2019年度 活動日誌

3月 活動日誌

2020年3月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

例年より暖かい3月、リトアニアの新しい春の行事になりつつある、桜のお花見を楽しみにしていた人も多かったことでしょう。さらに月末にはアジア研究の学生らが中心となって作る「アジアウィーク」があり、学生も教職員も張り切っていました。しかし、残念ながら世界的に広がる新型コロナウイルスの影響を受け、リトアニアでは3月13日から大学内での講義や課外活動、その他全ての行事が中止となりました。政府の発表ではこの検疫強化は4月の中頃まで継続されるとのことです。授業は現在全てオンラインで実施されています。

多くのイベントが中止・延期されてしまった今月ですが、第4回Baltic Alliance for Asian Studies (BAAS)は無事に開催されました。BAASは2年に一度行われるアジア研究の専門家のためのカンファレンスで、エストニア・ラトビア・リトアニアが持ち回りで開催地となっています。バルト三国をはじめとする世界中の地域から研究者らが集まり、様々な分野での発表と活発な意見交換が行われました。ヴィータウタス・マグヌス大学の学生らもボランティアとしてカンファレンスに携わり、日本からのゲストや日本研究の専門家らと意見を交わしました。また、今回のBAASは、COVID-19の影響によりリトアニアへ来られない一部参加者のために、SkypeやZoomなどのオンラインビデオ会議システムを使った発表や質疑応答に対応し、ブレンド型のカンファレンスとして行われました。

詳しいプログラムはURLをご参照ください。https://balticasianstudies.wordpress.com/

検疫の強化が開始されてから、自宅待機により日本語の使用機会が少なくなっている学生たちのための活動も新たに始まりました。同じく遠隔授業となっているチェコのマサリク大学(Masaryk Univeristy)と協力し、週に一回Zoomを利用したオンライン日本語交流会を実施しています。第一回目は自己紹介など自由な会話をし、第二回目は参加者が自分の「好きな一冊」を他の参加者に紹介するブックトークを行いました。学生だけでなく教員や卒業生らも参加し、日本語を介した交流を楽しみました。チェコは5月中旬、リトアニアは4月中旬まで自宅待機の指示が出いているため、イベントは来月も継続して行う予定です。

2月 活動日誌

2020年2月29日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

雪の降らない正月休みを過ごした学生たちが戻り、2月のヴィータウタス・マグヌス大学は賑やかになりました。新学期が始まり、学生たちは少しずつ生活のペースを取り戻していきました。

今学期も読書クラブにはたくさんの参加者が来ています。メンバーは2年生・3年生が中心ですが、初参加の1年生や学外からの参加者も徐々に増え、日本語学習者の交流の場となっています。また、今学期からはクラブの時間を30分延長し、最後の15分を『ブックトーク』の時間に充てるようにしました。ブックトークでは、その日に読んだ本の感想や他の参加者へのおすすめの本を挙げる時間です。最初のうちは日本語教師が介入しますが、途中からは学習者らが自由に日本語やリトアニア語で相手が読んだ本について質問したり紹介するようになってきました。図書館のアジアブックスペースの本は、寄贈により随分と充実してきました。今後は図書館とも協力して、日本語多読活動を盛り上げていきたいと考えています。

読書に熱中する参加者(読書クラブ)
お茶の準備をする参加者(読書クラブ)

月末恒例のディスカッションイベント「Let’s talk」は「多文化社会の多様性」という比較的難しいテーマで行われました。約30名の学生が参加し、1時間以上英語や日本語で議論を交わしました。「同化」と「多文化主義」というキーワードを使った議論では、自分や自分の両親、祖父母の経験などを踏まえながら外国人として生きる困難や社会の姿勢について厳しい意見も多く挙がりました。多文化主義政策を失敗だと捉えている参加者らは、実例を挙げながら、同化と多文化主義のバランスの必要性とその難しさ、矛盾などを指摘しました。イベント後、参加した日本人学生からは「普段友達と話したことのないテーマで楽しかった」という反応がありました。

1月 活動日誌

2020年1月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

今冬、リトアニアは例年よりも非常に暖かく、カウナスには雪もほとんど降っていません。「リトアニアの人たちは雪が好きなのでみんながっかりしている」と、休暇中の学生が教えてくれました。

12月の試験終了後、クリスマス前から約1か月半の冬休みを迎え、多くの学生たちは帰省先で年末年始を過ごしました。職員だけの大学はとても静かで、普段の喧騒が嘘のようです。

お正月モードで鈍った脳を呼び覚ますように、すでにお馴染みとなった人気イベント「東アジアクイズ大会」が月末に行われました。全部で8のチームが参加し、知識を競い合いました。今回は2チームが同点優勝という結果でした。

カウナスは教室の外で日本語に触れる機会の多い町だとは言えませんが、ヴィータウタス・マグヌス大学の教職員・卒業生・在学生は皆、常に新しい可能性を模索し、積極的に参加しています。また、近年では、日本からの留学生の増加に伴い、日本人留学生も巻き込んだ活動が盛んになってきました。

今年はBaltic Alliance for Asian Studies (BAAS)、アジアウィーク、SUGIHARA WEEKなど多くの大規模なイベントがカウナスで予定されています。GJOコーディネーターとして、日本語学習者や日本人留学生がこうした行事にできるだけ深く関われるようサポートを続けていきたいと思います。

優勝チーム①
優勝チーム②

12月 活動日誌

2019年12月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

12月、カウナスの町はクリスマス一色になりました。市庁舎広場には毎年個性的なクリスマスツリーが現れます。

カウナス市庁舎とクリスマスツリー

しかし、学生たちにとっては大事な期末試験のシーズンです。課外活動やイベントが少なくなってくる一方、図書館はレポート作成やテスト勉強に励む学生で込み合っています。そんな図書館にとても嬉しいクリスマスプレゼントが届きました。公益財団法人小丸交通財団から、300冊以上もの日本語・日本関連書籍が寄贈されたのです。

リトアニアでの日本語学習の更なる発展を目指し、ヴィータウタス・マグヌス大学図書館へ『小丸文庫』の設置が提案されたのは、5月に行われた日本語スピーチコンテストでのことでした。学生らの知的探求心を刺激するような専門書から、より身近に日本語を親しんでもらえるようなジブリ映画のコミックスや絵本、多読本など様々なジャンルの書籍が新たにアジアブックスペースの棚に並びました。12月10日には小丸文庫開設の式典がヴィータウタス・マグヌス大学のメインライブラリーで行われ、財団の小丸成洋理事長や、駐リトアニア大使・山崎史郎特命全権大使らが出席しました。大学の図書館は誰でも利用することができるオープンな場所であり、今後、より多くの人が日本語書籍に触れる機会を持つことができるでしょう。また、読書クラブなどで盛り上がりを見せるヴィータウタス・マグヌス大学の日本語読書活動が、リトアニアの日本語教育全体に広がっていくことが期待されています。

ほとんどの学生が試験を終え、開放感に包まれていた12月中旬には、今回で第3回目となる東アジアクイズ大会が開催されました。今学期から始まったこのクイズ大会は、学生や卒業生らの間で大変な人気イベントへと成長し、日本人留学生の参加も目にするようになりました。

カウナスには様々な形で日本や日本語と関われる場所があります。来年も、学習者やカウナスの日本人と共に、そのような機会をできるだけたくさん作っていきたいと考えています。

11月 活動日誌

2019年11月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

例年より暖かいとはいえ、後半は気温がマイナス5度にまで達したリトアニアの11月。秋学期の授業は11月29日ですべておわり、学生たちは一気に試験モードに突入しました。

日本語クラスの学期末といえば、学生たちの発表会です。2年生(レベル3)のクラスでは朗読や寸劇の発表がありました。特に寸劇の発表は音楽や小道具を使った楽しいものが多く、クラスメートにも大好評でした。

レベル3発表 劇『ドラえもんと忍者』

3年生(レベル5)では、「ヴィータウタス・マグヌス大学非公式マスコットキャラクターを作ろう!(Unofficial Mascot Character for VMU)」プロジェクトの発表会がありました。学生たちがそれぞれ、VMUのアピールしたいことをマスコットキャラクターを使って紹介するという活動で、5つのユニークでおもしろいキャラクターたちが登場しました。単にかわいいキャラクターを作って見せるのではなく、自分の大学の教育理念や強みを日本語で説明し、それがキャラクターにどのように反映されているか説明しなくてはなりません。そのため、5~10分の短いプレゼンでも、準備にはかなり苦労したようです。発表後は、参加者と観客全員で投票を行いベストマスコットを決定しました。選ばれたのは大学の名前にもなっているリトアニア大公国の大公ヴィータウタスをモデルにした「ヴィトゥカス」でした。

レベル5発表 『シャコちゃん』
『ヴィトゥカス』(ベストマスコット)

また、防災について研究している日本人留学生の櫻井まゆさん(岐阜大学)をゲスト講師に招き、「自然災害と防災」について学びました。授業ではまず櫻井さんから、日本の自然災害、特に地震や津波などの危険性や防災の基本的な知識、日本語非母語話者が被災したらどのようなことに気をつけなければいけないか、などの話がありました。その後はグループに分かれて、日本で起こり得る自然災害とその備え、さらに、災害が起こった際の行動について日本語で話し合いました。参加した日本人学生らは自身の経験や知識を話したり、リトアニア人学生と共に災害に備えることの重要性について改めて考えていました。また、発表を行った櫻井さんは「日本語がわからないことは災害時大きなディスアドバンテージになる。皆さんは日本語と防災に関する知識を身につけて、日本で災害に遭った時に、日本語がわからない人たちを助けられるようになってほしい。」というメッセージで講義を締めくくりました。

近年、VMUから日本へ留学する学生が増えてきました。実際に、留学中や日本へ旅行している際に地震や台風に遭ったというリトアニア人学生もおり、防災教育の必要性を実感しました。来学期は、留学内定者向けに防災教育や災害情報の大切さについて考えるイベントを行う予定です。

また、今回の取り組みは、日本人留学生と日本語クラスの新しい関わり方を発見する機会にもなりました。これまでも、会話練習の相手として日本人留学生がクラスへ参加してくれることはありましたが、今回のように、「日本語で聞き、日本語で考え、日本語で意見を交わす」という非常に実践的な活動ができたことは、日本語クラスの学生にとって、貴重な経験でした。GJOコーディネーターとして、今後も日本語学習者と日本人留学生が、互いの専門分野について日本語で話し合う機会を増やしていきたいと考えています。

レベル5授業 グループディスカッション『自然災害と防災』
レベル5授業 櫻井まゆさんによる講義『自然災害と防災』

さらに、今学期はオンラインビデオ会議システムZoomを使った新たな取り組みをいくつか行いました。まず、毎月一回リトアニアについての勉強会を行っているという岐阜大学のグループとのオンライン交流会です。VMUの学生が岐阜大学の学生に向けて日本語でリトアニアやカウナスの町について発表をした後、オンライン上で小グループに分かれて、自己紹介やおすすめの料理について話しました。今後は授業や大学の枠を超えて、リトアニアへ留学を希望している日本人学生たちが参加できるような交流会作りを目指しています。

また、日本語を使った非日本語母語話者同士の交流を促進すべく、チェコのマサリク大学(Masaryk University)の日本語クラスと合同でオンライン読書会を行いました。題材は高倉健の『南極のペンギン』で、学生らは事前に自分たちで本を読み、教師が用意したガイドクエスチョンを基に、日本語の表現や著者の言動などに対する自分の考えをまとめておき、読書会本番では小グループに分かれて、意見を交換し合いました。最初は緊張気味だった学生たちも、徐々に打ち解けはじめ、のびのびと自分の意見を伝えたり相手の意見に質問を投げかけたりしました。開催後のフィードバックからも、参加学生たちの多くが読書会を楽しんでいたことがわかりました。本のレベルを下げたり、アイスブレークの時間を増やすなどして、よりオンライン読書会に参加しやすい環境を作っていくことが今後の目標です。

日本文化サークル『橋』は今月も色々なテーマでの発表や活動を見せてくれましたが、月末は恒例のディスカッションイベント『Let’s talk』が行われました。今回のテーマは日本語とリトアニア語の慣用句で、それぞれの言語の面白い言い回しとその意味を学びました。グループ内で互いに自分の言語の慣用句を紹介し合い、最後にはグループごとに寸劇を披露し、どの慣用句についての劇かをあてるゲームをしました。「ドアを開けて閉めない人」を意味する『トロリーバス生まれ(troleibuse gimęs – born in trolleybus)』や子どもが「トイレに行く」という時に使う『ドワーフに会いに行く(eiti pas nykštukus – go and visit the dwarves)」などリトアニア語のユニークな表現がたくさん紹介されました。

第三回『Let’s talk』の様子

今学期は、40名ちかくの日本人がヴィータウタス・マグヌス大学で交換留学生として学びました。積極的な学生たちは、日本語授業やサークル活動だけでなく、日本語・日本文化に関するインターンシップやボランティア活動にも参加してくれました。アジア研究センターのインターンとして働いた三浦さん(南山大学)は、センターのパンフレットを英語から日本語への翻訳する業務を担当しました。また、リトアニアの中高生に東アジア文化を広める活動『ドラゴン・アカデミー』にも日本人留学生がボランティアとして参加してくれました。リトアニア人学生と共にリトアニア健康科学大学付属ギムナジウム(The Gymnasium of Lithuanian University of Health Sciences)を訪れ、プレゼンテーションなどを通じて、生徒らと交流をしました。来学期も、日本人留学生たちの活躍に期待しています。

アジア研究センターでのインターンシップを修了した三浦さん

10月 活動日誌

2019年10月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

カウナスの高台へと登る、ジャリャカルニスのケーブルカー

一気に冬へ向かうかと思われたリトアニアの10月は、コートなしでも出かけられる気持ちの良い天気が続きました。日本の「小春日和」や北アメリカの「インディアンサマー」と同じく、リトアニア語にもこのような秋の天気を表す言葉があります。「Bobų vasara(ボブゥ・バサラ)」、直訳すれば「婆さんの夏」という意味です。(Bobaは年配の女性を表す言葉ですが失礼な意味合いが強いので注意が必要です。) リトアニア人にはお馴染みのBobų vasaraですが、今年は例年よりも暖かい日が長く続き、街中でも郊外でも皆、紅葉を楽しんでいました。

さて、今月は日本・リトアニア関係において大きなニュースがありました。リトアニアの新しい大統領、ギターナス・ナウセーダ大統領が日本を初めて日本を訪れたのです。さらに、ナウセーダ大統領はカウナス市の姉妹都市・八百津町がある岐阜県にも公式に訪問し、それに合わせて、ヴィータウタス・マグヌス大学の協定大学である岐阜大学で特別講演を行いました。特別に岐阜大学から中継してもらい、本学の学生たちも大統領の講演を聴くことができました。もちろん大統領のスピーチはリトアニア語でしたが、中級日本語クラスの学生たちは通訳の日本語にも熱心に耳を傾けていました。

ナウセーダ大統領の講演を聴く学生たち

そして、第二回目を迎えたディスカッションイベント“Let’s talk”には前回同様、多くの学生が参加してくれました。今回のテーマは『日本とリトアニアのジェンダー』。日本語の「男前」「女々しい」「イクメン」「リケジョ」などの言葉を取り上げながら、それらの言葉がなぜ批判されることがあるのか、リトアニア語にも同じ表現があるのか、日本とリトアニアそれぞれの社会にはどのようなジェンダーの問題があるのかを議論しました。参加者の多くが「ジェンダーは自分が生きている社会や文化が決めているものだ」「親世代・祖父母の世代から押し付けられているジェンダーロールがある」という考え方を共有しているようでした。また「イクメン」の意味を日本人学生から説明されると、「それって『父親』って言わないの?」という疑問が浮かび上がり、なぜメディアは「イクメン」を取り上げるのか…と話がどんどん発展していく様子も伺えました。前回に比べて議論の中で使われる語彙が難しく、日本語のみでディスカッションに参加したリトアニア人学生はかなり苦戦していたようです。

第二回『Let’s talk』の様子

また、月末には東アジアに関する知識を競うクイズ大会(通称Brain Battle)が開催されました。東アジア研究学科の教員・卒業生・在学生の有志グループが主催する今大会には、13のチームが参加し、熱い知の火花を散らしました。問題は東アジア地域、特に中国・台湾・韓国・日本に関するもので、歴史や政治のみならず若者文化やポップカルチャーなど幅広いジャンルから出題されます。そのため、チームのメンバーたちはそれぞれの得意分野を生かしながら、難問に挑んでいきました。結果は、大学院生・卒業生が中心チーム『Sugi Squad』と学部2年生の『Nekochanai』の2チームが同点優勝となりました。

優勝チーム①Sugi Squad
優勝チーム②Nekochanai

9月 活動日誌

2019年9月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

カウナスのメインストリート、ライスベス大通り

残暑が続く日本と違い、リトアニアは町中すっかり秋色になりました。赤や黄色や橙色に染まった街路樹を、冷たい雨が濡らしていく様子は、リトアニアの秋の風物詩です。

今月の日本関連のイベントはまず、9月20日に行われた特別講義『日本とリトアニアの関係』です。去年から1年間JETプログラムの国際交流員として岐阜県庁に勤務していたシモナ・ヴァシレヴスキーテ先生が日本とリトアニアの関係がどのように発展してきたかについて講義しました。大学外の方も参加できる公開イベントとして行われ、約30名が聴講しました。講義の内容は、個人・団体・自治体・国それぞれのレベルでどのような交流が行われてきたかが中心でした。また、シモナ先生自身の日本語学習歴や経歴についても語られ、卒業後日本語を使って働きたいと考えている学生たちには非常に良い刺激になったようです。

シモナ・ヴァシレヴスキーテ先生の講義

その一週間後の9月27日には、日本人留学生との交流イベント『Let’s Talk』が開催されました。GJOコーディーネーターが日本文化サークル『橋』と協力し、教室外で日本人と日本語で意見を交わせる場所を作ることを目的として、今学期からスタートさせた試みです。また、日本語学習者以外の人たちにも、日本人学生たちとの交流を通じて、日本に対する理解を深めてほしい、そして、日本人学生たちにリトアニアに暮らす人々の声に直接触れる機会を持ってほしいという考えから、活動言語を日本語に限定せず、日本語・英語・リトアニア語としました。参加者は45名、うち日本人留学生は6名と少なめでしたが、小グループに分かれて、それぞれ楽しくディスカッションを行いました。今回のテーマ『日本とリトアニアのイメージ』。お互いに相手の国に持つイメージについて話し、文化的な違いについて考えたり、ステレオタイプの危うさについて話し合ったりしました。例えばリトアニア人参加者からは「日本は技術大国だ」というイメージが挙がりましたが、日本では未だにFAXを使っている企業や機関があるという話が出ると、驚きの声が上がりました。「日本人は勤勉である」というイメージに対しては、日本人留学生から「非効率的なやり方を変えずに働くことを『勤勉』だと思っているのは問題だ」という意見が挙がりました。また、日本人留学生たちは、来る前に持っていたイメージと実際のリトアニアの印象についてもグループで話し、リトアニア人参加者からたくさんの質問を受けていました。イベント終了後も、まだまだ話し足りない参加者たちはそのまま教室に残っていました。第二回目も今回のような盛り上がりを見せてくれることを期待しています。

第一回『Let’s Talk』の様子

リトアニアのおすすめの場所を紹介する学生

8月 活動日誌

2019年8月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

6月から始まった夏休みも終わり、ヴィータウタス・マグヌス大学では8月の最終週から授業が始まりました。
勉強にサークルにアルバイトに最も活動的で忙しくなる2年生は、新しい日本語の先生を前に緊張しながらも、忘れかけていた日本語を思い出して、夏休みの出来事を語ってくれました。

東アジア研究専攻日本語選択の3年生のうち、8名もの学生が今学期から日本での留学生活をスタートさせます。すでに日本に渡り、留学先でのオリエンテーションやクラス分けテストを済ませた学生たちからは不安と期待の声が届いています。

一方、留学をせずに、本学の日本語中級にあたるレベル5のクラスへと進んだ学生たちは、ヴィータウタス・マグヌス大学へやってきた日本人留学生の数に驚いていました。今学期は過去最高の39名の日本人学生が、交換留学生としてカウナスで学びます。GJOコーディネーターとして、前年度よりも多く日本人学生と現地学生の交流の機会を増やしていきたいと思っています。

授業以外の場面でも、学生たちは活発に動き始めています。

日本文化サークル『橋』のメンバーたちは、幹部ミーティングを行い、今年度の活動戦略について話し合いました。学部生、院生、卒業生らが同じ立場で意見を交わしている姿は、先輩・後輩の上下関係のある日本とは少し異なるかもしれません。今年度は「日本人留学生が興味を持てる内容」「研究者や専門家を招いた学術的なイベントの開催」「日本語を使った交流の場」などをキーワードとして、様々なアイディアが挙がりました。

GJOコーディネーターも運営に加わり、月に1回のイベントを担当します。

日本語読書クラブも8月末から再開されました。学習意欲満々の2年生たちが、久しぶりの読書タイムを思う存分楽しみました。1時間では足りなかった学生は、クラブ終了後も残って本を読み続けるほどでした。今学期も、多くの学生が読書を通じて日本語に親しみ、さらに自分の本を書いてくれることを期待しています。

6月 活動日誌

2019年6月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

国内の他大学と比べて少し早く学期末を迎えたヴィータウタス・マグヌス大学では、6月上旬に多くの学生が全ての試験を終え、夏休みをスタートさせました。国外へ出る学生も多いため、この時期は例年イベントを開催しても参加する学生が少なくなります。

それでも、6月17日に行われたドキュメンタリー映画「MIKOSHI GUY 祭の男」の上映会には多くの学生が参加しました。日本国内の祭り文化の再興を願い活動する宮田宣也さんを追ったドキュメンタリーで、上映後はご本人との質問セッションがありました。参加者からは、作中に登場する所作や掛け声の意味や、神輿と神道との関わりについての質問がいくつも挙がりました。大学内には映画に登場する神輿が展示され、多くの人の目を惹いていたようです。今後も、学生たちが授業外で日本・日本文化に触れられる機会をたくさん作っていきたいと思います。

また、今月の読書クラブでは、2年生のイエヴァさんによる日本語の本「リムとキム」がクラブの本棚に新たに追加されました。物語・絵ともにイエヴァさんの完全なオリジナル作品です。Facebookで新しい本の情報を見た学生たちが早速クラブでこの新刊を読んでいました。「リムとキム」の他にヴィータウタス・マグヌス大学の学生が作った日本語の多読本は読書クラブのページで読むことができます。

https://sites.google.com/view/kaunasjapanesereadingclub/our-books?authuser=1

5月 活動日誌

2019年5月31日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

日本の春と変わらぬ気持のいい陽気が続いていたのもつかの間、今月上旬は雨や曇りの日がばかりで、気温も10度以下。しかも、ヴィータウタス・マグヌス大学の5月といえば、学年末の多忙な時期です。学生たちは論文・課題・発表・試験の準備に奔走し、皆少しお疲れ気味でした。

そんな中、大盛り上がりだったのが5月17日に行われた日本語スピーチコンテストです。今年が2回目となる今回は、12名の参加者が『交通』をテーマに素晴らしいスピーチを披露してくれました。初級の部ではフランスの車のレース『ル・マン24時間耐久レース』について魅力たっぷりに語ってくれたトマス・ユオドゥスヌキスさん(ヴィータウタス・マグヌス大学)が第一位になりました。中級の部ではギーティス・モツクスさん(ヴィリニュス大学)によるリトアニアの首都・ヴィリニュスの交通機関の変遷についてのノスタルジックなスピーチが一位に輝きました。審査員たちを最も悩ませた上級の部では、リトアニアの若者が経験する免許取得までの長く苦しい道のりを漫談口調で語ったマタス・シュカルヌリスさん(カウナス工科大学)の『運転、頑張りましょう。』というスピーチが第一位に選ばれました。

第二回日本語スピーチコンテストの様子

学生にとって本番が最も大事なのは言うまでもありませんが、自分の意見や考え、経験を日本語で表現するために費やした準備期間も、日本語学習においてはとても大切です。原稿を書いたり、スピーチの練習をしたりする中で、学生たちの日本語は磨かれていきました。また、今回はヴィータウタス・マグヌス大学だけでなく、他大学やギムナジウム(高校)からの参加が多かったことが嬉しい点でした。学習者同士が交流し、励まし合えるイベントを今後も増やしていきたいと思います。

自分の番を待つ出場者たち
出場者を応援する学生

また、今月は『ドラゴン・アカデミー』の一環としてカウナス市内で高校生向けの遠足を行いました。『ドラゴン・アカデミー』とは本学のアジア研究センターが取り組んでいる教育活動の一つで、リトアニア国内で東アジア文化・言語に関する知識を広めることを目的としています。今回は地元カウナスのLSMUギムナジウム(高校)の生徒6名が参加してくれました。アジア研究センターのアンドリュス先生を中心に日本語クラスのリトアニア人学生2名、日本からの留学生5名がチームとなり、カウナス鉄道駅や杉原千畝の博物館などを含む『杉原ルート』*を高校生らと共に巡りました。リトアニア人学生はガイド役として、杉原千畝や当時のカウナスの様子などについて紹介しました。日本人留学生たちは移動中に高校生たちと英語でコミュニケーションをとりながら、日本について話したり、質問に答えたりしました。

リトアニアではいくつかのギムナジウムで日本語が選択科目として採用されており、若い人たちは日本語や日本文化に強い関心を持っていることも知られています。授業やワークショップだけでなく、留学生との会話などインフォーマルな交流の場も、リトアニアの児童や生徒たちに日本について知ってもらう大事な機会となることをこの遠足で実感させられました。

*今回の遠足で使用した『杉原ルート』はカウナス市が発行している日本人向けのガイドマップで紹介されている『杉原千畝ルート』を参考に計画しました。この『杉原千畝ルート』は戦間期のカウナスでユダヤ人たちのためにビザを発行し彼らを助けた杉原千畝氏にまつわる場所を紹介しています。PDF版の地図はWEBページ(https://visit.kaunas.lt/en/maps-and-guides/)からダウンロードすることもできます。

杉原千畝のプレートの前で記念撮影(カウナス鉄道駅)
高校生に説明を行うVMUの学生(ヤン・ツヴァルテンディク記念碑)

4月 活動日誌

2019年4月30日
GJOコーディネーター 高木 伽耶子

今年度よりヴィータウタス・マグヌス大学GJOのコーディネーターを務めます、高木伽耶子です。2015年より本学で日本語・文化のクラスを担当してきました。日本人が少ないこの国で、いかに日本語の使用機会を見出すか、現地のリトアニア人学生の日常生活に日本をどのように結びつけるかということを常に意識しています。GJOコーディネーターとして、今後さらに現地学生が日本語や日本に触れられる場を提供すると共に、日本からの留学生がクラスの外でリトアニアについて学べる機会を増やしていきたいと思っています。よろしくお願い致します。

ネムナス川沿いの桜(カウナス)
外で本を読む読書クラブの学生

今年のリトアニアは例年より暖かく、いつもは5月まで待たなければいけない桜も、4月の中頃には咲き始め、イースターの休みには満開になっていました。リトアニアでは桜が新しい春の風物詩になりつつあります。ヴィータウタス・マグヌス大学の学生たちも、杉原千畝記念館の庭や川沿いに咲いた桜でお花見をしていました。

冬が長いリトアニアでは春になると皆、外での活動を楽しむようになります。週2回の『カウナス日本語読書クラブ』も今月は外で開催されました。今年の2月からスタートしたこのクラブは日本語の『多読』が主な活動内容です。学習者のレベル別に作られた100冊以上の多読本の中から好きなものを選び、参加者たちは黙々と、そして次々に本を読んでいきます。非漢字圏の学習者にとって、『読む』は日本語学習の大きなハードルであると言われています。この活動を通じて、日本語を『読む』楽しさを感じてほしいと願っています。

また、日本語中級クラスの学生たちは、ガイドになりきってカウナスの名所を日本語で案内するという『カウナスガイド』に挑戦しました。複雑な建築用語や歴史・宗教に関する言葉に苦戦している学生が多かったようです。卒業後、日本語を使って仕事がしたいと考える人は少なくありませんが、日本企業のないリトアニアではその選択肢が非常に限られており、日本語のガイドはその数少ないうちの一つです。授業やイベントを通じて、実践的な場面での日本語の使用を意識させるような機会をどのように増やしていくかが今後の大きな課題です。

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