2021年度 活動日誌

6月 活動日誌

2021年6月30日
GJOコーディネーター 竹森 帆理

6月はすでに大学は期末試験がほぼ終わり、再試があるだけで、ほぼ夏休みの始まりになります。6月の始めは私も他の先生の担当授業の口頭試験の手伝いなどはありましたが、それ以降はゆっくりと出来ました。

6月はオランダにおけるコロナ関係の規制も一段と緩まり、社会活動はほぼ通常に営まれ始めたという感じです。街はもう人で溢れていますし、街の風景でコロナ前と違うのは公共交通機関など、着用義務があるところでは人々がマスクを着用しているというだけです。

口頭試験で「最近驚いたこと」について話してもらうというパートがありましたが、そこで一人の学生がワクチンの接種のスピードが予想していたよりはやいことに驚いたと言っていました。高齢者や喘息など持病がある人以外は、若者ほど後になりますので、学生の年代はワクチン接種の一番後のグループになりますが、それでも七月には接種が完了する見込みだということに驚いたそうです。確かに、言われてみれば、オランダは他のヨーロッパ諸国よりも、ワクチン接種の出だしは遅れていました。ヨーロッパの早い所では去年の12月の終わりごろにすでにワクチン接種が始まっていましたが、オランダは始まりは慎重で1月になってようやく始まりました。それで市民は接種が行き渡るのはもっと遅い時期になると予想していたのです。

私は30代ですが、果たして6月の半ばにとうとうワクチン接種の案内の封筒が来ました。オランダではBSN(Burgerservicenummer)という日本のマイナンバーに当たる番号を用いオンラインでほとんどの行政手続きが簡単に出来ますが、案内を読むと、ワクチン接種もオンラインで簡単に出来るようでした。しかし予想してたことですが、予約画面に行くと、最初のワクチンを接種できるのが早くて六月後半、二回目は七月になるとあったので、今月を最後にライデン大学での任期を終えて帰国する私は予約しませんでした。予約時に自分の住んでいる地域と違う郵便番号を試して、早く摂取できるスケジュールを探すという裏技があるというのを知人から聞いたりもしましたが、もちろんそんなことはせず。しかしこれもまた知人に聞いた話ですが、一回だけでも打っておいて、二回目は日本で打つことにした日本人の帰国者もいるそうです。

今回で私はライデンの滞在を終えます。コロナなので学生との関りは通常より薄かったですが、それでもお別れのメールをくれたり、プレゼントをくれたりした学生もいました。院生の会話クラブでも最後にせっかくなので外で会って食事をしたりしました。そこに参加した学生は今度から日本に留学するそうで、まだコロナの関係で最終的に行けるかどうか不確定だと言っていましたが、心から行けるといいなと思います。

今月の院生の会話クラブは私にとっては最後の回でした。テーマはオランダと日本の戦争賠償という中々重いものでした。日本では韓国に対する賠償の問題などを抱えていますが、オランダはインドネシア独立戦争に関する賠償の問題があります。父親が目の前で殺された人に対してどれだけの賠償額が妥当なのか、答えはあるのかといった鋭いことを学生は言っていました。政府間の賠償金のやり取りだけではなく、被害者に対する直接の賠償が必要ではないかといった意見など、興味深い意見が飛び交いました。

今回で最後ですのでまとめ的なことをひとつ。日本語教師という職をやっていると日本語を流暢に話す外国人に大勢出会います。しかし改めて考えると、みなものすごい努力をしてその状態にまでたどり着いています。そういう努力をさせるのは、やはり新しい言語を操るというのが楽しみをもたらすからでしょう。日本語の授業がいつも短くてあっという間に終わってしまうというある学生の独り言を聞いたことがあり、そんなに日本語が好きなんだと感心したことがあります。母語話者からすると、日本語を勉強するのがそんなに面白いだなんて少し驚きなわけです。同僚の先生に会うと、コロナ禍で退屈な学生生活だろうに、学生はとてもまじめで熱心に頑張っているということが話題に上ります。何か新しいことを本当に楽しみながら学んでいる姿を見ることができ、その場に居合わせることができるというのは、貴重で、見る側にとってもエネルギーを貰えることなのだと感じたライデン大学での二年間でした。

本文とは関係ないのですが、6月はサッカーのUEFA EURO 2020があって、街ではオランダを応援するこうした旗を至る所で見ました。

5月 活動日誌

2021年5月31日
GJOコーディネーター 竹森 帆理

5月は期末試験の月でした。私が担当しているハーグキャンパスでもJapanese 1とJapanese 3のテストがあり、それぞれ一日がかりでした。もうオンラインテストも三回目なので慣れたものです。個人的には学生にとって、オンラインの方が緊張しにくいのではないかと思っています。今回は特にJapanese 3の学生が、これで日本語の会話を含んだ総合的な授業は彼らにとって最後であることもあってか、かなりパフォーマンスがよかったです。

5月はまたコロナの規制の緩和がかなり進んだ月でもあります。すでに4月の末に夜間外出禁止令が解かれ、カフェなどはテラスを12時から18時まで開いてもよくなり、不要不急(non-essential)のお店も20時まで開くことが許されるようになっていました。これによって町の風景がかなり変わりました。12時から18時まででは、もうけが出ないといったカフェのオーナーたちの不満などをニュースで見ることはありましたが、全体的には彼らも規制緩和の新しい一歩を歓迎しているようでした。5月の19日には18時までだったのが20時まで延長されたこともあり、天気が良い日には、満席のテラスを見ることはもはや珍しくなくなりました。これまでの反動もあり、町はかえってコロナ前よりも活気づいているようにも見えます。五月の末にはさらなる規制緩和が発表され、6月の5日からレストランの屋内も開いてよくなったり、美術館が開いてもよくなったりと、夏に向けて自由がさらに大きくなっていきそうです。

今月の三年生向けの会話コースは休みや試験の関係で一回だけでした。そしてもう学期が終わるので、これが最後の一回になります。内容は「自分の国について説明する」とリスニングとリーディングを行いました。

「自分の国について説明する」は学生にオランダの文化や習慣について、一、二分で簡単に説明してもらうという練習でした。最初に明治食品の子供向けのサイトにあった、オランダの文化(主に食文化)や習慣についての説明文をモデルとしてみなで確認しました。そこにカルネメルク(Karnemelk)という飲み物が出て来て、筆者は知らなかったのですが、バターミルクの一種で、学生たちは美味しいという人もいれば不味いという人もいました。もう二年近くオランダにいますが、身近なものでも知らないことがまだまだあるということを再確認しました。早速飲んでみましたが、私にはとても美味しく感じられました。腸の健康にもよいようです。

リスニングは村上春樹のラジオの一部を聞きました。リスナーの質問に答えるというコーナーで、「葬儀でどんな曲をかけてほしいか」という質問に対する彼の答えに関して、リスニング問題を作って、聞きました。

リーディングも村上春樹のラジオから取りました。ラジオで彼が話したことの一部を読んでもらい、問題に答えてもらいました。内容は、レイ・チャールズが、貧困家庭に育った黒人で、盲目であり、人種差別にも悩まされたという人でありながら、いわゆるプロテストソングのようなものをほとんど歌ったことがないという点についての村上春樹の簡単な考察でした。この内容を踏まえて、最後に少し芸術は直接社会問題などに関係するべきかというディスカッションをしました。芸術や文化に興味がある学生たちだったので、最後にこういった内容を扱うことができてよかったです。

院生向けの会話クラブは今月は二回あり、ふたつとも参加しました。一回目はオランダと日本の農業、二回目はヤングケアラーがトピックでした。

農業はオランダのほうが日本より高齢化は進んでいないようですが、でも学生の話を聞くと、やはりオランダでも農業には高齢者のイメージがあるそうです。面白かったのは、日本では食料自給率の低さが学校でも教えられるなど認知された問題ですが、オランダでは穀物自給率が10%と低いにも関わらず、こうした問題はあまり取り上げられることが少ないようであるという点でした。EU内で賄えればよいといった考えがあるようで、自国の食料自給率はあまり話題になることがないようです。

ヤングケアラーの回では、日本ではテレビで取り上げられるなど話題になっていますが、オランダではどうかや、子供が親を介護するのは当たり前かどうかなどについて話しました。イギリスがヤングケアラーの問題について先進的な取り組みをしていることで知られていますが、オランダではあまり問題として取り上げられる機会も少なく、まださほど認知されていない問題のようでした。子が親を介護するのは当たり前だと思うかという問いに対しては参加したオランダ人の学生は当たり前ではないが、心情的に看護をしたいという気持ちは分かるという答えが主流でした。

今月も学生たちは興味深い意見をたくさん聞かせてくれました。また来月がたのしみです。

スーパーのカルネメルク(Karnemek)の棚。結構種類があります。

4月 活動日誌

2021年4月30日
GJOコーディネーター 竹森 帆理

4月は休日が多い月でした。まず2日の金曜日は聖金曜日(Good Friday)で休み、4日の日曜日と5日の月曜日はイースター休日と、4月の始まりから祝日が重なりました。そして4月末は27日が「王様の日」(King’s Day)で休みでした。

王様の日はオランダ国王の誕生日を祝う休日で、コロナ禍でなければ各地で王家(オラニエ=ナッサウ家 Orange-Nassau)を象徴するオレンジ色を着た人々が街を埋め尽くし、盛大に祝われるのですが、今年は前年に引き続き、大規模なイベントはもちろん行われませんでした。それでも当日外に出てみると、オレンジ色の服を着て、オレンジ色の飾りをつけた人々がどこかの家のパーティーにでも行くのか、移動している姿をよく見かけました。「あんな格好して何が楽しいんだか」と部外者としては思いましたが、ふと下を見てみると、ランニング中だった筆者のTシャツの色も鮮やかなオレンジ色でした。別にわざとそれを選んだわけではありません。

そういう風にイベントが多かったことや、4月は学期の後半にあたり、学業がますます忙しくなってくることもあり、今月は残念ながら院生の会話クラブは開かれませんでした。日蘭の農業について、読んでくる文献も決まっていましたが、当日忙しくて出られないという人が多かったり、またちょうど王様の日に当たってしまっていたりとタイミングが悪かったです。日蘭の農業についてはまた5月に持ち越しです。

ライデンキャンパスの三年生向けの会話コースも今月はいつもより少なく二回だけでした。お休みと被ったことと、あとは参加者が少なすぎて開くのを断念にした日もあったからです。やはり学期末でみな忙しいみたいです。

それでもその二回ではみな活発に日本語を使ってくれました。今月はカジュアルスピーチの練習をしてみました。カジュアルスピーチのルールのおさらいでは、やはり普段使わないこともあり、昔勉強したはずですが忘れている人はいました。でも普段日本の番組などを見ているのでしょう。聞く分には違和感はないようでした。

カジュアルスピーチの一種とも言えると思いますが、関西弁についても触れてみました。ジャルジャルというお笑い芸人にバイとの面接でタメ口を使う学生についてのコントがあるのですが、それを見せました。早口で関西弁なのでもちろん難しいのですが、楽しそうに見ていました。スクリプトをもとに、関西弁を標準語のカジュアルスピーチに直すといった練習では、みな、ああ難しいと言いながらも、内容の大意はちゃんとつかめている様子でした。この授業をやりながら、日本人ならなんとなく意味が分かるし真似も出来る関西弁ですが、教えるとなるとそれぞれの終助詞の意味の説明などが大変厄介であるということに改めて気が付きました。終助詞というのは向こうの言語にないものだし、書き言葉やフォーマルな場ではむしろ不要なものなので、中々勉強するのが難しいと思います。教える方としてもこんなものなくても大体の意味は同じだから、めんどうくさくてどうでもいい存在にも見える時もあります。せめて聞いた時にそういう言葉を使っているのだなと受動的な知識が身につけばいいなと思いながら教えていました。

今月は以上です。ではまた来週。

ミデルブルフ(Middelburg)で撮った写真。王様の日が近かったので、水の色がオレンジ色だったみたいです。
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