2020年度 活動日誌

3月 活動日誌

2021年3月
GJOコーディネーター 安 昭映

日本語を勉強する目的は人それぞれです。語学能力試験でいい点数を取るために勉強する学生もいれば、日本人と自由に会話するため勉強する学生もいます。意思疎通を目的とする学生の場合、スピーキングとリスニングのスキル向上のためのトレーニングに励み、日本語でしゃべりたいという欲求も強いです。彼らには日本人留学生とのランゲージエクスチェンジがもっとも楽しくて効果的な活動なのですが、コロナウィルスの長期化により日本人留学生の渡韓がほぼない今の状況は残念でなりません。そこでGJOは韓国人学習者同士で楽しく自由に会話練習ができるようにソースを提供することにしました。

韓国人学習者がペアを組んで会話練習ができるように初心者向けの練習問題を作ってみました。数字のやり取りにてこずる学生が多いことから、「スケジュール」をテーマにして日にちと時間を何度も話し聞くようしました。それから、その日の感想を添えて形容詞語彙拡張を図りました。GJOが提供する練習問題を終えたら今度は自分自身の過去のスケジュールから未来のスケジュールを共有する練習を行います。これで自分の話が日本語で話せるという楽しさが感じられるはずです。

単純なドリル練習にとどまらないように活字ではなく絵で提示することで学生の想像力を刺激して学生自身が語彙を選んで話す練習問題を作りました。形容詞を使って提示された絵について説明し、さらにそれを相手にお勧めする練習です。決められた語彙がない分、自分が話したい語彙を模索することによって語彙拡張の効果も期待できます。

語学を学ぶ大学生にとって一番の楽しみだった交流会やランゲージエクスチェンジがコロナ禍でほぼストップ状態ですが、これからもGJOソウルオフィスは学習者の楽しい学習をサポートしていきたいと思います。

2月 活動日誌

2021年2月
GJOコーディネーター 安 昭映

先日、知人が所属している日本語教師会のオンライン懇談会に招待してもらいました。 日本語教師会には韓国人の日本語教師をはじめ韓国に滞在している日本人の日本語教師の方々が所属しています。様々な機関で活動され、実際フィールドで教育を行っている方々の現場の話を聞かせていただける良いチャンスだったので参加させていただきました。教えている学習者の学習レベル、学習目標、年齢、職業も様々で各分野での専門家の先生にたくさんのアイディアを聞かせていただきました。その中で一番印象深かったのは、「学習連続性」についての話でした。学習の途中で諦めずに勉強を続けさせる、そこで教師の役割というのは何か。一般的に学習放棄の理由は「仮名の暗記ができない」、「「て形」が難しい」、「謙遜語が難しい」などの学習においての問題で、これらは教授法開発で克服できます。しかし、「自分だけ授業についていけない」、「先生は自分を見てくれない」などの心理的な問題にはどう対応すべきなのか。疎外されている学生はいないか学生一人一人に興味を示す、 授業についていけなくても元気づけて励ますなど、心理的不安を解消することも教師の大事な役割の一つだということです。 実際コロナ禍が長引き留学も儘ならず、モチベーションが下がるという声があったので、とても有益な時間になりました。

ソウルオフィスは学習者の持続的な学習のためのサポートよりは今まで経験したことのない状況の下でできる活動だけを工夫することに力を入れてきました。これからは学習者が抱いている不安感に耳を傾け、それらを解消するためにできることを考え、学習が持続できるようにサポートしていきたいと思いました。

1月 活動日誌

2021年1月
GJOコーディネーター 安 昭映

GJOソウルオフィスでは留学の相談をしています。日本での生活や留学カリキュラムの相談が主な内容でしたが、コロナウィルスが拡散しはじめた1年前からは相談の内容が変わりました。日本への留学を推し進めるかやめるかの悩みから海外生活への不安、入国制限によるビザ問題など、留学そのものについての相談が増えました。実際、海外からの留学生が減りましたし、中途帰国した海外留学生をよく見かけます。

韓国では今までJASSO(日本学生支援機構)と韓日協会が主催するEJU(日本留学試験)および日本留学フェアが定期的に開かれていましたが、コロナウィルスが拡散してからはズームを使いオンラインで開催しています。フェアに参加したら留学専門家による相談が受けられるので留学を悩んでいる学生にフェアに参加するよう案内しています。

留学を諦めざるを得ない場合、韓国にいながら留学するような効果のある学習カリキュラムの相談もあります。相談を受けるにつれ留学を予定していた学生が韓国で効率的に日本語学習が続けられるようなプログラム構成についても工夫が必要だと思いました。

12月 活動日誌

2020年12月
GJOコーディネーター 安 昭映

新型コロナウィルスが流行し始めて1年が経とうとしています。この未曾有の事態にソウルオフィスは今までとは全く違う形の活動運営を余儀なくされています。

韓国政府の防疫体制に従いながら工夫を凝らしてはいますが、いつも力不足を感じていました。ところが、ベオグラードGJOの八木先生からGJOコーディネーター交流会のご提案があり、喜んで参加させていただきました。どんな活動をなさっているのかをお聞きしてオンラインで楽しくできる日本語教育のアイディアをいただきました。特に音楽や歌手をテーマにする授業は印象的で、ソウルオフィスもぜひ活用させていただきたいと思いました。最近は韓国アイドル歌手は韓国語の曲を日本語バージョンにして活動することが普通になっているので、日本語バージョンと韓国語バージョンを日本語教育に活かすことも考えています。

各国ごとに環境によって困っている内容は少しずつ違っても厳しい状況であることは共通していました。活動報告や情報交換を通じて各国の事情を知ったので、ソウルオフィスだけでなく他のオフィスに提案できるアイディアがあったら是非ご紹介したいと思いました。

11月 活動日誌

2020年11月
GJOコーディネーター 安 昭映

先月まで新型コロナウィルスの新規感染者数が2桁だったのに対し、11月に入り感染者数が急増し3桁になりました。それを以って韓国政府は警戒レベルを引き上げ、更に強化した外出自粛を呼びかけています。なのでソウルオフィスはオンライン、SNSでの活動は今まで通り続け、オフラインでの活動は一時中止することにしました。警戒レベルに従って日本語学校もお休みになったりするので、困っている日本語学習者の質疑に積極的に対応することにしました。

早速、ZOOMの様々な機能を使って新しい語彙の補充説明、文法説明をしました。語彙や文法はテキストの説明より詳しく、テキストの内容の他に知っていたら役に立つ知識も添えて説明をしました。リモートでの質疑応答が終わったらSNSで解いた問題の写メを撮って送ってもらい、間違っているところや見逃しているところをチェックして返しました。

今回のリモート学習に参加した学生に『制限されたテキストの説明だけだとわからないまま飛ばしがちですが、ソウルオフィスのオンライン質疑応答を利用するとたくさんの知識を得られます。特に、わからないことがあったらいつでも質問ができるし解決してもらえるので独学でも安心して勉強ができます。』と感想を聞かせてもらいました。

オフラインの世界はストップしていますが、オンライン活動で日本語学習者に役立つことができてうれしいと思いました。

《説明を筆記した学生のテキスト1》
《説明を筆記した学生のテキスト2》

10月 活動日誌

2020年10月
GJOコーディネーター 安 昭映

ソウルオフィスは語学勉強のサポートもしていますが、韓国語能力試験や日本語能力試験に向けて勉強している学生には勉強法として読解問題の地の文を活用するように勧めています。まず、地の文をノートに書き写します。次に辞書など使わないで漢字にフリガナを振っていきます。それから地の文を訳していきます。完成したら分らなかったまたは読めなかった漢字をチェックします。そして訳せなかった表現や文法をチェックします。間違えたところや分らなかったところは、誤答ノートや誤答レポートにまとめます。そうやって読解の地の文で読解パートははもちろん文法パートや語彙パートも同時にクリアしていくのです。

そこで、もう一つ行ける学生には「逆翻訳」をお勧めします。逆翻訳とは、まず、韓国語母語者に「日本語」の地の文を「韓国語」に訳してもらい、一週間後、自分が訳した韓国語訳を自分なりの「日本語」に訳すのです。最初の地の文どおり訳せなかったとしても、自分の言葉で同じ内容に再現できたらほぼ成功なのです。一週間時間を置くのは頭の中から瞬間的に暗記した内容や文法が消えるのを待つためです。そうすることで自分の不足しているところを見つけ出すことができるのです。また、訳す過程の中で日→韓、韓→日に訳す時、自分のくせが一目でわかります。元の地の文と最終の訳文とを比べることで自分の不足している語彙の表現や文法がチェックできます。

実際、ソウルオフィスが提案した勉強法の効果が、試験合格という結果を手に入れ、そして作文や翻訳の実力伸長という形で表れています。ソウルオフィスのアドバイスを受け入れ、勉強に励んでくれる学生さんに感謝の気持ちや責任感を感じます。

9月 活動日誌

2020年9月
GJOコーディネーター 安 昭映

ソウルオフィスは日本語学習者を対象に<動詞の語彙カード>を提供しています。語彙を楽しく暗記し、活用練習をするためにソウルオフィスが制作したカードです。特に初級レベルの学習者に好評です。効率がいいので他の品詞も欲しいというリクエストがずっとあったので形容動詞のカードを製作しました。カードの表にはフリガナ付きの語彙を、裏には語彙の韓国語の意味と活用の答えを書き込みました。表の語彙を読んで意味を覚え、活用練習をし、学習者自身が正しく覚えて答えているかは裏の情報で確認します。学習者に負担のかからないようにカードはワンセット36枚にしました。初級学習者にドリルの練習が飽きずにでき、必要な語彙が充実に暗記できる数です。ただ、目で読んで覚えるだけでは漢字が完璧に暗記できないので、カードでの暗記が終わったら必ず自分で紙に書いてみるように案内しています。

コロナ19でグループ学習も難しい中、語彙カードが日本語学習の一つの楽しみになったらうれしいと思います。

<形容動詞の語彙カード>

8月 活動日誌

2020年8月
GJOコーディネーター 安 昭映

韓国は7月まで新型コロナウィルスの感染者数を一日50人以下に抑え、生活防疫体制に移りオフラインでの活動を再開しつつありました。が、8月に入って首都圏にクラスターが発生し一日感染者数が3桁に急増しました。

そこで、疾病管理本部は感染拡大防止のために「社会的距離確保」警戒レベル2.5段階を初めて施行すると発表しました。インターネットカフェやカラオケに限られていたQRコード電子出入り名簿作成義務の範囲が広くなり、コーヒーチェーン店は店内の飲食は禁止、飲食店の営業時間が午後9時までになるなど、新たな措置が加わりました。

新型コロナウィルス関連ニュースや速報は基本韓国語でなされるので、ソウルオフィスは新しく発表された防疫体制の内容を留学生の方々にメールで案内しています。韓国政府も多くの国の言葉にその旨を掲載してはいますが、生活全般かつ命に係わるものなのでもう一度案内したりお困りごとがあったら相談にのったりしています。今回の強化された措置も留学生の皆さんにメールでお知らせしました。GJOソウルオフィスもオフラインでの活動を再開しようと準備していたところだったのに残念でなりません。一日も早くこの事態が収束することを願うばかりです。

7月 活動日誌

2020年7月
GJOコーディネーター 安 昭映

韓国は新型コロナウィルスの感染者数が一日50人以下と抑えているものの、疾病管理本部は感染拡大予防のために生活防疫体制を続けることを勧告しています。生活防疫体制とは日常生活や経済・社会活動を営みながら感染予防活動を持続していく防疫システムのことです。これを受けて社会のあちらこちらでは防疫体制の下で、徐々に日常に戻ろうと動き始めています。

韓国外国語大学(HUFS)もコロナウィルス以降、オールストップ状態だったコロキウムが再開しつつあります。HUFSの人文社会研究所が生活防衛体制になって初めて開催するコロキウムに招待していただきました。入場前は名簿作成(氏名・所属・連絡先・体温)、体温測定、アルコール消毒液などのウィルス対策をしていました。いつもだったら参加者の皆さんは握手して挨拶していましたが、接触を避けるために言葉だけの挨拶をしました。日本の厚生省にあたる韓国の保健福祉部が発表したソーシャルディスタンスのスローガンの一つである「体は遠く、心は近く」をしっかり実践している光景でした。

会場に入ると2m距離をおいて着席するようにスタッフが案内をしていました。換気のためにドアは開けっ放しにしていました。コロキウムに参加した皆さんは終始マスクを外すことなく、発表者はマイクカバー付きのマイクを使ってマスクを着用したまま発表をしました。しかし、発表・質疑応答・討論についてはいつものように熱気を帯びる雰囲気でした。

今回のコロキウムで生活防疫体制の感染予防行動を見学していただいたので、ソウルオフィスも感染予防行動をしっかり守った上でオフラインでの活動を再開したいと思います。

6月 活動日誌

2020年6月
GJOコーディネーター 安 昭映

日韓交流に大変興味を持っていらっしゃる教授とお話しできる機会がありました。韓国世宗大学の「世宗大日本交流プログラム・横浜国立大学国際プログラム」を初めて開設され、日韓交流お祭りにも長年携わってきた教授です。日韓大学生のための交流会の経験を聞かせてもらいました。交流会開催にあたって事前準備からその後の計画、交流会の目的及びプログラム作成まで奥の深い話をしてくださいました。ランゲージエクスチェンジの目的という性格の交流会もよいのですが、ランゲージエクスチェンジの内容も大事だということがわかりました。その一つとして、文化交流が挙げられます。文化交流をする際、古くからの伝統に限らず現在のものも文化の一つであることを認識し、若者に合うコンテンツや時代設定を幅広く設定する必要があるという意見もいただきました。

現在、世界的にコロナウィルスの影響により多くの交流会が中止となり、オフラインでの交流会はいつ再開できるのかもわからない状況です。オンライン交流会は開催しつつありますのでソウルオフィスもコロナウィルスのなか安全な交流会が開催できるように工夫していきたいと思います。

5月 活動日誌

2020年5月
GJOコーディネーター 安 昭映

新型コロナウィルス防疫のため博物館や美術館などの文化施設は臨時休館となり、日本文化を紹介するイベントもすべて中止になりました。国際交流基金が主催する「江戸の案内者-北斎」の浮世絵展覧会に行く予定だったのが、新型コロナウィルスの拡散予防のために中止となりました。楽しみにしていた分がっかりしましたが、オンライン展覧会という形で開催されて学生の皆さんとオンライン見学をしました。

オランダ出身の印象派画家フィンセント・ファン・ゴッホの作品からも目にすることができる浮世絵なので、欧米の中の日本文化へと知識の範囲を広げられるとても良い機会になると思いました。そこで、私が展覧会のガイドになり学生の皆さんと展覧会の作品を鑑賞しながら、作品をめぐる面白い話を伝えることにしました。19世紀浮世絵が欧米まで進出したきっかけ、欧米の印象派画家が受けた影響などの歴史的知識をお話ししました。特にゴッホが浮世絵を描写、または手法を使った作品の鑑賞は好評でした。また、一度は聞いたことのある「ジャポニズム」は浮世絵とどう関係していて、現在にどう至っているのかについてもお話ししました。

『浮世絵はよく目にしていたが、こんなに奥が深いものだとは思わなかった』、『ハリウッド映画のスターウォーズの所々に日本的な要素が入っている理由がやっとわかった』、『日本だけを旅行するつもりだったのが、ただで欧米まで旅行して得した気分』と学生から感想をいただきました。日本またはアジアでだけ日本を見つけるのではなく、地域を広げて欧米からも見つけられる有益な時間になったと思います。

<『江戸の案内者-北斎』オンライン展覧会のポスター>

4月 活動日誌

活動日誌2020年4月
GJOコーディネーター 安 昭映

国際交流基金ソウル日本文化センターでは、月1回日本語教師サロンを開いています。4月のテーマは韓国の日本語教室と日本の韓国語教室をつなげた学習デザインや方法の「交流学習を取り入れた学習デザイン」でした。GJOソウルオフィスで企画する「交流会」や「ランゲージエクスチェンジ」の道しるべに応用できることを期待して参加しました。コロナウィルスの影響でZOOMを使ってオンラインで開かれました。

今回レクチャーしてくださった先生は韓国の大学で日本語を教えてらっしゃる先生で、教えてくださった学習デザインや実例はGJOソウルオフィスの交流会やランゲージエクスチェンジでも使える、語学能力を高めるのにとても効果的で楽しい活動内容でした。短期間で終わってしまう活動ではなく長期的に交流し続けられる、連続性のある活動を重ねるプログラムなのでお互いをより深く知ることができると思います。

今はコロナウィルスの影響で全てがストップ状態ですが、コロナが収束して日韓の大学生が集まって交流会やランゲージエクスチェンジができる日が一日でも早く来ることを祈っています。

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