2020年度 活動日誌

3月 活動日誌

2021年3月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

今月も日本語レベル6(中級前半)クラスの学生が日本の大学の学生と一緒に授業に参加する機会がありました。先月の交流会と違うのは、参加しているのは皆日本語を外国語として学んでいる学生であるという点です。VMUの日本語クラスでは、このような日本語非母語話者同士の交流を大切にしています。外国語を勉強する人の多くは、その言語のネイティブスピーカーとの会話を楽しみたいと思うものです。しかし、その言語は母語話者だけのものでしょうか。現在、多くの人が英語を使って世界中の人々とコミュニケーションをしていますが、話者は英語圏の人ばかりではありません。英語を外国語として学んだ人同士での会話では、当たり前のように英語が使われています。日本語にもそのような力があることを学生たちにも感じてもらいたいと考え、学習者同士の交流の場を積極的に設けるようにしています。

今回は、フェリス女学院大学の留学生12名とVMUの学生8名が一緒に会話を楽しみました。事前に①私と日本語②私と私の町(国)③私とキャンパスライフというテーマで写真を用意してもらい、当日は小グループに分かれてその写真について話しました。写真に写っている光景に驚いたり、互いの出身国について様々な新しい情報を教えてもらったりと、日本語学習を通じて日本以外の文化にも接することができたようです。様々な学習背景や学習歴を持った人が参加しており、日本語能力にはばらつきがありましたが、お互いの日本語をフォローし合いながら会話をしている姿が見られました。参加した学生からは「時間が短すぎた」「またこんな会があったら参加したい」「同じ趣味の人が見つかった」などのコメントが寄せられました。

交流会の集合写真

2月 活動日誌

2021年2月28日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

「今年はリトアニアらしい冬がかえってきた。」画面越しで会う友人や同僚は皆、口を揃えて雪深いリトアニアの冬景色を心から楽しんでいるようです。すっぽりと雪で覆われたカウナスは美しいなと思う一方で、遠隔授業のお陰でこの寒い中を歩いて大学まで行かなくていいんだという小さな喜びもありました。

2月1日からVMUの新学期が始まり、オンライン授業も再開されました。授業中はカメラをオフにしている学生も多く、たびたび「皆さんの顔を忘れそうなので、時々はカメラつけてくださいね」と呼び掛けていますが画面は暗いままです。しかし、声を聞く限りは皆元気そうなので、ひとまず安心しています。

留学はおろか、旅行さえできない状況が続く中、2月は佐賀大学から5名の学生がVMUの2週間のオンライン短期研修に参加してくれました。前半は東アジア研究コースの講師陣による講義やセミナー、日本文化サークル『橋』との交流を行いました。後半は日本語の授業に参加してもらい、VMUで日本語を学ぶ学生たちと一緒に「仕事選び」をテーマにディスカッションを行いました。オンラインの強みは、何と言っても様々なアプリケーションを使って遠くにいながら共同作業ができる点です。このクラスではGoogle jamboardを利用して自分のプロフィールページの作成や、マインドマッピングやダイヤモンドランキングの活動を行いました。自分の好きなことや興味・関心があることをマップにしてグループで見せ、それらに関連する職業について話したり、仕事選びで大事な要素は何か、その優先順位は何かなどについて話し合ったりしました。これらの活動には①自分の価値観について自覚的になること②他者との価値観の違いを実感しそれを受け入れること、という狙いがあります。実際、仕事選びで大切にするべき要素を順位づける活動では、「私は『人から尊敬される仕事』が大事だと思ったけど、他の人はそうじゃなかったらグループ内でのこの要素の順位は低くなった」と説明してくれた参加者がいました。また、どうしても時間内に決めることは難しかったというグループもありました。自分と違う価値観を持った人と話をすり合わせていく難しさを大いに実感してくれたようで、佐賀大学の学生からは参加後さまざまな感想を受け取りました。

オンラインでの授業やイベントが増え、今まで交流できなかった人たちと出会うことができるようになったという良さもありますが、やはり、多くの学生は留学の機会を失ったことに落胆しています。実際にその国、その地域、その街に暮らしてみないと感じられないものが本当にたくさんあると思います。オンライン授業やイベントはその穴埋めにはならないということ心から実感しています。だからこそ、新しい価値や楽しみを学生に感じてもらえるような工夫が必要ではないでしょうか。今学期はそういったことを心に留めながら、学生たちの新しい交流の場を広げていきたいと考えています。

1月 活動日誌

2021年1月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

10月からのロックダウンは引き続き延長され、ヴィータウタス・マグヌス大学の春学期は完全リモートで行われることが決まりました。ロックダウン自体は学期中に解除される可能性が高いものの、多くの学生がカウナスを離れ帰省しているという事情を考慮しての決定です。教室で学生たちと直接会うことができないのはとても残念ですが、今後もオンラインでの学習機会や方法を開発していきたいと考えています。

1月上旬には秋学期の再試験がオンラインで実施されましたが、授業やイベントなどは行われなかったため、学生は家族との時間をゆっくりと過ごしていたようです。

一方、アジア研究センターは新学期の準備と並行して、観光ガイドのための教科書プロジェクトを進めていました。このプロジェクトではリトアニアで日本人旅行者向けに観光ガイドを行っている学習者を対象とした教科書を作成しています。日本企業のないリトアニアでは、大使館などを除いて日本語を仕事に生かせる機会は限られているため、観光ガイドは大学で日本語を学んだ学習者にとって、重要な職業です。しかし、リトアニアでは中上級向けの日本語の授業を開講している機関はなく、実践経験の中でしか日本語ガイドとしての技術を磨くことができません。今後も、リトアニアの観光業に携わる日本語学習が増えていくことが期待されています。そうした未来の日本語ガイドや現職の日本語ガイドらの手助けになるような教科書を作ろうと立ち上がったプロジェクトです。作成にあたり、現役ガイドらから具体的な場面や状況の聞き取りを行い、できるだけ実践に則した内容で、日本語ガイドとしての能力を伸ばせるようなものになるよう、取り組んでいます。リリースはオンラインで行われる予定です。完成したらこちらの活動日誌でもお知らせ致します。

12月 活動日誌

2020年12月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

学期途中から始まったオンラン授業は、結局最終日まで延長され、12月の学期末テストもすべてオンラインで実施されました。教職員の出入りはあるものの、授業のない大学の建物はとても静かで、外の景色も相まって非常に寒々しい様子です。近年暖冬続きのリトアニアでは久しぶりの雪深い冬で、学生たちからは「リモート授業でよかった~」という声も聞かれました。

12月の初めに授業が終了し、最終日では日本語クラスの発表が行われました。2年生のクラスでは例年通り自分たちで台本や小道具を準備するスキットパフォーマンスの発表がありました。今回はオンラインのビデオ通話でライブパフォーマンスをするか事前にビデオを作るか選べるようにしましたが、撮り直しや編集ができるビデオでの発表が人気でした。中でも3人の学生が作ったビデオは、ゲーム内の酒場で3人がお酒を酌み交わしながら日ごろの悩みを打ち明けるというバーチャルスキットパフォーマンスで、クラスでは大人気でした。毎年2年生(レベル3)のクラスでは同じ課題を与えますが、学生たちのクリエイティブな発想には驚かされるばかりです。日本語の授業の中に自分の好きなものや得意なものを取り入れることで、学生たちの意欲も高まっていくのだということを実感しています。来学期以降も、学生たちが自分の持ち味をアピールできるような活動を多く取り入れていきたいと考えています。

また、学科内では、学生有志から言語のレベルを増設してほしいとの声を受け、教員と学生の意見交換会が開かれました。近年の東アジア言語選択者の学生の学習意欲が高まりを見せ、交換留学の機会が拡大されたことも手伝い、現在のレベル6よりさらに上のレベルの授業を開講してほしいと考える学生が増えたようです。レベルを新設するにあたり、問題となるのは①出席率②登録履修者数の二点です。まず①については、本学では学生の自由意思を尊重し、出席を成績に含めない方針をとっているため、課題や研究で忙しくなる3年次以降は出席率が低下する傾向にあります。特に、言語のクラスは朝8時から開講されているものが多く、学年が上がると遅刻なども増えるという報告があり、語学担当の教員らはレベル7を開講した場合、4年生が毎授業きちんと出席できるのかという点について懸念しています。また②については同じ東アジアの言語(中国語、韓国語、日本語)の中でも履修者数にばらつきがあり、レベル7を必修としない場合、元々履修者が少ない言語では規定の人数に達せず開講できない可能性があります。以上のように解決すべき問題はあるものの、現在、次のアカデミックイヤー(2021秋/2022春)に新レベルを開講できるよう学科と学生とで話し合いを進めていく予定です。

VMU学生寮からの写真
カウナス旧市街の市庁舎広場にて。今年のカウナスのクリスマスツリーのテーマは『メレンゲ』

11月 活動日誌

2020年11月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

リトアニアでは10月下旬からロックダウンが始まり、大学の授業はすべて遠隔、そのまま学期末を迎えます。教員、学生共にオンライン授業での疲れが出ているようで、人文学部では全体的に学生のモチベーションの低下を指摘する教員の声が多く聞かれました。

東アジア研究プログラムには、今学期留学予定だった学生も多く、日本との行き来ができない状況が続いていることに不安を覚えていました。しかし、来学期から交換留学再開の目途が立っている提携校もあり、ようやく念願の日本へ行けると喜んでいる学生の姿も見られました。

さて、一方で、日本からリトアニアへの旅行者がいなくなったことで大きな経済的被害を受けているのが、本学のパートナーでもある杉原記念館です。杉原記念館とは、第二次大戦中にカウナスの日本領事館に勤め、ナチスから逃れようとするユダヤ人たちのために「命のビザ(Visa for Life)」を発給した外交官・杉原千畝氏を称える博物館で、地元カウナスでは「スギハラハウス」の愛称で知られています。COVID-19以前の訪問者の85%が日本からの旅行者であったことから、現在は訪問者がほぼゼロという日が続いています。そこで、記念館のラムーナス・ヤヌライティス(Ramūnas Janulaitis)館長とスタッフのイエヴァ・マチュリーテ(Ieva Mičiulytė)さん、そして本学アジア研究センター所属のアルヴィーダス・クンピス(Arvydas Kumpis)先生の協力を得て、オンラインの杉原記念館バーチャルツアーを企画しました。

11月26日、今回はそのパイロット版として、SNSなどを通じて参加者を募集し、40分ほどZoomで記念館の外観や各部屋の展示を簡単に紹介した後、参加者からのフィードバックと質疑応答の時間を20分間設けました。同時にYouTube liveでの放送も行い、合計約80名がパイロットツアーに参加しました。音声や映像などの技術面での問題はあったものの、内容に対する反応は概ね良好で、現在は12月または1月中に第1回目の正式なツアー開催に向けての準備を進めています。

また、参加していた日本の大学関係者からは、授業にこのバーチャルツアーと取り入れたい、ツアー後にディスカッションの時間を設けて学生同士の交流の場にしたい、というリクエストがあり、大学間の新しい交流の形にも繋がりつつあります。

10月 活動日誌

2020年10月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

今月は、カウナスにとって大事な1か月でした。10月12日(月)からの一週間の間に、杉原千畝の生誕120周年及び命のビザ発行80周年を記念した「杉原の年」を祝う大規模な複合型イベントが開催されました。昨今のCOVID-19の影響により、イベント内容は大幅な変更を余儀なくされました。しかし、多くのイベントはオンラインに切り換えることで実施することができました。残念ながら予定していた日本からのゲストを迎えることはできませんでしたが、一方で、対面参加型のイベントには、カウナスやその近郊に暮らす人々が多く参加し、日本を身近に感じてもらえる機会となりました。

10月13日(火)には、カウナスの大型ショッピングモール「Akropolis」のイベントスペースにて、日本とつながりの深いリトアニア国内の機関・団体が文化紹介や日本関連商品の販売を行いました。本学アジア研究センターのブースでは、俳句の基本的な決まり事や季語などを紹介するワークショップを行い、カウナスや日本との交流に関する句を参加者にリトアニア語(もしくは日本語)で作ってもらいました。出来上がった作品の中からセンタースタッフがそれぞれ入賞句を選び、作者には後日賞品が届けられました。

また、10月16日(金)には、小丸交通財団及び広島大学との共催で第二回日本語スピーチコンテストを開催しました。カウナスとヴィリニュスから初級1名、中級2名、上級4名の出場者が参加し、それぞれ「交通」に関するスピーチを披露してくれました。今回は、日本とリトアニアの会場をZoomでつなぐという初めての試みで、準備やオペレーションには大変な時間を費やしましたが、大きなトラブルもなく無事にコンテストを行うことができました。参加者たちは、マスクのままでのスピーチで、普段よりも大きな声で話さなければなりませんでしたが、皆さんとても堂々と素晴らしいスピーチを披露してくれました。

入賞者は以下の通りです。
初級第一位:Emilija Jurolaic エミリヤ・ユロライツ
中級第一位:Monika Kažuraitė モニカ・カジュライテ
中級第二位:Lukas Beliūnas ルカス・ベリューナス
上級第一位:Liucija Stankevičiūtė リュチヤ・スタンケヴィチューテー
上級第二位:Gvidas Diržys グヴィダス・ディルジース

上級第二位グヴィダス・ディルジースさん
上級第一位リュチヤ・スタンケヴィチューテーさん

9月 活動日誌

2020年9月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

朝晩はしとしとと雨が降り気温は10度前後になる一方で、日中は20度近くの気持ちのよい秋晴れ、リトアニアの秋はいつも気まぐれです。新学期の忙しさとその寒暖の差の激しさで、体調を崩す学生も多く、9月は大変に気を遣う月でもあります。学生らはようやく対面授業の感覚を取り戻しつつあり、友達と肩を並べて学べる喜びを存分に味わっています。

対面授業の復活と共に学生サークルの活動も今学期から再開されました。日本文化サークル「橋」は9月10日の「橋」20歳の誕生日を祝い、毎週金曜日の夜のイベントを再始動させました。昨年からスタートした月例のディスカッションイベント『Let’s talk』も今年2月以来、久しぶりの開催となりました。今回のテーマは「大学と学生」。昨今、大学は単に専門的知識や技術を身につける場所ではなく、その後の社会生活に必要な様々なスキルの習得を学生に期待する場となりました。日本人大学生を対象に行われたアンケートを参照しながら、大学が学生に求めるスキルとは?そして、学生が大学に期待するものとは何か?という話題で1時間のディスカッションが行われました。VMU東アジア研究専攻の学生を中心に、他学部・他学科の学生、大学院生、卒業生ら合計17名が参加しました。年齢や所属の違う参加者たちが、それぞれ自分の期待や経験をもとに、学生が大学で身につけるべきことは何か、そしてそれを得るためにはどのように行動すべきか、など大変熱い議論が交わされました。グループ内でも意見が分かれ、最後のグループ発表では異論・反論の嵐で、司会が止めなければあと何時間でも続きそうな勢いでした。検疫強化のために学生サークルの活動が中止されるまでは、日本人留学生が多く参加し、日本語を話す重要な場でもあったこのイベントですが、交換留学プログラムが実質停止されている現状では、その良さが失われつつあります。しかし、前述の通り、普段の大学生活では関わる機会のない他学部生や卒業生らと交流できるのもこの活動の魅力の一つに違いありません。初めて参加した新入生は、ディスカッションテーマである「大学在学中に習得を期待すること」の一つに「文化的・社会的多様性を理解し、それを尊重する」という項目を挙げ、「このようなイベントに参加するのは、まさにこういう感覚を身につけたいからなんです。今日は(同じディスカッショングループの)卒業生から、私が今学んでいる専門分野の将来性や大学で身につけたスキルについて話を聞ける機会があってとても嬉しかったです。」とコメントしてくれました。

来月は、今年一番の日本関連イベントとも言える「杉原ウィーク」が開催されます。2020年は、杉原千畝生誕120周年及び『命のビザ』発給80周年を記念した『杉原の年』で、リトアニアと日本にとって重要な年です。COVID-19の影響により、日本からのゲストがリトアニアでこの大事な年を共に祝うことは叶いそうにありませんが、カルチャーフェアやスピーチコンテストの企画運営など、VMU及びアジア研究センターはイベント成功に向けて尽力しています。来月の活動日誌では、カウナスの盛り上がりをお伝えできることでしょう!

Let’s talkの様子
(撮影 : Laura Nikodema Leščevič)
Let’s talkの様子
(撮影 : Laura Nikodema Leščevič)
Let’s talkの様子
(撮影 : Laura Nikodema Leščevič)

8月 活動日誌

2020年9月10日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

8月は夏季休暇中で学生が全くいない静かな大学となりました。しかし、本学のアジア研究センターは、休暇明けの授業準備や行事の打ち合わせで忙しく過ごしていました。特に10月には杉原千畝生誕120周年と命のビザ発行80周年である「杉原の年」を祝う一週間の大掛かりなイベント、杉原ウィーク(SUGIHARA WEEK)の開催が予定されており、その準備に奔走しています。杉原ウィーク期間中には日本とリトアニアに関する様々なイベントがカウナスの各地で行われ、本学では日本語スピーチコンテストも開催予定です。

新学期を迎えるヴィータウタス・マグヌス大学では、教室での対面授業になるのか、もしくは引き続きオンラインで行われるのか、学部によって判断が異なっており、教職員も様々なケースを想定して授業準備をしていました。東アジア研究プログラムが属する人文学部では基本的には対面の授業を想定しており、先学期はクラスメートと思うように交流できなかった学生たちも、今学期はようやくいつも通りの授業になると喜んでいました。

しかし、当然ながらまったく元通りというわけではありません。リトアニアでも依然COVID-19の感染者は増え続けており、決して油断できる状況ではないため、大学側も細心の注意を払っています。例えば、教室の入り口には注意喚起のポスターが貼られ、教室内ではマスクを必ず着用し、学生同士が近づきすぎないように教員が配慮する必要があります。

また、東アジア研究プログラムの日本語授業は基本的には対面授業とし、体調面に不安がある人はZoomを介して家から授業に参加できるようにしています。

8月31日から、新入生以外は授業がスタートしています。日本語のクラスでは、先学期ほとんどできなかった多読活動を授業内で行いました。授業評価とは関係のない、自由参加としたのですが、久しぶりに大学でクラスメートと一緒に本を読めるのがうれしかったようで、たくさんの学生が参加してくれました。

9月からは日本文化サークル『橋』の活動も再開し、大学内での活動がより活発になっていくでしょう。学生たちの心身の健康に気を付けながら、彼・彼女らがアクティブで充実した学期を送れるようサポートしていきたいと思います。

7月 活動日誌

2020年8月4日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

無事に全ての授業と試験を終え、学生たちは大学へ訪れることのないまま夏休みを迎えました。6月以降検疫が緩和されていたリトアニアでは、例年よりも開催されるイベント等は減少したものの、国内の移動には制限がないため、他県出身の学生たちは自分の地元へと帰省し、少し静かな休暇をスタートさせました。

9月以降ヴィータウタス・マグヌス大学から日本の大学へ留学を予定していた学生らは、プログラムの延期や中止の連絡を受け、非常に落胆していました。しかし、夏季休暇中もモチベーションを落とすまいと、家庭での自習方法について相談する学生や、日本人学生とのオンライン交流会を企画する学生らの姿がありました。そのような学生らの声を受け、7月は日本とのオンラインイベントを2つ開催することができました。

まず、7月10日(金)はVMUの協定校である昭和女子大学の志摩園子教授のゼミメンバー12名との交流会を行いました。リトアニアからは7名が参加し、日本語や英語を使って小グループで色々な話題について話し合いました。今回は事前に学生同士のプロフィールを交換し、互いに質問したいことや、ディスカッションテーマを考えておくようにしました。志摩ゼミの学生から出たリトアニアの夏至祭に関する質問に対し、リトアニアの学生は苦労しながらも日本語で一生懸命に説明していました。イベント後、昭和女子大学の参加者からは、リトアニアの学生が日本の古い映画や音楽に詳しいことに驚いた、大学生活の違いについてよく理解できた、などの感想を受けました。またリトアニア側の参加者からは、日本語の使用機会があって嬉しいという意見が多くありました。今後はより深いテーマでのディスカッションや共同のプロジェクトなどを通じて、共に学ぶ関係を築いていきたいと考えています。

7月31日(金)には、初めてのリトアニア留学フェアをオンラインで開催しました。フェアと言っても、一方的に情報を提供するようなスタイルではなく、日本からVMUに留学経験のある学生やカウナスの現地の学生らのパネルディスカッションと小グループでの自由会話を活動内容とした、交流型のイベントとして実施しました。神田外語大学、岐阜大学、東京外国語大学、広島大学、山口大学の5つの大学から、大学院生を含む学生17名と教職員2名の計19名が参加してくれました。留学経験者として体験談を語ってくれた日本の学生は4名、VMUからは3名が参加しました。事前質問では、奨学金や履修できる科目に関するものもありましたが、今回は留学生たちの生の声にフォーカスして、留学中の生活を様々な角度から語ってもらいました。留学に関するプラクティカルな情報を伝えることも必要ですが、留学の可能性や実感を得られにくい現在だからこそ、日本の学生が近い将来、実際にリトアニアで学び、生活する姿を想像しながら、留学へのモチベーションを持ち続けられるようなイベントにしたいと考えました。イベント開催前から、リトアニア留学を予定していたものの中止になった、あるいは、留学を検討していたが現在の状況では目途が立たず、目標を失って勉強に身が入らないという声を耳にしていました。そのため、イベント後に「とても丁寧に質問に答えていただけたので、具体的なイメージを持てました。」「リトアニアの魅力を改めて知れて、より留学したいと思えた。」「留学について具体的に考え始めることができるようになりました」という感想が得られたことは非常に大きな意味がありました。今後も、内容や形式を工夫しながら、リトアニア留学に興味を持つ学生たちに、少しでもリトアニアやVMUの魅力を伝えられるように努力していきたいと思います。

6月 活動日誌

2020年6月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

6月のリトアニアといえば夏至祭です。一年のうち最も日が長い夏至を祝うお祭りで、毎年6月23日の夜半から24日の朝にかけて各地で祭りが開催されます。しかし、今年は人が集まりすぎることが懸念され、中止、もしくは非常に小規模な開催にとどまった地域が多かったようです。この夏至のお祭りをリトアニア語では「Joninės(ヨニネス)」と言い、6月24日は祝日になっています。

例年、Joninėsの頃にはほとんどの学生が期末試験を終えて夏休みに入っていますが、今年は試験の日程がずれこんだため、6月の終わりごろまでなかなか気が抜けなかった人もたくさんいました。日本語の試験は各レベルとも比較的早めに終わりました。中間テストと同様に今回も全てオンラインでの試験となりました。

試験期間中の6月19日には、岐阜大学とのオンライン交流会が行われました。杉原千畝の故郷として、リトアニア、特にカウナスとは縁の深い岐阜では、有志のリトアニア勉強会が毎月一度大学で行われています。今回のイベントではその勉強会の皆さんと日本語と英語を交えながらの会話の機会を設けました。合わせて25名ほどの参加者を4,5人の小グループにわけ、毎回違うメンバーと様々なテーマで意見を交わしました。

イベントの最後に参加者からの感想を聞いたところ、「会話の中で互いの国について新たなことを知ることができた」「コロナ禍でリトアニアの人がどんな風に過ごしていたかわかった」「1時間では短すぎる。もっと話したかった」「リトアニアに留学したくなった」などのコメントがあり、イベントを楽しんでくれた人が多かったという印象でした。日本・リトアニアの両方からこのような感想が出たことも大事な点です。日本語を絡めたイベントでは、日本人が日本語を教える、学習者に合わせてあげる、という状況を避け、参加者全員が対等な立場で話し、共に学びを得られる仕組みを作っていくことが重要だと改めて実感しました。

今後はこのような交流会を学生が主体的かつ積極的に行っていけるように、コーディネーターとしてサポートしていきたいと考えています。

ヨナバ市の夏至祭

5月 活動日誌

2020年5月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

5月からは少しずつ検疫が緩和され、レストランやカフェなども通常の営業に戻りつつあります。残念ながら大学は引き続き閉鎖されており、今学期の授業は最後まで遠隔で行われました。中間試験と同様に、期末試験もオンラインで実施されています。チェコのマサリク大学(Masaryk University)との日本語学習者向けのセッションは引き続きオンラインで開催され、学生や教員らがゲームや日本語会話などを通じて交流しています。

学期末の学生らはとにかく課題や試験の準備に追われ、とても忙しくしていましたが、日本語授業の最終プロジェクトには全力で取り組んでいました。初級後半の学生たちは、オンラインでのスピーチを行ったり、スキットパフォーマンスをビデオにして発表を行なったりしました。ビデオを作った学生らは衣装や音楽などにこだわって、劇中にオリジナルの日本語の歌を披露するグループもいました。特に大きな注目を浴びたのは、アニメ「DEATH NOTE」のエピソードを実写で再現したグループで、二人で何役ものキャラクターをこなし、死神リュークのメイクも本物さながらでした。

また、中級レベルのクラスでは「日本とカウナス、リトアニアをいかに結びつけるか」をテーマに学生らがそれぞれの方法で作品を作り、発表を行いました。日本人向けにカウナスのガイドブックを作ったり、おすすめの場所をビデオで紹介したり、日本とリトアニアの友情を描いた絵本を作ったりと、学生の個性が強く現れた素晴らしい作品ばかりでした。

遠隔授業に切り替わり、慣れない環境の中であっても、学生たちは新しい学びの方法を身につけており、そこで培われた表現力が最終発表では大いに発揮されていました。教員としても、コーディネーターとしても、学習やコミュニケーションの多様性を実感した学期となりました。

中級クラス最終発表 イエヴァ・ヤソナイテー(Ieva Jasonait)さんの作った絵本 『コウノトリと鶴の旅』

4月 活動日誌

2020年4月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

3月中旬から続いている検疫強化は、今月下旬に段階的に解除され始めました。現在も外出時はマスク必着などのルールはあるものの、スーパーや薬局以外のお店も営業を再開し、カウナスの人通りは少しずつ多くなってきました。しかし、現在もヴィータウタス・マグヌス大学の建物は全館閉鎖中で、授業等は全て遠隔で行われています。

4月中旬はイースターの休みがあり、少しリラックスできたのも束の間、オンライン授業に出席する学生たちの中には自宅待機が続く生活にストレスを感じている者も少なくありません。幸い、リトアニアは都市部にも緑が多く、人の多い時間を避けて家族やペットと散歩をして気分転換をすることができます。

授業以外で日本語使用の機会が少なくなった日本語学習者のために、チェコのマサリク大学と合同でオンラインでのイベントを毎週開催しています。4月はオンラインボードゲーム『Dixit』を使ったゲーム会や、自分の好きな映画について話す会などを行いました。また、日本語の授業時間を一部一般にも開き、みんなで日本語ニュースを読むなどの活動も行っています。

現在、ヴィータウタス・マグヌス大学の日本語コースからは8名の学生が日本に留学していますが、Covid-19の影響を受け1名は派遣先大学から帰国の指示が出たため、リトアニアへ戻ってきています。残る7名とはビデオ通話で日本での生活の様子について話を聞きました。国際基督教大学(1名)、関西外国語大学(2名)、立命館大学(1名)、佐賀大学(3名)にそれぞれ派遣されている学生らによると、学期開始時期が遅れた大学もあるものの、基本的には予定通りの授業を履修できており、ZoomやMicrosoft Teamsなどを用いたリアルタイムのオンライン授業のほか、大学のLMSを通じた課題などがあるとのことでした。しかし、ヨーロッパ以外の国からの留学生はほとんど帰国してしまったようで、中には寮に一人きりという学生もいました。また、飲食店でのアルバイトができずに収入が減ったという問題もあります。来学期から日本への留学を予定している学生たちも、このような現地の情報を知りたがっているので、オンラインの留学相談会などの実施を検討しています。

ネムナス川沿いの桜
PAGE TOP