなものです。 そのため、箸では食べないで、スプーンで食べます(のみます)。 モヒンガーの麺は小麦麺ではなく、米粉麺です。モヒンガーが美味しいというのは、スープが美味しいということなのです」。なるほど!スープを味わうものだったんですね。だから、スプーン、つまりレンゲで食べるのか。納得。4年間、色々なミャンマー人に訊いても「知らん」とか「モヒンガーはスプーンで食べる。決まってる。そういうもんなんだ」しか答えてもらえなかったけど、これでよくわかりました。すっきり。名答してくださった学生のお父さん、お父さんに尋ねてくれた学生、そして名訳してくれた本学学生に感謝です。

7月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年7月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

七夕の季節がやってきました。例年は大学構内にある笹を切らせてもらって、学生に願い事を短冊に書いてもらっていますが、今年はオンライン授業をしているのでそうもいかず、学生に願い事を書いてきた短冊をみんなの前で見せてもらい、発表するという形にしました。LEVEL2は英語やミャンマー語で書いてきたものを、ヤンゴン大学に留学していた本学学生に授業補佐に入ってもらい、日本語に通訳してもらいました。LEVEL4は日本語で書いている学生もいました。

授業中に発表してもらった後に、自分で短冊をもって自撮り、または家族に写してもらった写真をGJOヤンゴンのFacebookに掲載しましたが、字が左右さかさまに写るのと、小さすぎて何が書いてあるか分からない短冊もあり、おまけに何人かは写真を送ってくれませんでした。それで全員の願い事を把握するのは無理でした。分かった分だけお伝えしますね。

LEVEL2は、4-5人が、コロナウィルスの騒ぎが早く収束して、平常に戻りますようにと願い事をしていました。まあ、何て立派な。それから、次は定番の「日本へ行けますように」と「日本語がうまくなりますように」が3人ずつ。「一生幸せでありますように」と「奨学金をもらって日本へ留学したい」が二人ずつでした。そのほかは、「良い職に就きたい」「夢がかないますように」「冒険旅行がしたい」(楽しそうで元気でいいですね)・「日本に留学したい」「何でもいいから交換留学プログラムに参加できますように」「すべてのことがうまくいって、幸せでありますように」「両親にとって誇らしい娘になれますように」「コロナが終わった後に、TWICEの東京ドームでのコンサートに行きたい」(具体的!でもTWICEって何?)「世界の素晴らしい所に旅行したい」「お金持ちになれますように」「沖縄へ行けますように」。以上でした。ヤンゴン大生定番の「お金持ちになれますように」が今回はたった一人(たぶん、ですが)だったのは珍しかったです。

LEVEL4は、翻訳機能を使って頑張って難しい日本語で書いてきた学生もいました。まず、一番多かったのが、「日本語が上手になりますように」4人。「夢がかないますように」が二人なんですが、それぞれ誤用が可愛かったので紹介したいです。「夢がかなえましょうに」と「夢がほんとになるますように」。試験だったら減点されますが、言いたいことは良くわかるのでコミュニケーション上は問題ないですよね。LEVEL4の願い事の特徴は、一人で3つも書いた学生が数人いたことです。「グラフィックデザイナーになれますように」「たくさんのお金と新しいスマホが手に入りますように」。それから、大作「健康で裕福で知識豊富でありますように」(うーん。これ以上の幸せはないよね)と「人生を最大限に生きることができるように」です。翻訳ソフトにかけたのか、仲の良い日本人に訳してもらったのか知りませんが、願い事を真面目に考えて、こんな字画の多い漢字を間違えずに書いたのは褒めてあげたいです。定番の「日本へ旅行出来ますように」「いつも幸せでありますように」「宝くじに当たりますように」(私も40年以上そう願っています)。ちょっと変わっているのが「来年の夏は暑くないように」と「絵が上手になりますように」「20歳までに日本へ行けますように」。具体的なのが、「京都大学の修士課程で勉強できますように」でした。

私の願いは相変わらず「ミャンマー語がもっと上手になりますように」でした。本心は「宝くじが当たりますように」と「老化の速度がちょっとでも遅くなりますように」「こけませんように」ですが、若い学生相手に言うのにはあまりにも夢がなさすぎるのできれいごとのミャンマー語上達でお茶を濁しておきました。みんなの願いをお星さまが聞いてくれますように。☆彡

6月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年6月30日
GJO日本語講師 今井 己知子

本来ならば、今月から2学期が始まっているのですが、コロナウィルスのせいでヤンゴン大学もまだ開講しておらず、ミャンマーに入国もできずにいます。

このまま、ミャンマーに入国して教室で授業ができるのを待っているといつになるかわからないので、取りあえずオンラインで授業をすることにしました。5月末にFacebookでオンライン授業する旨投稿して、希望者を募りました。LEVEL2が56人のうち49人、LEVEL4が23人中16人、受講を希望してきました。かなり盛況だなと思っていましたが、実際に授業を始めてみると、インターネットの接続が悪いため止める学生が数人ずつ出ました。それで、毎回LEVEL2はだいたい38人ぐらい、LEVEL4は12人ぐらい出席しています。授業中もインターネットの接続が悪いためいなくなって、再度ネットに入って来る学生が続出で、会話練習でペアにさせると、「私の相手がいません」と訴えられたりします。また、周りの音をパソコンがよく拾ってしまうため、私の声より学生の家族の声のほうが大きくなって、ミャンマー語の日常会話のリスニングをやっているような錯覚を覚えたり、学生のスマホを家族が覗きこんでいるのが見えたり、犬の吠える声、物売りの声などが大きく響いて聞こえてきたりで、学生と一緒に苦笑することしばしばです。

授業時間は教室でやっているのと同じように週二日、ミャンマー時間の午後3時半始まりにしました。教室では2時間授業ですが、オンライン授業では私の体がもたず、1時間半で終わりにしています。うちのインターネット環境が悪いせいか、突然画面が動かなくなったり、操作に慣れていないせいか画面が変わらなかったり、ただでさえ焦って緊張しっぱなしの上に画面を凝視するものですから、激しい眼精疲労と頭痛で1時間半経つ頃にはすっかり疲れ果てて使い物にならなくなってしまいます。学生たちも1時間経つ頃から何人かが大あくびしているのが画面でちらほら見かけますので1時間半が妥当かなと思いつつしています。

こんな感じでオンライン授業が始まりましたが、どうなることやら。日本とミャンマーとに分かれて暮らしていてもこうやって授業ができるのは現代のテクノロジーの発展のおかげで驚嘆すべきありがたいことだと思っています。一昔前では考えられないことでした。

便利で助かりますが、やはり教室で場を共有して、同じ空気を吸って、学生全員の顔を眺めつつ舞台のあちこちを移動しながら時には吠えたりして授業するほうが格段に楽しいです。役者や演奏家がよく言うように、演者とお客さんが一緒に舞台を作るのと同じで、授業も教師と学生が一緒に作るものだと思っています。あの生の醍醐味はネットでは共有しにくいです。舞台に上がって時には学生を叱って吠えたり、学生の珍答に笑ったりしながら授業できる日が一日も早く来るように願ってやみません。

5月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年5月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

昨年の秋からGJOヤンゴン日本語講座の受講生4名が本学に留学しています。去年は本学のご厚意もあり、彼らにあってインタビューすることが出来たのですが、今年はコロナウィルス騒ぎで会うことが出来ず、質問票を送り、回答してもらいました。

今年は九つも質問したのにそれぞれたくさん書いてくれました。理由も詳細に説明してくれて、彼女たちの成長がうかがえるものでした。

質問すべての回答をお知らせしようかと思いましたが、かなり長くなりますので一部を抜粋し、さらに要約しました。

①留学して一番楽しかったことは何ですか。
Hさん:自分が学びたい科目を外大で学べること。日本文化についても学べた。鎌倉にある海に行った時と歌舞伎を見に行った時。
MTさん:新しい日本人・外国人の友人と知り合いになったこと。日本の様々な所へ遊びに行って経験を得ること。
Kさん:雪が降ったこと。水族館へ行って思いがけない経験をしたこと。
MNさん:春休みのミャンマー・ラオス・カンボジアとの東南アジアプログラム。
(以下敬称略)

②日本でいやなこと、日本人の嫌な点は何ですか。
H:自分の本当の気持ちを見せないこと。
MT:自転車に乗る方法。一人しか乗れないから。/ 言いたいことを直接言わないで回って言うこと。
K:病院は予約しないとすぐに行けないこと。年上の人が怒りやすいこと。
MN:人とぶつかっても謝らないこと。

③日本の食べ物で好きな物は何ですか。
H:うどん・天ぷら・チャーハン
MT:たこ焼き・お好み焼き・天ぷら
K:生姜の入っていないたこ焼きとお好み焼き・冷たいそばと天ぷらセット
MN:ラーメン・餅・桃ゼリー

④日本の食べ物で嫌いな物は何ですか。
H:たらこ・明太子・こんにゃく
MT:わさび・梅でやっているおむすび・明太子おむすび
K : 味噌汁・焼きそばの匂い・寿司
MN:わさび・ソーセージ

⑤もしコロナウィルスがなかったら春休みに何をしていましたか。何をしたかったですか。
H:京都へ行く予定でした。
MT:様々な所へ旅行したり、ホームヴィジットのご家族と一緒に遊びに行ったり、日本人の友達と遊びに行った。
K:大阪へ行って、有名な食べ物を食べたり色々な場所に行ったりしたかった。奈良公園、京都と沖縄も行きたかった。
MN:バイトしていた。ミャンマーの服で浅草で食べ歩きして、写真撮りたかった。 

⑥7月にヤンゴンへ帰る前に何をやりたいですか。
H:京都・大阪へ行きたい。富士山に登りたい。父のためいい腕時計を買いたい。
MT:Universal Studio, Disney Land・富士山へ行きたい。東京スカイツリーや浅草も行きたい。
K:奈良公園に行って鹿と写真を撮りたい。大阪と京都にも行きたい。DisneylandとUniversal Studioもぜひ行きたい。日本料理も全部食べたい。猫の島も行きたい。
MN:カラオケへ行きたい。

この後も3つ質問があるのですが、今回は割愛させていただきます。

今回の回答も私には非常に興味深い内容でした。②の日本でいやなこと、日本人の嫌な点についての回答で、二人乗りしてはいけないから自転車の乗り方が嫌だというのが面白かったです。実際には二人乗りしてる人はたくさんいるけど、原則としては安全のために一人乗りすべきなので一人乗りするように指導されたんでしょうね。人とぶつかって謝らないことは確か去年も言われていました。マナーが悪いんですね、日本人。ミャンマー人も謝らない人多いけどな。どこでも外国人には謝ってくれないってことでしょうか。「本心を言わないこと・率直でないこと」も外国人にとって違和感を感じる点なんでしょうね。でも、インドネシア・タイ・ミャンマーと、25年間東南アジアで暮らしてきて、この三カ国の人達や他の東南アジアの国の人たちも日本人同様、結構率直でなく、本心を言わないと私は感じているんですが。日本人ほど感情を押し殺したりはしないかもしれないけれど、嫌でもはっきりNOと言わないで笑ってくれたりするから、単純な私などは、感情の機微を理解せずすっかり誤解してしまったりしていますが。

個人的にはちょっとショックだったのが、④の日本の食べ物で嫌いな物です。わさびは去年も出てきたので驚かなかったのですが、たらこ・明太子・梅干入りまたは明太子入りのおむすぎが嫌いとは。実は「おにぎり」が教科書に出てくるので文化紹介のつもりで梅干入りや明太子入りの美味しそうなおにぎりの写真を見せて、いかに美味しいか毎年熱弁をふるっていたのです。私にとっては梅干入りのおにぎりも明太子入りのおにぎりも、写真を見ただけで食欲も郷愁も大いに湧くこの上なく美味しい食べ物なんですが、ミャンマー人の味覚には訴えないんでしょうか。味覚っていうのは各民族独特だから世界中の誰が食べても普遍的に美味しい物ってないんですかね。それとも私があまりに「美味しいよー。是非日本へ行ったら食べてね」なんて強調するものだから、みんな期待しすぎた反動だったのかもしれませんね。私が悪かったのかも。。。今度からおにぎりの紹介はさらっと軽くすることにしましょう。

ヤンゴンへ帰るまでにやりたいことで、京都・大阪・奈良・富士山やUniversal Studio, Disney landなど「正しい観光客」が行く日本観光の要、メッカがあがっていました。本当に彼女たちが帰国するまでにもっと自由に動き回れて、行きたい所へ行って、是非満足して帰国してもらいたいものです。期待しすぎてがっかりしないかなと老婆心ながら心配ですが。

4月 ヤンゴン日本語教室便り

2020年4月30日
GJO日本語講師 今井 己知子

GJOヤンゴン日本語講座の期末試験はヤンゴン大学の正規科目の試験勉強とかぶらないように、毎年3月上旬に実施しています。今年も6日・7日の両日に実施し、それぞれ成績は出ていますが、正規科目の期末試験準備中にがっかりさせてはいけないと、結果はいつも3月末か4月初めに発表することにしています。

今年はLEVEL3は23名受験して全員合格したので敢えて発表はしませんでした。LEVEL1は93名受験したうち70%以上得点した合格者は56名でした。4月7日にFacebook上で合格者名簿、つまりLEVEL2進級者名簿を発表したところ、早速反応があり、同日中に4人が、13日に一人が、自分の名前が名簿にないがと問い合わせならぬ異議申し立を言って来ました。5人の言い分は、自分は毎回出席して宿題も提出したし、試験後友達と答え合わせをしても、よく出来ていた。点数を教えて欲しい。または、自分の答案用紙を見せて欲しいというものでした。日本に帰国中のため手元に答案用紙がないので見直すことも出来ず、仕方なく彼女たちには、「自分は3回解答を見なおして、点数を数回計算したから、間違いはないと思う。でも絶対に自分は合格しているはずだと自信があるなら、ミャンマーに外国人が戻れるようになって、GJOヤンゴンが再開したら、連絡してください。そしたらあなたの答案用紙を再度調べます」と伝えました。5人のうち3人は自信があるので、絶対に連絡しますとのことでした。

毎回LEVEL1の授業の期末試験をするたびに複雑な気持ちになります。せっかく日本語を勉強したいと思って来てくれているのに、成績が悪いからって切るのは親日派を減らすことにつながって勿体ない気がするし、気の毒な気がします。でもその反面、教室でたっぷり練習する初級の語学のクラスで60人もいたら、授業の質は落ちてしまいます。また、せっかく生き残ったのに専攻科目の発表や実験など、やむを得ない事情で出席できず止めていく学生もいます。途中で日本語に興味を失ったり嫌気がさしたり面倒くさくなる学生もいると思います。成績が良くても良くなくても最後まで止めないで続けてくれる学生が取りたいです。どの学生が最後まで続けるか見分けられればいいんですが。

今回のLEVEL1の合格者の内訳は、文系37人、理系19人でした。また、専攻別にみると、国文科13名、国際関係科10名、Computer Science9名の順に多かったです。毎年いる物理学科が今回はゼロで、新顔の歴史学科は2名残っています。さて、新学期、授業が再開したらどうなっているでしょうか。

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