2016年度 活動日誌

3月 ヤンゴン日本語教室便り

2017年3月31日
GJO日本語講師 今井 己知子

12月から始まった新学期も3月2週目の期末試験で何とか無事に終わりを迎えました。

6月から一緒に勉強してきたLevel 4の学生とは今学期でお別れです。そのせいかどうか分かりませんが、国際交流基金の日本語教育インターンとして12月から授業を担当してくれている本学大学院生に、日本語の歌を教えてほしいと言ってきました。Level4の漢字教育を担当してくれたインターンとは同世代の親近感で、頼みやすいのでしょう。

でも、頼まれたインターンは大弱り。どんな歌が歌いたいのか尋ねても「先生の一番好きな歌」。実は彼女は英語の歌を聴くのが好きだそうで、「先生の一番好きな歌」と言われても日本語の歌では思い浮かばないみたいです。それで、二人して、どうしたものか頭を悩ませました。小学唱歌はゆっくりで、メロディーもきれいだけど結構格調高い言葉が入っているので日本語初級の学生たちには理解しにくいし。歌いやすくても古すぎる演歌は今の若者にはお呼びじゃないし。今の若い人の歌となると、私は全く知らないので手も足も出ません。少し昔の歌でも、歌いやすいメロディーで、あまり難しすぎない歌詞で、となると全く思いつきませんでした。ちっとも決まらないのに、どんどん約束の日が近づいてきたので、私の独断と偏見で『涙そうそう』にしました。

結局この歌のレッスンに参加したのはLevel 4の学生のうち4人だけでした。歌詞を渡して、辞書を引いてもらって、『涙そうそう』がサウンドトラックとして使われた映画の解説もしたけど、やっぱりそれでも相当難しかったみたいです。You Tubeで何度も曲を流して一緒に歌って小1時間の日本語の歌のレッスンは終わりました。楽しんでくれたかどうかはあまり分かりませんが。初級者に適当な外国語の歌を選ぶのは本当に難しいですね。私もミャンマー語のポップスなんて舌が回らないし、意味が分からないし、お手上げです。

どなたか、日本語学習初級者が理解できる適当な歌があったら教えてください。私もこれから探してみます。よろしくお願いします。

2月 ヤンゴン日本語教室便り

2017年3月6日
GJOヤンゴン 今井 己知子

仏教国ミャンマーでは各地に巨大な仏像があり、それぞれ人々の篤い信仰の対象となっています。ヤンゴンから電車やバスで2時間の町、バゴー(昔はペグーと呼ばれていました)には二つ寝釈迦像があります。一つは994年に建立されたと言われているシュエターリャウンBuddhaとその近くに新しく作られたミャッターリャウンBuddhaです。

この二つの寝釈迦像は建立年も違うせいか、容貌が際立って異なっています。

こちらは994年に作られたと言われるシュエターリャウン寝釈迦仏で、ミャンマーの他の地域で見る寝釈迦像と共通した白い肌、ぱっちり開いた大きな目、微笑をたたえた慈悲深そうな穏やかなお顔といった特徴があります。

一方こちらは2002年に善男善女の寄付によって建てられたナウンドージーミャッターリャウン寝釈迦仏です。瞳の色も薄いし、私にはどう見ても西洋人にしか見えない仏様です。

それで、既習文型の応用練習をするのに、学生も良く知っているこの二つの仏像を使おうと思い、Qを出してみましたが、反応がありません。

いつもなら、何人かから、活発に答えが返ってくるのにこの日はシーン。どうしてかなと思って学生に尋ねてみると、今度は口々に答えを言わない理由を言いました。曰く、ミャンマーでは仏像はrespectの対象なので、その容貌について批評することはない。どんな容貌であっても全て仏陀を表していてrespectしているので、容貌については何も思わない。それで、少し危険かなと思いつつ、「私はシュエターリャウンbuddhaの方が好きです。このbuddhaはハンサムです。」と言ってみると、何人もの学生が困惑した顔をしています。一人の学生に、ミャンマーでは「ハンサム」というのは人間にしか使わない、仏像について使わないと言われました。/は人間にしか使わない、仏像について使わないと言われました。

そこで、与謝野晶子の「鎌倉や御仏ながら釈迦牟尼は美男におわす夏木立かな」という有名なうたを紹介することにしました。もちろんこの歌そのものを紹介しても初級前半の実力の彼女たちには理解できないので、こういう歌があるという事実だけを伝えることにしました。

「みんな、鎌倉知っていますか。鎌倉に大きいBuddhaのstatueがあります。」ここで、何人もしきりにうなずきました。

「この鎌倉の大仏、大きいBuddhaについて日本の有名なpoetがpoemを作りました。その人はpoemで、Buddhaを「ハンサムだ」と言いました。」ここで一同おーっと驚く。

「ミャンマーではBuddhaについてハンサムと言いませんが、日本では言ってもいいです。このpoemはとても有名です。たくさんの日本人が知っています」一同、驚いたり、感慨深そうな顔でしきりに頷いたり。

「ぜひ鎌倉へ行って、ハンサムなBuddhaを見てくださいね。私も鎌倉へ行ったことがありませんから、行きたいです」「はい、行きたいです」で無事この場は終わりました。外国人に日本語を教えていると価値観の相違に触れて興味深いことが時々あります。学生も自分たちと違う日本や日本人の価値観に触れて、日本についての知識を深めるとともに視野を広めてほしいと思います。

1月 ヤンゴン日本語教室便り

2017年2月6日
GJOヤンゴン 今井 己知子

日本語教室では習った文型を使って自分のことを話す練習をします。その時に学生が考えていることが垣間見えて興味深いです。

LEVEL3のクラスでは「~したいです」の文型を使って、「もし宝くじで1億チャット当たったら何をしたいですか」という質問に答える練習をしました。

「家を買いたいです」や「世界を旅行したいです」「車を買いたいです」などの中に2,3人の女子学生が「韓国へ行きたいです。」と答えたのには正直言って少しがっかり。「韓国で何をしたいですか」の質問には、「×××(韓国のスター)に会いたいです」やら「韓国のお酒が飲みたいです」。2,3人が「日本へ行きたいです。日本で買い物したいです」と言ってくれましたが、日本語を教えている私としては、どこか外国へ行きたいなら「日本へ行きたいです」と言ってほしかったです。ミャンマーでの韓国の人気や影響力は依然強いのだと実感させられました。もっと授業に日本の魅力を盛り込んで、半数以上の学生が「日本へ行きたい」と言ってくれるように頑張らなくちゃと闘魂を燃やしてしまいました。

LEVEL4のクラスでは「~になりたいです」の文型を使って、「今度生まれ変わったら何になりたいですか」という質問に答えてもらいました。国民の大半が上座部仏教を信じるミャンマーでこのクラスも全員が輪廻転生の教えを受け入れている仏教徒だったので、この質問も問題なくすることが出来ました。まず、「何人になりたいか」では全員がミャンマー人と答えたのにも興味深かったです。みんな愛国心が強く自分の国に誇りを持っているということでしょうか。次に「今度は男になりたいか、女になりたいか」の質問で全員が「次に生まれ変わったら男になりたい」と答えたのには少し驚きました。もう一度女性に生まれ変わりたいという答えも半分ぐらいあるかと予想していたからです。どうしてか理由を尋ねると異口同音に「先生、ミャンマーでは男の方が女より偉いです」。「えー、そうですか。でもドー・アウンサンスーチーは女性だし、ミャンマーの女の人は強いでしょう?」「うううん。そうですけど。」「ミャンマー人の奥さんは家で強いです。そう聞きました」と言うと、「はい、家では女の人、強いです。でも、socially(社会的には)男の方がstatus上です。」ほかのみんなもうんうんと頷いていました。この世代だからなのか、高学歴の女性だからなのか、まだ社会に出ていない人たちだからなのか、ミャンマーに住んでまだ1年も経っていない私には分からないですが、他の東南アジア諸国同様、働き者の女性が多いこの国で、20歳になるかならないかの若い女性たちの一部はこのように考えているのだと知り、大変興味深かったです。

12月 ヤンゴン日本語教室便り

2017年1月6日
GJOヤンゴン 今井 己知子

ミャンマーでは12月から新年度新学期が始まります。GJOヤンゴンも12月5日から新学期が始まりました。今学期は国際交流基金の日本語インターンとして本学大学院生も助っ人としてGJOヤンゴンに加わり、フレッシュな戦力が増強されました。

戦力が増えたことを受けて、今学期は全くゼロから日本語を始めるレベル1と、前学期から進級したレベル3とレベル4の合計3クラスを開講しました。

レベル1は新入生の入学式等諸行事があったため12月14日にやっとオリエンテーションを行うことが出来ました。今のところ登録しているのは50名ほどですが、実際に出席している人数を数えると、毎回新しい人が入っているのに40人前後です。これもあとひと月ほどすれば落ち着くと思います。今学期から教科書等の無償配布は行わず、ミャンマーでの版権を得て当地で出版された教科書『みんなの日本語Ⅰ』を学生自身で購入してもらうことになりました。6000チャット(ミャンマーの朝ごはんでよく食べられる麺料理「モヒンガー」約12杯分、バス乗車30回分に相当)するので、冷やかし半分に参加する学生は少ないと思われます。

今回は様々な専攻の学生が受講していて、全体の40%近くを占める国文学科ミャンマー語の学生の他に、数学・産業化学・地質学・考古学・植物学・英語・コンピューターサイエンス・物理学・地理学など多岐に渡っています。圧倒的に多い女子学生の中に男子学生も十名ほど混じっていて、隅の方で固まっているのが微笑ましくもあります。

これから3か月間、何人が残るでしょうか。専攻が多様性に富んでいる方がお互いに刺激になるので、出来るだけ様々な専攻の学生に頑張って生き残ってほしいものです。そしてもちろん男子学生にも。

写真は日本語インターンの先生が、レベル1の第2課を教えているところです。若くて可愛い先生に日本語を習えて、学生たちも嬉しそうに生き生きと勉強していました。


11月 ヤンゴン日本語教室便り

2016年12月1日
GJOヤンゴン 今井 己知子

外国人の日本語能力を測定し、認定することを目的とした「日本語能力試験」という試験が国内外で年2回実施されており、今年の2回目が12月4日に行われます。GJOヤンゴンで日本語を勉強している学生も何人か受験するのでその問題集をGJOオフィスへ借りに来ました。3人で2冊選び出し、私に、「先生、N4(レベル)の本が(もう)1冊欲しいです。あー、あー、such a book、うー。▽○✖◆□★☆。」日本語で「こんな本」と言いたいのですが、「こんなN」は未習ですので言えません。それで私が、「どんな本ですか。どんな本が欲しいですか」と尋ねると、今度は「薄い本」の「薄い」が言えなくて3人で頭を抱えてワイワイ。「軽い本です!」「軽い本?」「いえ、重い本です」「重い本?ああ、じゃあ、これですか」と意地悪婆さんがわざと分厚くて重い本を差し出すと、また3人で「✖✖○○?」「▽▼△□●!」「★★☆☆!?」と協議。一人が突然思い出して「薄いー!」と喜びの声を上げると「薄い本です!」と三人が口をそろえて言いました。「薄いー厚い」、「重いー軽い」は、日本に住んでいればよく使う必要不可欠な語ですが、ミャンマーでは日本語を使う機会が少ないから、なかなか出てこないようです。

問題集を選んだ後、一人が宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』の英語版の本を借りました。前にはほかの学生が『トトロ』を借りたことがあります。宮崎駿作品はミャンマーでも人気があるようです。これを日本語で読めるようになってほしいなと思いつつ、佐野洋子の『100万回生きたねこ』を勧めてみました。これは比較的平易な日本語で書かれた素晴らしい本です。1匹の傲岸不遜な猫が輪廻転生を繰り返し、最後に他者を愛することを知った時、「生きかえらなくなった」、つまり生まれ変わる必要がなくなったという仏教徒が多数派のミャンマー人には大変分かりやすい感動的な内容なので、是非読んで欲しいと思いました。

表紙を見せて、「はい、みんな、これ読んで」。「うー。ひゃく……??」「100万回」の「万」を忘れてしまったようで、三人でまたしても協議。「えーー、習いましたよ。ほらぁーー」「うーん、うーん」。1分の呻吟の後、「ああ、まん?」。次の「回」も「生きた」も読めず、助け舟を出してやっと『100万回生きたねこ』が「ひゃくまんかいいきたねこ」と書いてあるのだと分かり、意味も分かって一同納得。試験が終わったら是非借りるよう強く勧めておきました。それにしても「薄い」や「重い」のような基本的な形容詞、「万」「回」「生きる」のような簡単な漢字も覚えていなくてN4の試験大丈夫かしらん。

教室外でいかにたくさん日本語に触れるか、触れたくなるかが日本語上達の鍵なので、ミャンマー人学生の興味を引く、魅力的でかつ、平易な日本語の本やDVDを導入する必要性を強く感じました。

GJO配架の図書を借りに来た学生たち
貸出簿に記入中

10月 ヤンゴン日本語教室便り

2016年11月3日
GJOヤンゴン 今井 己知子

ただいまヤンゴン大学は学期休み中で、GJOヤンゴンの日本語教室もお休みです。それで今月は授業以外のことについてご紹介したいと思います。

GJOヤンゴンには本学からヤンゴン大学に寄贈された日本語及び英語の図書が合わせて1200冊以上もあります。日本語能力試験の問題集から日本社会・日本文化紹介、旅行書、絵本、小説など多岐に渡っています。でも残念ながら、この図書館の存在はあまり知られていないようで、私が赴任してから借りに来たのはたった一人でした。

それで、先日GJOヤンゴンのビザ関係等をお世話してくださっている国文科の先生に図書館をご紹介しました。この先生は、インターネットの学習サイトで日本語を独習してみたり、ミャンマー語日本語辞書を買ったりと、大いに日本に関心をお持ちです。「ヤンゴン大学の先生や学生なら3冊2週間まで借りられるんですよ」とお教えすると熱心に書架を眺めて、2冊取り出して借りて行かれました。写真の本は読み終えたので今、3冊目に挑戦中です。日本の漫画は哲学的だったり、歴史上の人物を取り扱ったりと大変面白くて読みごたえがあるので是非日本語を勉強して、これらの書籍を読んでくださいと、日本語学習も勧めておきました。

図書館案内のポスターも今までは日本語でしたが、ミャンマー語に翻訳したものを新学期から建物ホールの良く見える掲示板に掲示し、一人でも多くの人に借りてもらえるようにしたいと思います。誰も借りてくれないとせっかくの素晴らしい蔵書も、宝の持ち腐れになってしまいますから。

もう一つ、嬉しいことがありました。GJOヤンゴンは国文科の先生たちに色々なことを助けていただいているのですが、GJOヤンゴンの飲料水や電気関係などをお世話してくださっている先生が、「12月から僕、日本語勉強します」と言ってくれました。

ヤンゴン大学に日本語学習者が教師の間にも学生の間にも、どんどん増えるように頑張りたいです。

本を借りに来た国文学科の先生

9月 ヤンゴン日本語教室便り

2016年10月5日
GJOヤンゴン 今井 己知子

GJOヤンゴン日本語クラスは8月末に授業を終了し、9月1日と2日にLEVEL2とLEVEL3の期末試験を行いました。

LEVEL2は中間試験を受けた18名のうち、14名が受験し、受験者全員が合格しました。このクラスは、法学、化学、国際関係、コンピューターサイエンス、動物学、地質学、考古学、そして国文科と、専攻が多岐にわたっているのが特徴です。放課後自分たちの校舎からわざわざ国文科の校舎まで授業を受けにくるのですから、その熱意には頭が下がります。

LEVEL3は中間試験の受験者11名全員が受験し、合格しました。このクラスは地理学専攻の一人を除いて全員が国文科専攻です。実はこのクラスは学生の他に国文科の先生2人と他大学の先生一人も受講していました。お仕事がお忙しいため、学生たちより、どうしても理解・習得が遅れがちな先生たち三人を学生たちは常に助けてくれていました。ペアでする練習になると、先生と学生の立場が逆転して、学生たちが先生たちを恭しくも、しっかり引っ張っていってくれて頼もしかったです。女子大生に戻ったかのように無心に練習する先生たちとしっかりした学生たちでこのクラスは和気藹々としていました。

色々な方たちのおかげでGJOヤンゴン日本語講座は無事に一学期を終えることができました。赴任したてで、ヤンゴンに不慣れな私を励まし支えてくれた、授業補佐を担当してくれた本学ビルマ語専攻の留学生お二人にこの場を借りてお礼を申し上げます。また、ヤンゴン大学国文科3年生のお二人も授業準備をよく手伝ってくれました。その他の関係者みなさんにも多大のご協力をいただきました。ありがとうございます。

期末試験を受験する受講者

ヤンゴン大学国文科3年生教務補佐

本学のビルマ語専攻からの交換留学生の教務補佐

■■■日本語教室だより(2016年8月)■■■

6月に始まったGJOヤンゴン日本語クラスも8月末に無事終了しました。

8月末の今学期最後のクラスでLEVEL3の学生に簡単な発表をしてもらいました。「みんなの日本語Ⅰ」の第18課で「私の趣味は~することです」という文型を習ったので、その文型に2,3の説明文を加えて自分の趣味について発表しました。当日出席したのは12人。このクラスでは、映画と旅行が趣味という人が一番多かったです。変わった趣味では「デパートで果物を買うこと」というのがありました。これを聞いてみんな爆笑していました。この映画・旅行に、読書・料理・歌を聴くこと・絵を描くこと・写真を撮ることと続くのですが、スポーツが皆無だったのが印象的でした。ただでさえ暑いヤンゴンで、わざわざスポーツをして汗をかくこともないということでしょうか。男の人たちが適当な場所を見つけてチンロン(籐を編んだボールを使ったサッカーのようなもの)に興じているのをよく見かけますし、ヤンゴン大学構内でも早朝ウォーキングをしている人をちらほら見かけますが、このクラスでは好まれないということですね。

授業中習った文型を使うこと、それを少し説明することとしか指示しなかったので、どんな発表になるか内心ひやひやしていましたが、みんな多少の文法の間違いはあってもなかなか面白く良くまとまっていました。もっともっと語彙や文法を学んで自分のことをたくさん日本語で話しせるようになってほしいと思いました。

■■■日本語教室だより(2016年7月)■■■

新学期が始まって1カ月も経ち、やっと漢字の授業を始めることができました。LEVEL 2のクラスは漢字は全く初めて、LEVEL 3のクラスは教科書の第12課まで終わっているということでした。

念のため、LEVEL 3のクラスで第13課から始める前に、第10課の復習をすることにしました。第10課の復習ページを宿題に出しておいて、答え合わせをする段階で困ったことが発覚。

1番はどうにか出来たものの、2番以降はやってきていない学生続出。3番以降はクラスの優等生たちでさえ出来ないし、やってきていない。いったいどうしたのか尋ねてみると、学生が言うには、「私たちは訓読みは分かりますが、音読みは覚えていません」とのこと。いったい何課までなら覚えていて書けるのか聞いてみると、「第3課まで」。基礎ができていないところに、部首を教えても覚えられるわけがないので、急遽第4課からやり直すことになりました。

写真は第5課の漢字を、教師が順不同に読み上げて書き取りしているところです。

前に出て書く人はやはり音読みの言葉になると分からなくて苦しむので、座っているクラスメートたちが、ミャンマー語で漢字の意味を言って、ヒントを与えようとするので、ミャンマー語は禁止。例えば「モクヨウビ」の「モク」が「木」だと分からない場合、学生たちはミャンマー語でさかんに「ティッピン」「ティッピン」(ミャンマー語で「木」)と小声で助け舟を出すので、「ミャンマー語を使わないでください。訓読みを言ってください」というふうに出来るだけ日本語を使うようにしています。すると誰かが一生懸命教科書をめくって、「きー」「きー」と叫んで無事「木よう日」が書けるといった具合です。

初めはとても漢字に見えず、解読不可能の宇宙人の文字のようだったのが、徐々に上手になってきたので嬉しいです。

■■■日本語教室だより(2016年6月)■■■

雨季のヤンゴンはほとんど毎日大雨が降ります。今も外は滝のように雨が降り、とても外に出られません。大雨のたびに停電が起こり、オフィスも教室も電気が使えないので、ミャンマー人の先生の中には廊下に椅子を出して熱心に仕事を続ける方もいます。

そんな中、後期授業が始まって2週間ほどたった6月13日にGJOヤンゴンの日本語教室が始まりました。今学期はLEVEL2の授業が月曜日と木曜日の3時半から5時まで、LEVEL3が火曜日と金曜日の同じく3時半から5時まで行われます。最初の1週間は、休み中にみんなの頭の中で眠っていた日本語を起こすために自己紹介と今までの復習をしました。自己紹介では名前・学部・住んでいる所・趣味・将来の夢を語ってもらいましたが、将来の夢では、「先生になりたい」や「研究者になりたい」など優等生そのものでびっくり。誰も「お金持ちになりたい」や「世界旅行したい」など言わないのです。ヤンゴン大生だけなのか、ほかのミャンマー人もそうなのかぜひ知りたいところです。クラスには国文学科の先生たちも参加しているのですが、先生たちも全員「いい研究をしたい」「いいresearch paperを書きたい」と答える人ばかりで真面目そのものでした。

次の週からはそれぞれ「みんなの日本語1」の第10課と第16課を勉強し始めました。みんなだんだん口も動くようになって文型練習も大声で元気いっぱい言ってくれるようになりました。そこで、ミャンマー人の日本語の発音の特徴に気がつきました。「an」の「a」の音をミャンマー人は「a」と「e」の間の音のように発音します。それで、「みかん」は「みきぃあん」、「さとうさん」は「さとうすぃあん」になります。これではせっかく一生懸命勉強して正しい文法で話していても上手に聞こえないので毎回授業のたびに教師が学生の前で大口を開けて「a」や「an」の発音をしてみせ、学生にも復唱させるようにしました。初めはみんなゲラゲラ笑って恥ずかしそうにしていましたが、今は「an」の音を含む単語を発音する時はわざと大声で言うようになりました。

6月最後の週はLEVEL3で第16課の「Aさんは髪が長いです」「Bさんは背が高いです」の文型を使って、人の体の特徴を述べる練習をしました。応用練習でペアになって、一人の人が自分の恋人や夫がどんな人かこの文型を使って述べて、もう一人がその文型を聞いて相手の恋人の絵を描く練習をしました。

みんなハンサムで格好いい恋人ばかりになりました。

恋人の絵を書く練習をする生徒たち


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