2021年度 活動日誌

3月 活動日誌

2022年3月30日
GJOコーディネーター
久保 賢子

今月は「カリマ (スペイン語で calima) (dust)」という不思議な気象現象がありました。アフリカで舞い上がった砂塵がスペインまで届くのですが、今回は大規模で、2、3 日も続きました。後に聞くところによると、サラマンカが一番ひどかったそうです。カリマがあると、砂のにおいがするだけでなく、街中が砂だらけ。行き来する車も砂ぼこりをかぶり、窓を開けていればもちろん屋内にも入ってきます。手荷物までなんとなく砂っぽくなったり…。とはいえ、物理的な害はあるものの、サラマンカの建物の黄金色が黄色っぽい砂の空気に包まれ、なんとも幻想的な数日でした。(写真 1-1、1-2)

さて、今月は日西文化センターで日本週間がありました。月曜日から土曜日にわたり色取りあざやかなプログラムが繰り広げられました。開会式には学長や日本特命全権大使が揃い、重厚な雰囲気が漂っていました。(写真 2)スペイン人のみならず、日本人も留学生も参加していました。日本国内ならこのような場所に居合わせることはもっと少ないだろうといった感想や、盆栽や「苔玉」など、外国に来たからこそ改めて自国の文化に触れ、異なった視点を得ることができ、日本文化を見直すきっかけとなった、といった感想を聞くことができました。

先月に続き、行事が目白押しですが、他の大学や国際交流基金の事業など、スペイン全土で行われているオンラインのものも合わせると、選り取り見取りで、スペインにおける日本文化への関心度が伺えます。

毎週木曜に行っている言語交流会ですが、毎週テーマを決めて、取り組んでいます。そのテーマも学生たち自身が決めます。お互い話したい事が山ほどありますが、相手との話の流れで実際は準備の半分くらい、もしくは、準備以外のことが 7 割増しとなることもあります。リアルタイムでどのように対応するか、まさに言葉以上の会話術が楽しめているようです。リーダーを決め、グループにするのか、ペアにするのか、といったこともその場で考えます。リーダーが時間配分を間違ったり、忘れたり、ということもありましたが、お互い冗談まじりで指摘する、といった場面も見られ、とても頼もしかったです。この交流の場で友達ができ、キャンパスを超えての交流につながっていることも、うれしい限りです。渡航規制が緩和され、来月からはメンバーの顔ぶれにも変化があるようで、今後も楽しみです。

曇りではなく、砂塵に包まれたサラマンカ。

カテドラルも砂ぼこりの向こうに。

日西文化センター日本週間開会式。

2月 活動日誌

2022年2月28日
GJOコーディネーター
久保 賢子

1月、前期科目の試験が終わると同時に、留学準備にかかる学生がちらほら伺えました。コロナ関連の規制も緩和され、文献学部では2月7日、後期の授業がほぼ通常通り始まり、新しい気持ちでの取り掛かりとなりました。今期、私の担当科目は卒業年にあたる4年生です。大学生活のラストスパートとなる期間におかれている学生たちには、今までの振り返りと共に、自信や前向きなエネルギーに溢れる様子がひしひしと感じられます。ちょうどサラマンカでもアーモンドの花が開花し始めたところで、とても華やかで優雅な印象が4年生とぴったりです(写真1)。

後期開始早々、学部では「言語の日」とされる各言語をより知ってもらう意味でのイベントが構内で開催されました。日本語分科の間には、学生の主体性を培おうという目標もあり、今回は学生代表を先頭に、どんなことをしたらいいか、アイデアを出すところから当日の動きまで、創造性や社会力を発揮していたように思えます。折り紙、しおりや絵葉書作り、名前を日本語で書くワークショップ、本の紹介などがあり、日本語からはとても多くの学生が運営に協力してくれました(写真2-1, 2-2)。一日の締めとして、国際交流基金との共催で、言語学者でグラナダ大学のイグナシオ・ロペス=サコ先生をお招きし、第二言語としての日本語に関するご講演に耳を傾けることができました(写真3)。日本語を学ぶ学生の中には、日本でのスペイン語教授という選択肢はもちろん、今では外国語としての日本語教授という選択肢も出てきました。学部長、学科長並びに国際交流基金所長のご臨席があり、金曜日の午後、丸一日イベントに携わったあとにもかかわらず、さらに多くの学生が講演に聞き入っていました。長らくオンラインイベントが続いていた後の全面対面での講演会に、新鮮さを感じるとともに、実際に人に出会う、同じ場所で話題を共有するという利点も再認識できたのではないでしょうか。

また、前期に行っていた言語交流会も再開できました(写真4)。後期留学の日本人学生が少しいるという噂に期待していましたが、実際はほとんどが留学中止となったようで、日本人側はほぼ変更なく前期から引き続き参加してくださっています。今担当の4年生によると、作文や読解はかなりできるようになったが、なかなかしゃべれない、という声が多かったです。ところが、日本人も圧倒されるほど流暢な日本語があらゆる方向から聞こえてきたこと、また、スペイン語を話しているときも、話題提供やあいづち、リアクションなどの会話術も見事で、卒業時の日本語習熟レベルを見直し、今以上の可能性をどう引き出すか、考えさせられました。また、この活動自体も学生が仕切っていってより活発な言語実践の場になるようにと思っています。

(写真1)闘牛場付近にあるアーモンド並木。ライトアップで更に輝く花びら。
(写真2-1)イベント終了間近までにぎわった。
(写真2-2)しおりや絵はがき。色んな思いを込めて。
(写真3)今まで文学、文化系が多かったが、今回は言語学系の講演。
(写真4)頼る人は自分だけの一対一での会話。10分おきに話し相手をチェンジ!

1月 活動日誌

2022年1月30日
GJOコーディネーター
久保 賢子

1月10日、新年とともにクリスマス休暇が明け、前期の最終試験がスタートしました。教室使用時間の間隔を十分とってあるだけでなく、入退室の時間差もあり、試験で話し声など一つも聞こえてこないため、アナヤ広場(Plaza of Anaya)にある文献学部のキャンパスでは、学生の行き来が少なく映るだけでなく、本当に試験が行われているのかと不思議に思うほど静かな一か月でした。ヨーロッパではオミクロン株による感染者数がちょうどピークを迎え、試験にも影響が出てくるのではと懸念されていましたが、大きな変化はなかったようで、無事試験期間が終わりました。

ところで、1月終盤、28日はキリスト教の神学体系を築き上げた聖トマス・アクィナス(Saint Thomas Aquinas)の日です。聖トマス・アクィナスは、大学の守護聖人で、学内ではこの日を祝日とし、大学講堂で記念式典が行われます。(写真1)その行事では、サラマンカ大学の教員による基調講演がありますが、今年は文献学部のスペイン語教授が、ネブリハ(Nebrija)による2つのカスティーリャ語文法について講演されました。ネブリハはイタリアのルネサンスをイベリア半島に導入した人文学者ですが、まだヨーロッパで言語が体系的に知られていなかった当時、スペイン語の文法書を大成しました。このカスティーリャ語文法書(Grammar of Castilian Language)は1492年にサラマンカで印刷され、イサベル女王(Queen Isabella)に献上されました。当時イベリア半島には様々な王国がありましたが、ちょうどこの年は、国土回復運動レコンキスタ(reconquista)が完了したほか、コロンブス(Columbus)が大航海(Discovery)に出るといった、スペインの歴史において決定的な年でした。一国として統一されたスペイン王国(Kingdom of Spain)が、その後黄金時代(Golden Age)を迎えていった背景では、言語統一も核心を担っており、この文法書の世への影響は多大なものがあります。今年はネブリハ没後500年に当たり、サラマンカ大学ではこの式典で改めてネブリハの文法研究における功績を追頌しました。(写真2)

一方、今月は、東京外国語大学からスペインに留学に来ている学生さんたちと、オンライン茶話会を開くことができました。(写真3)同じ大学に仲間がいる場合、一人の場合、すでにスペインの他の町へ友達を訪ねに行ったりと、コロナ禍においても、伸び伸びとした留学生活を送っている様子が伺え、頼もしかったです。また、楽しいことだけではなく、スペイン人との共同生活における問題に直面しているケースもありました。同じ空間でお互いに支障なく生活ができるというのは、正直、なかなか難しい問題で、私自身の留学時代を回想させられました。言葉や習慣、はたまた価値観も違うとき、どうやって対処すればいいか。このような場面に遭遇しながら、色々悩み、考え、成長していくのではないでしょうか。スペインは大航海時代を皮切りに、キリスト教の宣教活動を拡大していきますが、宣教師は現地の人に溶け込めるよう、まず自身が異文化に適応する努力をします。宣教師が本当に適応できるのは、一方的な努力ではなく、現地の人からも宣教師を理解しようとする双方向の努力があってのことだそうです。このような他者に対する働きかけは、今の孤独化した社会では、更なる難題なのかもしれません。留学といった限られた時間、良くも悪くも全部ポジティブに捉えられるといいですね。みなさん、応援しています!

(写真1)大学内で最も由緒ある大講堂で講演者の声に耳を傾ける。(Noticias Salamanca 1月28日掲載)
(写真2)「ここで文法が教授された」とラテン語で書かれた。(Tribuna Avila 1月28日掲載)
(写真3)活発なトークあり。コロナ禍だからこそ、スペインの方が自由に生活ができる、との声も。

12月 活動日誌

2021年12月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

9月から始まった2021年度の前期授業もこの12月で終了し、科目によっては、12月中に試験も終えたところもあるようですが、たいていは1月に試験を残すのみとなりました。10月から始まった去年度と比べると、今年度の前期は長かったですが、やはり12月に入って祝日が二日もあったことや、23日からクリスマス休暇に入ることを数えると、急に時の流れが速く感じられた日々でした。また、一年の締めくくり、年中に事を終わらせておきたい心理はみな同じで、スペインでも「師走」の一言が身に沁みました。こちらでは、クリスマスイブの24日と当日25日、大晦日と元旦、公現祭の5日から6日にかけて、家族と共に過ごす日とされています。二週間の休暇中どんな予定があるかという問いに、学生は、「家族と共に」や、「試験勉強」の一点でした。こんなにたくさんお祝い事がある中、なかなか勉強に専念しにくい雰囲気かもしれませんが、休暇が終われば立て続けの試験が待っている現実もあり、試験勉強や提出物を念頭に、計画を立てなければなりません。

今月は2022-2023年度に日本へ留学する学生の発表もありました。早速、東アジア学士課程の学生向けにオンラインで説明会がありましたが、他の学部から日本留学が決定した学生たちも加わり、留学の準備に備えていました。国際課の方の、「日本留学へは、書類提出の仕方から日本式に合わせてください」との言葉に、皆今から気が引き締まる思いだったのではないかと思います(写真1)。

また、今月から新型コロナワクチンの追加接種と12歳以下の児童向けの接種が急速に進み、12月末の時点でスペイン全国で接種完了率が84%に上りました。しかし、オミクロン株の対応には効果なく、感染はワクチン接種を完了していた人たちの間にまでも起こり、クリスマス以降、感染者数のグラフはまるで断崖絶壁。スペイン保健省のデータによると、12月末の2週間で100万人以上もの陽性者が出たそうです(https://cnecovid.isciii.es/covid19/)。24日には屋外でもマスクの着用が再び義務化されましたが、会合に関する人数制限については自治州により規制を設けたりそうでなかったりで、少し自由な雰囲気でした(写真2)。去年は初のコロナ禍中のクリスマスで、かなり制限が複雑でしたし、皆神経をとがらせていた印象があります。今では1月の休暇後、学校や大学が通常通り対面で戻れるか、という声が飛び交うようになりました。

遅ればせながら11月から始めた言語交流会は12月も無事続けられました。授業だけではなかなか友達が作れない、スペイン語を話す機会がない、といった日本人留学生にとっても、日本語学習者にとっても、この機会を活用したいと、休み直前まで熱心に通った学生たち。後期開始の2月からは日本人留学生がもう少し増えるようですし、コミュニケーションの距離が縮まるような交流会が安全に再開できるように、と思っています。

(写真1)細かい指示のある提出用書類を目の前に緊張が高まります。

(写真2)クリスマス前、教会での合唱なども今年は行われました。

(写真3)夜点灯したマヨール広場中心の飾り。

11月 活動日誌

2021年11月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

なんとなく暖かかった10月とは変わって、11月には初雪が積もるほど降り、その後も冷たい風に吹かれ、急に冬の準備に追われたような気がします。クリスマスの飾りもライトアップされ、益々冬の到来が感じられる月となりました。(写真1、2)コロナウイルスが落ち着いていた中、室内の換気に対して寒さの方が勝って、滞っていたところがありましたが、オミクロン株のニュースで、コロナウイルスが再び心配され、思い出したかのようにウイルス対策に取り組む様子がうかがえます。

また、今月は学長選挙の公報でキャンパスが彩られました。4年おきの選挙で、任期は最長二期。現学長は一期が終わったところで、二期目に向けて立候補。他にもう一人立候補者が出馬し、一対一の対決となりました。票が二分されるのではないかということで、学生代表たちまでが投票を呼び掛けるという、今までにない選挙権行使の促進活動が見られました。月末の投票日当日、結果は59%対41%で、現学長が任期を延長する形に収まりました。

学部生、修士および博士課程の学生も参加する学内選挙は、日本人留学生たちにとってはどのように映ったのでしょうか。

ところで、今月はやっと言語交流会を開催することができました。(写真3)日本語の学生たちと、日本人留学生の中から希望者が参加しています。なかなかみんなの空き時間が一致することがなく、調整に四苦八苦しましたが、なるべく多くの人が参加しやすい時間帯を設定し、教室を解放しています。コミュニケーションも、聞くのが上手な人、話したい人がいっしょになると、それぞれの会話量のバランスを取るのは難しいですが、いろんな人と会話をすることで、助けたり助けられたり…。言葉が出て来ないときにどうしたらいいか、話題が途切れた時は?など、いろいろなストラテジーを使うべく、学べることは多いのではないでしょうか。時には、ゲームを取り入れて、わいわいとなる雰囲気も見られました。日本語の学習者にとっては、今まで学習した内容を実際に使ってみることができるかのチャレンジの時間、日本人留学生にとっては、普段のスペイン人と比べると日本語を通して接することができ、身近に感じられる話しやすい相手だと思います。これを機に、お互い言語学習の目標の一つとしてもらえたらと思います。

(写真1)マヨール広場中心の飾り。
(写真2)お店のショーウインドーは、クリスマスの香りがします。
(写真3)みんなに理解してもらえるように話すにはどうすればいいか、よく考えながら話していることが感じられます。

10月 活動日誌

2021年10月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

今年度、サラマンカ大学東アジア文献学部に、新しく東アジア言語文学文化研究修士課程が設立され、10月からは、その授業が始まりました。学士課程の一クラス25人程度とは違い、大変少数ながら、院生の関心の深さや造詣、並々ならぬ意欲が感じられます。また、学部のとき日本語があまり優秀ではなかった学生が修士課程に進路を決めることがあり、語学力と知的探求心は並行ではないことが分かります。ちなみに、サラマンカ大学には社会科学部にも東アジア研究の修士課程があり、日本関連の修士課程はこれで二つ目となります。スペインにおける東アジアへの関心はまだまだ上昇の傾向にあるようです。

さて、学内では協定校への留学の申し込み期間に入り、全キャンパス、各校舎に、留学申し込みのかなり大きなポスターが張り出されています。サラマンカは小さな町ですが、学部が東西南北に点在し、アビラにサモラと他の町にもキャンパスがあるのでかなり大変な作業になり、気配りが求められます。この1年半留学生の送り出しはごくわずかだったため、また、コロナの状況より、国際課からも留学を促進できなかったこと、また、この状況下、留学をはじめからあきらめている学生もいるため、来年度こそ留学を実現してほしい、といったところでしょう。

また、同じコロナ関連の話では、大分安定してきましたが、一方ではぶり返しも耳にするなど、油断は禁物です。10月に入っても引き続き観光客が多く、平日休日を問わず、常に多くの観光客が町を埋め尽くしています。特に、外国からの観光客が多いことや、ツアーでの観光の多さにも目が留まります。(写真1)文献学部があるのはカテドラル前で、この辺りでは、観光客と学生が半分半分くらいです。屋外ではマスクの義務付けはありませんので、コロナ禍以前のような様子がうかがえます。(写真2)

10月後半にはクリスマスのライトアップの設置が進み、11月に点灯されるよう準備が完了しています。(写真3)去年はまだ会合の人数制限が厳しかったですが、今年は去年とは違うクリスマスの迎え方に期待を寄せる雰囲気が人々の心の中に漂っているようです。

(写真 1)修道女の方々もサラマンカ訪問。

(写真2)文献学部正面階段での休憩タイム。屋外はマスクなしが多い。

(写真3)「あ、もうクリスマス?」と毎年びっくりさせられる。

9月 活動日誌

2021年9月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

対面授業かオンライン授業か、どちらにしても色々な措置を講じなければならず遅れて始まった去年。今年はコロナも落ち着き、教室に入れる人数も増え、ほぼ以前と変わりない様子で始まりました。促さなければ、使用後の机を消毒せずに退室しそうになるなど、コロナ対策の意識が薄くなっていることも見受けられる程です。あれだけ注意を促されていたアルコール消毒も、身についたかというと、一年続けられただけではなかなか元々の習慣は直せないようです。

今年日本留学が決定していた学生は、結局ビザが発行されておらず、オンライン留学という方法で続行したり、断念したり…。留学のメリットでありまた魅力でもある現地での生活が伴わなければ留学の意義も半減、といったところでしょうか。オンライン留学をしている学生はこちらの授業には出席できないため、インターネット上のやりとりの生活が続き、ホームシックならずとも、ネット孤立の環境にあり、複雑な心境になることは否めません。どちらにしてもかなり勇気のいる決断ではないでしょうか。

去年はヨーロッパ圏からの留学生の姿が少し見えただけでしたが、今年はアジア系の留学生もちらほらみられるようになり、観光は完全復帰しているのではないかと思わせるほど、団体旅行客が多く、人の混雑で通りも歩きにくいほどにぎわっています(写真1)。活気づいてきたサラマンカ。日本人留学生との対面交流会の実現もそう遠くはなさそうです。

(写真1)あちらこちらに団体観光客

6月 活動日誌

2021年6月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

試験期間真っ只中のサラマンカ。まずは本試験があり、中旬頃から前期 (10月から1月まで) の追試が始まり、下旬には後期 (2月から5月まで) の追試も始まりました。同時に卒業論文の提出もだいたい同じ期間と重なっているので、4年生で論文の提出を控えている学生は大変な時期です。また、この試験期間は、学部によっても違いますので、文献学部以外で授業を受けていると、他学部では授業を受けつつもう一つでは試験を受けるといったように、とてもややこしいです。特に前期の追試が残っている人にとっては、今になってまた教科を洗いざらい見直さなくてはならず、ここまで期間が開いてしまうと気の毒です。朝晩は涼しいものの、サラマンカでも夏の日差しが強く、日中は暑くなるのに加え、試験を全て突破した人はすでに夏休み、観光の復活とともに街全体がバケーションの雰囲気に包まれてきていて、勉強どころではない、と言いたくなってしまうのではないでしょうか。分厚い石でできた古い建物ではクーラーなしでも過ごせますが、新しい校舎ではその空間で試験を受けていること自体に試練を感じます。

毎年6月上旬に行われる卒業式は去年に引き続き開催中止となり、唯一といってもいいくらいの一大イベントがなくなりました。スペインでは入学式はしないものの、卒業式はかなりしっかりしたイベントとなっています。オンライン開催にも至らず、4年間の学業の締めくくりがないまま、タイトルだけを事務でもらって、なんとなく卒業する学生たち。同級生全員と共に今までを振り返るひと時、達成感や次へのステップへの意気込みを改めて認識することなく、三年生までの修了試験と同じような年となってしまいました。来年もしや3年分の卒業式を盛大に開くのか。期待は募ります。

留学希望の学生は日本入国解禁をひたすら待つしかないですが、希望を捨てず、できる準備は着々としていっているようです。

サラマンカでもワクチン接種が1970年代生まれまで進み、明るい兆しがさしてきたようにも思われますが、まだ人口の半分も接種していない時点で6月26日よりマスク着用義務が解除され、夏休みの到来とともに多くの人の気が緩んできているのが目に見えて分かり、今後どのように進展していくかがまだまだ懸念されそうです。

(写真1)暑くて人気がないですが、サラマンカ大学のファサードにある「かえる」を見つけると、特に学業が成就すると言われている。

5月 活動日誌

2021年5月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

天気のいい日が続いた5月。日中は夏の日差しを感じさせられる日もありましたが、朝晩は肌寒く、一日の気温差が大きい時期です。4月はよく雨が降る、という言葉はよく耳にしていましたが、実はその続きがあったことを知りました。”Abril aguas mil, Mayo a rayo”「4月は雨、五月は雷」。実際、今月は雷が多く、突然の雨に見舞われることも多々ありました。

そんな中、文献学部での日本週間が開かれました。サラマンカでは、他にも文化センターで行われる日本週間もありますが、文献学部では、学生が主体となることが目標とされています。各学年にクラス代表がいますが、それでも4学年集まると、なかなか意見がまとまらず、最後の最後まで本当に開催されるのだろうかと心配になりましたが、なかなかいいプログラムができました。去年3月に開催される予定だった日本週間は、新型コロナのため、中止となり、組み込まれていた催しは全て一新され、今年はハイブリッド型で行われました。俳句展示、ふろしきワークショップ、大学院生による「オタク」についての講演、留学生との談話会、オンラインゲーム大会など、特にオンラインゲーム大会は土曜日に行われ、一週間を目いっぱい使っていました。課外での日本語や日本文化に親しめたようです。(写真1,2)

(写真1)日本週間中のイベントの一つ、ふろしきワークショップ。
(写真2)俳句も学生たちで展示。

その後、5月9日、スペインでは警戒事態宣言が解除されました。また、12月下旬から始まったワクチン接種も今では40%近くが少なくとも一回目の接種済みとなっており、1960年代生まれまで進んでいます。海外からの渡航の受け入れが許可されてからは、一気に外国人観光客が増え、「あぁ、サラマンカは観光の都市だったな」と実感できる昔の光景が戻ってきました。(写真3)

(写真3) 観光ガイドの話を熱心に聞く観光客

5月後半には、東アジア研究の発表の場として、学会がありました。(写真4,5 )2020年度後期授業がすべて終わり、学期末の試験期間中でしたが、特に学士課程の4年生も聴講があり、大学院生たちの中からは発表をする人もいました。また同時に、日本への留学の準備も始めたようで、突然相談の件数が増え、日本への留学生の入国が可能になれば、去年行けなかった人たちも併せて、多くの学生が日本行きを実現できることになりそうです。

ところで、この試験期間は、延々と6月中旬まで行われ、その後、追試が7月に入るまであります。追試がある人にとっては、一か月以上にもわたる試験期間。是非じっくり取り組んでもらいたいものです。

(写真4) 大講堂で行われた学会
(写真5) ハイブリッド型により、日本、メキシコ、オーストリアからも参加者が。

4月 活動日誌

2021年4月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

桃の花、すももの花、アーモンドの花…どれもよく似ていて、私は実がなるまで一体どの木なのかよく見分けられませが、3月に咲いていた花は散り、ようやく桜にバトンタッチ。サラマンカでも開花しました。天気もいいと、花を眺めながらお茶を一服したくなる景色です(写真1)。 実はこれは、サラマンカ市と交流のある岐阜県からの記念で植樹されたものです。岐阜との交流はカテドラルのオルガン修復事業から始まり、近年の岐阜大学との交換留学にまでつながっています。しっかり根付いた日本の桜の木は、今では八重の花びらで並木通りをぎっしり彩る程に育っています。桜は日本の象徴となっていますが、実はサラマンカの付近にも桜の名所があります。サラマンカより南に120㎞下ったところにある地域、バリェ・デル・ヘルテValle del Jerte は、サクランボの産地として有名です。花で一面埋め尽くされた谷を見ようと、毎年20万人以上の観光客が訪れるそうです。去年はコロナで観光客はゼロですが、今年は少し回復したようです。

(写真1) 桜並木

ところで、この桜並木は、ちょうどサラマンカの城砦のふもとにあります。その城砦は、現在化学学部の研究室棟として使われているそうですが、なるほど、上に行くと眺めがいいはずです。ちょうど4月は聖週間がありましたが、四旬節 (Lent) 中の慣習としての肉食の制限とともに、昔は女性をこのトルメス川の向こうへ追いやり、聖なる期間、聖なる空間が守られたそうです。そして聖週間が終わった次の月曜日、またトルメス川 (The Tormes) を渡って女性たちを迎えに行き、川辺でオルナソ(hornazo) (写真2) と呼ばれる肉詰めのパンを皆で食べ、祝ったそうです。これが、ルネス・デ・アグアス、水の月曜日 (Monday of the Waters) という習慣で、今でもサラマンカでは大事な行事となっています。半日祝日扱いで、午後はどのお店も閉まっているという、気をつけなければいけない日でもあります。

学内では、先月に引き続き、留学談話会を行いました。今回経験を語ってくれた学生は、日本大学への留学生です。前回の早稲田大学とは違い、日本人も外国人も区別のない寮に入り、日本の大学生活、そして、日本の田舎での生活を語ってくれました。日本が大好きで、この留学を機にまたチャンスがあれば戻りたい、後輩に日本留学を勧めたい、そんな彼が語った、初めに注意しなければいけないことは、ごみ出しの問題でした。なぜこれまで細かい規則があるのか、分からないなりにも、そのルールに順応していった様子でした。また、勧誘などもスペインとは違い、今までの日本のイメージとは違う強引さは、インパクトに残ったようです。生活していく上で無視できない一面、良い面も悪い面も全部ひっくるめて日本をそのまま体験する、それが留学なのだと、改めて感じさせられた一時でした。

(写真2) サラマンカの象徴を織り込んだルネス・デ・アグアスのポスター

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